今回の例会は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため4月8日に7都府県で発出された緊急事態宣言、それに応じた活動自粛にともない、初めてのオンライン例会となりました。

今取り組むべきこと

この現在進行形の緊急事態において、できることは何でしょうか?
顧客も取引先も関わる全ての人が身動きが取れない中にあって会社は何をすべきなのでしょうか?
まずは経営を持続させるために資金面での対策を打たなければなりませんが、私たち経営研究会には様々な分野のプロフェッショナルがいますから、是非とも会に向けて情報を共有してもらい、早急に打開策を打っていくことです。

足元の対策だけでなく、先を見据えた、このコロナ禍が収束した後のことも考えておかなければなりません。
今起こっている事態は近代において経験したことのない「災害」です。景気の浮き沈みではなく、天災によるものではなく、正に現在進行形の事態です。先が見えない中、とにかく行動を制限し活動を自粛するしかなく、世界経済は落ちていく一方。
そのような中で、収束後に以前のように顧客がまた戻ってくると言い切れるでしょうか?
つまり、経済事情が一変した中で改めて「価値」を問われることになるということです。

そこで、以前のように顧客が戻ってくるように今取り組むべきことは2つです。

  1. これまでと変わらない継続したコミュニケーション
  2. これまでの取り組みを見直し手を打つ

以前のような姿にするためには、活動が制限されている中でもコミュニケーションを取り続けること。
一方で、これまでの価値観が変わることを想定し、これまでの取り組みを見直し、変化に対応するための手を打つことです。
会社の価値は何か、その価値は正しく伝えられているか。以前のようなスムーズなコミュニケーションの中ではそれほど深刻になることもなかったかもしれませんが、思うように人との交流ができなくなった社会において「伝え方」は非常に重要です。
これまでの取り組み方、自社の価値の伝え方を見直し、価値が正しく伝わるようにしなければなりません。

広告と広報の違い

ここで企業価値の伝える方法である「広告」と「広報」の違いを見てみましょう。

「広告」とは商品・サービスを販売するための宣伝告知
(例)テレビCM、折込チラシ、ネット広告など

「広報」とは販売を目的としない告知、報告
(例)公共機関が出す告知(各種相談窓口案内、地域の行事案内など)、病院内に掲出されている告知(病気の予防、健康アドバイスなど)

このように見ていくと、広報とは公的機関が行うものであり、企業が行うのは広告のように思えます。
ではなぜ、今回のテーマにある「広報」が今取り組むべきものなのでしょうか?
答えは「インターネットが普及したから」です。

インターネットBefore After

インターネットの普及が、特に中小企業にとって広報が重要になった理由であることを説明するために、これまでの企業の情報発信の変遷をインターネットの登場前後で見ていきます。

インターネットが普及する以前の企業の告知は印刷もしくは電波による「媒体告知」がメインでした。新聞・雑誌の広告、ラジオ・テレビのCM、さらに車内吊り広告や折込チラシ、DMといった印刷物です。
当たり前のことですが、これらはすべて「費用をかけて」広告していました。
新聞・雑誌の広告、ラジオ・テレビのCM、いずれもデザインされた原稿を制作し、それを各媒体会社(新聞社、雑誌社、各放送局)へ持ち込み、費用を払って掲載、放送してもらいます。原稿の制作にも費用はかかりますし、たいていの企業はこれらをすべて代理店にまかせますから、さらに費用がかかります。
新聞折込チラシも同様に、チラシを印刷し、新聞社を通じて新聞販売所に納品、指定の新聞に折り込んでもらって各家庭に配布してもらいます。これらの費用は最低でも10数万円かかります。

広告の課題は費用だけでなく、コストパフォーマンス、つまり費用に対する効果がわからないことでした。
多額の費用をかけても、それで集客できるという保証はありませんから、資金力の無い中小企業にとってはなかなか手が出せないものでした。
ブランド力があり資金力もある大企業との格差は広がる一方でした。

