今回はマーケットリサーチ委員会からマーケティングについての講演を依頼を受けた株式会社スノーピークビジネスソリューションズの村瀬亮社長でしたが、お話の冒頭に出てきた言葉は「実はスノーピークという会社はマーケティングというものをやったことがない」というものでした。
もし我が社で言う「顧客創造」という言葉がそれに当たるのであれば、ということで講演を引き受けていただきました。

ユーザーとの対話そのものがマーケティング

スノーピークという会社は金属加工で有名な新潟県燕三条市に本社を構え、その金属加工の技術をキャンプ用品の製造に活かし、さまざまな道具類から椅子やテーブルといったアウトドア用家具など幅広く展開しています。
スノーピークには『真北の方角 The Snow Peak Way』というミッションステートメント、全社が向かうべき方向性や姿勢を明文化したものがあります。
そこには「主体性」や「自然指向のライフバリュー」といったメッセージ、「常に進化し、革新を起こし」「自らもユーザーである」といった行動指針、そして「体験価値」を提供し「地球上のすべて」に良い影響を与えることを目的とすることが書かれています。
スノーピークで働く皆さんにはこれがすべて頭に入っていて、常にこれに照らして仕事をしているということです。

では、スノーピークとは何をする会社なのかというと、「文明の進化に反比例して低下していく人間性を、アウトドアや自然の力で人間性の回復をさせようとする会社」だということです。
自然と人、人と人、をつなぐプラットフォームとしてキャンプがありその用品を作っているということなのです。
スノーピークの本社は5万坪という広大な敷地、全体がキャンプ場になっておりその中に本社の建物があります。来年には3倍の15万坪になるということですが、まさに自らがキャンパーであり、仕事のスタイルがキャンプだということです。
このキャンプ場は2011年に作ったということですが、当時の売上が35億の時に20億かけて作ったというのが驚きですが、昨年の売上が167億まで伸びており、この取り組みが認められ年々ファンが増えていっていることがわかります。
ここはキャンプ場ですから多くのキャンパーが集まるわけですが、会社そのものがC2C(キャンパーtoキャンパー)企業としてブランドを可視化させたものになっているのです。
本社ビルからはキャンプ場でキャンプをしているユーザーの姿を見ながら仕事をし、そして自らも仕事が終わってから社員さんたちが外へ出て焚き火を囲んで話をするといった光景も見られるということです。

スノーピークは自然と人、人と人との関係性について「つくる」と「つながる」ことで提供してきたと村瀬講師は言います。
「つくる」ことについてはかなりのこだわりを持って取り組んできたということですが、それはマーケティングによってつくるのではなく、自分たちもユーザーであるという意識で自分たちが欲しいものをつくってきました。
アウトドア用のソファーや中で炭火バーベキューができるテントなど、今までにはなかったオリジナルの製品が生み出されています。
同時にロングライフの製品、長く使えるもので長く生産し続けるものをつくっています。
経年劣化によって使えなくなるものはありますが、修理が可能なものはできる限り直して使い続けられるというものをつくっています。
それが如実にわかるのが期間の決まった保証書はつけず、全て「永久保証」として依頼があれば可能な限りすべて修理に対応します。

もう一つの強みである「つながる」は数多くのリアルイベントを開催して、ユーザーと直接交流を図るところにあります。
お客様と一緒にキャンプをするということから始まったこれらのイベントですが、ミッションステートメントでもある「スノーピークウエイ」というイベントは何百人ものキャンパーが集まり、会社からも社長始め役員総出で一緒にキャンプをして交流を図ります。
ここでは参加したお客様から直接話を聞き、要望等についてはイベントの中で幹部役員がその場で回答していくということもしています。
今では抽選でもなかなか当たらないという人気のイベントになっていますが、始めた当初は30組のお客様しか集まりませんでした。
始めた2000年というのは90年代にあったキャンプブームが過ぎ去った後で、スノーピークでも売り上げが大幅に下がり困っていた時期でした。
どうしようもなくなった時、社内から原点に帰ろうという意見から「一緒にキャンプを楽しみながら、一緒にスノーピークを作っていく」というイベントを始めました。
これを一過性のものにせず、毎年継続して行うことで同じようなキャンパーが集まるようになり、それに合わせて売り上げも急拡大していきました。