そんな中で登場してきたのがインターネットであり、その進化と普及によってビジネスにおける情報伝達が大きく変化しました。
インターネットはこれまで使用してきた通信回線を利用しながら、音声以外のデータ(テキスト、画像)を送信するものです。
広告に必要な要素、テキストと画像によるイメージと広域への発信が揃っており、なおかつ自社が持つ(繋がる)通信回線でそれを行えることから費用は格段に安く抑えることができるようになったのです。

しかし、パソコンの普及と合わせて急速に普及していったインターネットですが、最初から費用を安く、最低0円で情報発信ができていたわけではありません。
普及し出した当初は、多くの企業が「ホームページ(自社サイト)」を作りましたが、非常に高価でした。
その理由はサイト構築の技術が一般化されていなかったからです。
当然、インターネット上のポータルサイトが新しい媒体として生み出された「バナー広告」もこれまでの広告と違いはほとんどなく非常に高価でした。

SNSという潮流

でも、インターネットは変化し続けました。
グーグルをはじめとしてSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)という新しい考え方によるサービスが登場し、情報発信が劇的に変化しました。

SNSというとまず頭に思い浮かぶのが「無料のサービス」ということではないでしょうか?
つまり、自社の技術を無料で提供することで広く会員(アカウント)を集め、そこに対する的確な広告を行うことで多くの広告主と収入を得る、というこれまでの広告にはなかった発想のビジネスがSNSです。

このSNSの登場により、インターネットでの情報発信がより身近に行えるようになりました。
非常に高価だったホームページも今では無料で作ることができ、広告も各SNS会社の「検索連動型広告」では(これまでと比較して)非常に安価に、かつ効果がわかる「コストパフォーマンス」に優れた広告を実施することができるようになりました。
それだけに、SNSの登場によってインターネット上の自社所有物、ホームページなどは自社の「資源」であり「資産」になりました。

そのことを象徴するのが近年急激に伸びている「シェアリング・エコノミー」です。
有名な「airbnb」や「Uber」などはインターネットが持つ力を最大限利用して生まれた事業であり、インターネット(WEB)が強力なレバレッジを生むツールであることを示しています。
同時にこの「シェア=共有」が現代のキーワードであり、不可欠なニーズであることを理解しておかなければいけません。

なぜ広報なのか?

ここで改めてWEBとSNSによって変わったことをまとめます。

  1. 誰もが情報発信できるようになった

  2. 誰もが情報検索(選別)できるようになった

  3. 情報を共有しやすくなった

この3点から見えてくるものがあります。
それは「欲しいものはWEB上にある」ということです。

ここに、かなり以前からコピーライティングの世界で言われている言葉があります。

「人は感情でモノを買い、理屈でそれを正当化する」

これは、人は商品・サービスそのものではなく、それによって欲求が満たされると感じた時に購入する、ということを述べています。
つまり、人が求めているのは「欲求を満たし、行動を正当化してくれる理屈」=情報だと言えます。
特に

「販売を目的とした情報(商品・サービスのスペック、価格)」=広告よりも、「問題課題・悩み解決を目的とした情報(商品・サービスの効果効用)」=広報を求めていると言えるのです。

うまくいかない広報の課題

ここからは、現在行われいる広報に見られる問題課題を紹介します。

[課題1]情報発信しない

ここまで情報発信についてお伝えし、WEBが普及した現在ではとても手軽に情報発信ができるようになっているにもかかわらず、情報発信をしない会社や経営者がいます。
その理由は大きく3つあります。

    1. よくわからない
      WEBやITに対して苦手とする人は多いのですが、実はこれは「伝えよう」とする気があるかないかの問題。

    2. やっても効果がない
      自社の事業には当てはまらない、効果があるならやる、という人も多いいのですが、これは「広告」の概念であり、本来求められている情報発信を理解できていない。

    3. 忙しい
      忙しいのはそれだけ困っている人が多い証拠であり、困っている人を一人でも多く助けてあげるのが仕事。
      その仕事を伝えるのが情報発信であり、情報発信が「お困りごと」解決の第一歩。