このように「つながる」とは、より自然なところに戻ろうという現在のキャンパーの価値観に合致させていくこと、「つくる」とは単に顧客ニーズに応えていくだけでなく自分たちがどうあるべきかを考え、それを商品として表現することで賛同してくれたユーザーが集まってくるということです。
これが現在の社会的ニーズ、教育や働き方改革、地方創生、災害対策といったものに合致しているということでさらなる広がりを見せています。
もともとスノーピークは登山家の先代社長が実用的な登山用品を作りだしたのが始まりで、趣味や遊びのカテゴリーで発展、そこから進化枝分かれする形でアパレル(衣類)や食、アウトドアオフィスなどの働く環境へ、そして住環境やまちづくりにも関わっています。

現場に寄り添ったものづくり

この働く環境や住環境にまで発展していった背景にあるのが、村瀬講師が代表をつとめるスノーピークビジネスソリューションの存在です。
もともとは20年前に村瀬講師が設立したHEARTIS(ハーティス)というITコンサルティング企業が母体の会社です。
現場と働き方のIT基盤を構築という企業のDXを推進する会社であったハーティスが、自社の職場にアウトドア要素を持ち込んだことがきっかけで、スノーピークとの合弁会社であるスノーピークビジネスソリューションが生まれました。
これにより、企業のDXと「野外研修」という新しい形態の人財育成が加わり、企業が新しい時代に対応するための不可欠な要素が揃った企業が生まれたわけです。

では、どのような経緯でITコンサルティング企業であるハーティスにアウトドアの要素が加わっていったのでしょうか?
村瀬講師は起業する時期までさかのぼって話してくれました。

村瀬講師はもともと大手の情報機器メーカーの営業として働いていました。
ある時会社が新しいデータ端末、その端末を持って情報を入力すると、そのデータがPCに送信されてPC側でデータの加工、管理ができるというものを開発しました。
本来ならPC側でデータを操作するソフトを開発するソフトウェア会社や現場である物流倉庫に売り込むところですが、そのルートを持っていなかった村瀬講師は勤務先である愛知県の世界的自動車メーカーに直接売りに行きました。
そこで話を聞いてくれた現場の方が「工場の備品管理に使えるのでは」と言ってくれました。
それまでアナログで行っていた備品の入出庫と在庫管理に活用できないかということだったのです。
ただ、そのためには端末からのデータを管理するソフトを開発しなければいけません。
当時の村瀬講師にはソフト開発をお願いできる先も知識もなかったため困ってしまいました。
唯一村瀬講師の友人で独学で簡単なシステムなら組めるという方がいましたから、お願いをしてみたところ「それぐらいならできる」ということで作ってくれました。
出来上がりは見た目も良くなく、非常にシンプルな内容ではありましたが、お客様にお見せしたところ「こういうので良いんだよ」と言ってとても喜んでもらいました。
よく聞くと、実はそれまでに在庫管理のためのソフトはあったのですが、非常に複雑で取説も分厚く読む気にもなれない、必要以上の機能が満載で使い物にならなかったというのです。
その後、お客様からは「こんなことはできないか」といった要望が出てくる度に改良を加えていくことになったのですが、以前のソフトとの大きな違いは「お客様と一緒に作っていった」ということでした。
途中段階でのエラーは気づいたら教えてくれたり、問題課題を一緒になって考え取り組んでくれました。
お客様も自分たちの要望が叶えられるということもあり「どんどん使い勝手が良くなっていく」ととても喜んでくれたということです。

この経験から村瀬講師はその友人を誘って会社を立ち上げることにしました。
この時以下のようなメッセージを考えました。

  1. 共に考え共に創る。(「現場」に寄り添い、一緒に創造していく)
  2. できる限りシンプルに始める。(「現場」はシンプルを求め、シンプルだからこそ使う)
  3. 現場で成長させ続ける。(「現場」で使われることによって進化させることができる)

新しく立ち上げた会社は仕様書を頂いて、その通り作るという会社ではないと言うことを宣言されました。
具体的には、情報を集約するにあたって各現場の、ローカルの情報入力を見直し改善した上で統合させていくという、統合システムありきのものとは一線を隠すサービスを提供していきました。パッケージ化せず、基本部分だけを用意し、それを各企業の現場に合わせて作り上げていくという進め方です。
このシステムの導入においてたくさんの気づきがあったと村瀬講師は言います。
多くの企業で作業の効率化、合理化のためにシステムを導入するわけですが、すべての企業がうまくいくとは限りません。
失敗する企業、つまりかけた費用にまったく見合わない、導入したシステムを使わなかったのがかけた時間とほぼ同じだったという場合ですが、ここに明らかなパターンがあります。
それは、導入決定後からキックオフまでに綿密な計画と使用作成に膨大な資料と時間をかけた場合です。これはキックオフまで実際に使用する現場は一切関与していないので、キックオフ後に想定していなかった問題が次々に起こり、現場の反発も相まって結局何もしなかったというパターン。
一方成功しているパターンは2つの大きな「鉄則」があります。
一つは「WHYの合意形成」、つまりなぜそのシステムを導入するのかなど事前に関係者全員において疑問に応えて合意を得ておくこと。もう一つはスモールスタートで全員参加型であることです。いきなりできあがったものでスタートするのではなく、徐々に作り上げていくというパターンです。

GOODサイクルとBADサイクル

重要なのはシステムが作られていく「プロセスの共有」と「良好な人間関係」であると村瀬講師は言います。特に重要なのは「良好な人間関係」であり、これがあれば合意形成も共有もスムーズに行われますが、そうでなければ中々前に進むことができないからです。
これは『組織の成功循環モデル』という有名なモデルで説明されており、①関係の質②思考の質③行動の質④結果の質、のサイクルをどのように回すかで成功するか失敗するかが決まるといい、GOODサイクルは①→②→③→④、BADサイクルは④→①→②→③だということです。
GOODサイクルは
①互いに尊重し、結果を認め、一緒に考える(関係の質)
②気づきがあり、共有され、当事者意識を持つ(思考の質)
③自発的・積極的にチャレンジ・行動する(行動の質)
④成果が出てくる(結果の質)
①信頼関係が高まる(関係の質)
②もっと良いアイデアが生まれる(思考の質)



一方BADサイクルだと
④成果・業績が上がらない(結果の質)
①対立が生じ、押し付け、命令・指示が増える(関係の質)
②創造的思考がなくなる、受け身で聞くだけ(思考の質)
③自発的・積極的に行動しない(行動の質)
④さらに成果が上がらない(結果の質)
①関係がより悪化する、なすり合い、自己防衛(関係の質)



システムの導入だけでなく、何事においてもまずはより良い人間関係の形成が重要であり、その構築のためには何を磨いていけば良いのかを考えることが大切だということです。
特にこれまでのような上り調子の時代においてはBADサイクルであっても何とかなっていたかもしれませんが、これからの時代は下り傾向にあるのでGOODサイクルでなければうまくいかないと村瀬講師は指摘します。

キャンプとビジネスの融合

村瀬講師の会社ではこのような発想で様々な現場の仕事をするなか「まず自分たちがそうあるべき」と考え、今までにない全く新しい発想で考えてみること、そして今すぐできることを、まずやってみようということになりました。
近年「地方創生」や「働き方改革」が叫ばれる中においてIT企業にできることは何かを村瀬講師は考えました。
地方創生と言っても森林のことや環境のことを言葉だけで社員さんと共有したところでなかなか伝わらないので、実際山に入って「木こり体験」などを通して間伐の大事さなどを開発者と一緒に体験しながら語り合うこともしました。
また、社員旅行を現地のリサーチも兼ねた研修旅行として社員さんと共有をしてきました。
すでに一部のIT企業では地方に入って仕事をしているところがあり、古民家を改装してそこを職場にして地域活性化の一翼を担う仕事をしている会社などを視察して、自分たちも何かできないかと村瀬講師は考えました。
そこで出た答えが「キャンプ」でした。

キャンプだと古民家を改装するということもなく、簡単に持って出て撤収できます。「とりあえず
やってみる」という行動指針を掲げていた村瀬講師はすぐに行動に移しました。
この時に用意したのがスノーピークの製品で、その良さを実感しました。
最初は村瀬講師が一人で知り合いの山奥にある場所を借りて、テントを貼って1週間ほどそこで仕事をしてみたということです。
ちょうど4月の入社式がある時期だったのですが、山奥からオンラインで新入社員に語りかけるということをやってみましたが、みんな面白がって楽しんでくれました。
これはみんなと一緒にやればもっと楽しいだろうと思った村瀬講師は、気に入ったスノーピークの製品を150万円分も用意し、地元の公園で社員さんと一緒にキャンプをして食事や仕事のディスカッションをしました。
その後はことあるごとに屋外でキャンプをしながら仕事をし、社員さんの自主性に任せることでどんどん発展して様々なイベントがそこから生まれていくことになりました。

振り返ってみてキャンプには様々な価値があることがわかったと村瀬講師は言います。
クリエイティブなアイデアが生まれる、チームビルディングができるはもちろんですが、焚き火の前で語り合うことで自然とビジョンシェアリングができます。
屋外で活動をすることでクラウドリテラシーも必然的に向上し、環境に配慮した行動を通してモラル教育につながります。さらにキャンプ用品は福利厚生にも防災にも生かされます。
これらの新しい価値を実体験を通して得た村瀬講師はスノーピークの代表と交流することとなり、意気投合した2社は新しい価値の会社「スノーピーク・ビジネスソリューションズ」を立ち上げるに至りました。
村瀬講師のハーティスで行っていた「現場のIT基盤(データ活用)」「働き方のIT基盤(クラウド導入)」に「人財の育成基盤(野外研修)」という事業が加わり、デジタルとリアルの両面から企業の成長を支援することになりました。

コロナ禍での顧客創造

2020年春に発生したコロナウイルスにスノーピークも大きな打撃を与えられました。
全店舗一斉休業、全キャンプフィールドの閉鎖、すべてのイベントの中止となり、活動のすべてが停止してしまいました。
過去最大の危機を迎えたスノーピークですが、経営者・経営幹部が話し合ったのは「これは自分たちだけのことではない」ということでした。
だからこそ「上場企業として率先垂範すべき」として、周りのやり方に合わせるのではなく、どうすべきかのメッセージを送れるよう「(自分たちの)あるべき姿から考える」ことを決めました。その上で、マーケットに対して新しい生活スタイルと働き方の劇的な変革機会であることを伝える絶好のチャンスであるということを全社で共有をしました。
具体的には現状維持のための「守りの戦略」とこれまでとは異なるアプローチで打って出る「攻めの戦略」でした。
「守りの戦略」とは会社存続のためのキャッシュの確保や在庫調整に加え、社員さんと顧客の安心安全を最優先するためのテレワークの徹底です。テレワークは以前から実施していましたが、今回を機にテレワークを基本とすることにしました。
テレワークには管理や評価について課題が言われていますが、まずやってみよう、まさに率先垂範の考えで今の状況下における「社会の見本」となるべく、そして今を変革の機会と捉えて取り組みました。
その姿を見せることで社会の見本になるだけでなくキャンプ用品を使った新しいビジネススタイルや価値観を広く伝えられると考え、社員さんが自主的にコラムを作って積極的に発信していきました。

「攻めの戦略」とはECサイトへ全面シフトすることでした。
これまでもECサイトでも展開していましたが、こちらも変革の機会と捉えて思い切って新しい営業手法にシフトし、オンラインマーケットを新しい顧客との関係や商品開発の場に位置付けました。
キャンプ用品をそれだけにとどめず、自宅で楽しめるツールとして紹介することで、同じ状況下にあるこれまでの顧客に訴求し、なおかつキャンプとは縁のなかった人に対しても新しい価値観を伝えることになりました。
チャット使ったオンライン接客やYoutubeなどSNSを活用しての発信も社員さんの自主性に任せました。何のルールも無しに行うと問題が起こるリスクはありますが、それを言っていては始まらないということで、早く行動することを優先しました。
その結果、緊急事態宣言が発令された4〜5月はすべてが閉鎖されたことで売り上げは前年を下回りましたが、その時迅速にオンラインへシフトしたことで宣言解除後は一気に店舗に顧客が集まりました。同時に新しい顧客も獲得することに成功したため売り上げは前年を大きく上回ることになったのです。

今回のこの環境変化に対するアクションは「マーケットを創造するために不可欠な要素」であると村瀬講師は言います。
今回新しいマーケットを生み出したきっかけはコロナと緊急事態宣言による行動制限でした。リアルの活動をストップさせられたことで社内に危機感と現況化での自分たちの「あるべき姿」が醸成され共有されました。それによって現場が主体的かつ積極的にオンラインでの行動を起こすことでこれまでの顧客が反応し、同時にこれまでに無かった価値観(家での活用)が伝わることで新しいマーケット(新しい顧客)が創造されました。
ただ、そこにはこれまでの「スタッフ間の信頼関係」が土台にあり、さらに野外でのビジネス環境を提供してきたことで「IT活用の基盤」が構築されていたことが大きな要因としてあると村瀬講師は言います。
すなわち、「スタッフ間の信頼関係」「IT活用の基盤」「部門毎の主体的実行」「あるべき姿の共有」の4つがマーケットを創造するために不可欠な要素であるということです。
加えて、それぞれの要素には求められるレベルがあります。
事が起こった時に会社の判断が遅れるとその分だけ結果はついてきませんから「あるべき姿の共有」には迅速さが求められます。
やることを決めたら多少のリスクは覚悟の上で現場の社員さんの主体性に任せないと勢いのある取り組みはできませんから、「部門毎の主体的実行」には大胆さが求められます。
「スタッフ間の信頼関係」「IT活用の基盤」はこれら行動・活動の本になるものですから曖昧であると問題が起こったり思ったような結果は得られませんので、常日頃から緻密さが求められるものだということです。
特にこの土台となる部分については、村瀬講師のハーティスとスノーピークが一緒になった時、キャンプ用品の会社とIT企業というかけ離れた会社が一緒になる時に慎重に構築していった経験がありました。どちらの会社の社員さんも最初は異業種が合流するのでそれぞれ違和感があります。そこで重要になってくるのがスノーピークにIT活用の基盤を構築するためのチームからの現場への合意形成です。まずはそもそもの推進チーム内の合意形成をしっかりと行い、確実に現場へ浸透させるために推進チームとスノーピーク側の担当者との合意形成を図ります。ここが一番重要な橋渡しの役目であり、ここがうまく繋がればあとはスノーピークの各セクションでの理解を浸透させていくということになります。
つまり、スノーピークではコロナ前のハーティストの合流によって緻密な「スタッフ間の信頼関係」「IT活用の基盤」が出来上がっていたので、コロナというピンチの時にそれをチャンスに変えることができたわけです。

生涯価値の提供

スノーピークでは今年ミッションステートメント「スノーピーク・ウエイ」の一部を変更しました。
これまで「ライフスタイルを提供」としていたものを「ライフバリューを提供」にしました。これからはスタイル(様式)だけではなく、人生そのものに充実した豊かなものにする、幸せになってもらうことを目的にするという意味です。
そのためにもこれまでは「ものやサービスを提供」していたところを「体験価値を提供」ということに変更しました。
週末の遊びのためのアウトドア用品の提供だけだったものが、家庭内で活かされるもの、さらには働く場までも提供するようになっています。それもただ道具の活用ということではなく、すべては「人間性の回復」のために使用する人の人生が豊かなものになっていく体験そのものを提供し、スノーピークがユーザーの人生に寄り添っていく存在になることを意味しています。
つまり、生まれてからシニアまでのあらゆるステージでこのバリューを提供し、同時に交流することであらゆるユーザーの意見を取り入れ、さらに価値あるものを提供していく。
その価値を世界中に広げていくというのがスノーピークが目指しているところだということです。

「物の提供」から始まった会社が、「体験の提供」になり、「つながりの提供」そして「生涯価値の提供」を様々な機会を通じてこれを実現していくということをやり続けているわけです。
ビジネスソリューションズという会社はほとんどの会社と接点がありますが、キャンプをしている人は全体人口の7%と言われ、その人たちだけにしか提供できないということでは非常に残念。ですからビジネスの世界に我々の価値観を取り入れることでチームが一体となったり、クリエイティブな発想が生まれたり、そこに新しい価値を生む、事業が新しい変革を起こせるきっかけにしてもらえるような、そういうつながりをもってもらえることができれば、以前の村瀬講師がそうであったようにそこでの体験を社内に導入することができます。
キャンプというのは趣味ではないと村瀬講師は言います。あくまで自然とのつながりというのは人間すべての共通財産であり、必須のものだということを何らかの形でもっともっと広げて伝えられることができれば社会変革に少しでも役に立てるのではないかということです。
そのためには外でディスカッションしたり、議論したり発想したりという場所が必要だということでした。
先述の通り、これまでバッドサイクルでも成長できた時代の発想の仕方では、これから人口が減少し閉塞感のある時代では通用しません。
シンギュラリティ(技術的特異点)が2045年に現れる、つまり農耕革命、産業革命、情報革命に次ぐ革命レベルの変化が起こると言われていますが、この革命レベルの変化に対応するには全く今までにない価値観で行動しなければいけないと言われているわけです。
そのためには屋外でキャンプ用品でビジネスの打ち合わせや会議をしたりすること、これまでは誰も考えてこなかったような行動や考え方が求められるということだと村瀬講師は言います。

最後に村瀬講師は変えるのに何から始めたらいいかわからないという人向けにスノーピークの「FDチェア」を購入し、それを持って色々なところにでかけてFDチェアで仕事をしてみることを勧めてくれました。

 

村瀬亮講師、貴重なお話しありがとうございました。
ご参加いただいた皆様にも改めて感謝申し上げます。