[課題2]伝えられない

これは、従来の情報発信の仕方、つまり広告としての発信に囚われて、現在求められている発信の仕方、拡散の仕方がわかっていないという課題です。

これまでの企業の情報発信の多くは「販売が目的の広告もしくはプロモーション」でしたが、これは企業から一方的に出されるもので、いわゆる「プロダクトアウト」です。
しかし、WEBが普及したこれからの情報発信は「ユーザーが抱える問題課題、悩みを解決するのが目的」としたもの、つまり「マーケットイン」でなければならないわけです。

[課題3]伝わらない

企業の情報発信は自社独自のブログとその他のSNSを使って行うということがわかりましたが、ではその通りにすれば情報は伝わるのかと言えばそうではありません。

人対人のコミュニケーションであっても同じですが、例えば多くの人に向かって何かを伝えようとする時、大声で話せば伝わるでしょうか?
声を上げる人が有名人であればそれなりの人が耳を傾けるでしょうが、そうでは無い場合はまず「関心」を示しません。
これは今までも同じことで、インターネットでも同じです。
つまり、いくらブログを書いたからといってそれが多くの人にヒットするとは限らないということです。

情報が伝わるようにするには、まず5W1Hが明確でなければいけません。

  • Where? どこが(抱えている問題課題)
  • Who?  誰に(ペルソナ)
  • What?   何を(伝えたいこと)
  • Why?  なぜ(情報を伝える理由)
  • When?  いつ(気づいた今)
  • How?  どのように(アクションして欲しいこと)

先述の通り、ユーザーが求めているのは問題課題や悩みの解決策であり、その情報です。
企業は自社の商品・サービスが「どのユーザー」の「どの問題課題」を解決できるのかを示して、はじめて特定のユーザーが関心を示してくれます。

[課題4]よくわかっていない(社内の共有不足、理解不足)

企業の情報発信において重要なことでありながら案外見落としていることがあります。
それは、企業内の共有であり、情報発信の理解ができていないことです。

企業の情報発信は営業活動と同じで、従業員であればその企業に対する質問をすれば同じ回答ができなければいけません。
商品・サービスはもちろんですが、強みや他社との違い、販売方法や方針や理念に至るまで、誰が答えても同じ答えがかえってこないといけませんし、そうでなければユーザーは安心してその企業とコミュニケーションをはかれません。

ユーザーは情報発信をした担当者を見るのではなく、どこの企業なのかを見ています。
担当者が決まっているから大丈夫、あるいは経営者だけが発信をするから問題ない、と考える方もいますが、実はそれも機会損失であることを理解してください。

先述の通り、今は誰もが情報発信できる時代になったのですから、企業の情報発信も全社で取り組んでいく方が有利です。
情報発信は多ければ多いほど、インターネット上でユーザーと繋がる(検索にヒットする)確率は高くなります。
企業の情報発信は営業活動と同じ全社的な取り組みとして捉え、全社員が同じ情報を発信できるようにしましょう。

[課題5]画像しかない

ここからは情報発信における具体的な方法について見ていきます。
まず最初に、投稿する記事に画像しかないというもの。

ブログやその他のSNSでの投稿が個人的なものである場合は、当然何の問題もありません。
企業の情報発信の場合は、画像しかないという情報はほぼ何の意味も価値もありません。
理由は2つあり、一つは画像だけでユーザーが求める問題課題の解決策を示すことができないこと、もう一つは画像だけでは検索にヒットしないからです。

確かにダイエット商品の効果を示すためにビフォーアフターの画像を見ることはありますが、果たしてそれだけの情報でユーザーの欲求を満足させることは可能でしょうか?
これが動画であった場合、動画の中で説明をすることが可能ですから、画像よりもユーザーの感情を動かすことは可能です。
ただし、動画に対する説明や紹介が無ければそれは同じことです。

この画像や動画だけで多くの人を引き付けられると考えるのは、有名人の投稿やユーチューバー、さらに最近の若年層の活字離れや人気SNS(インスタグラムなど)の情報に惑わされているように思われます。
若い人は文章を読まない、画像や動画は見てもらえるというのは明らかに間違いです。
老若男女、興味関心の無いものであれば読むことはありませんし、見向きもしません。
興味関心のあることであれば、どれだけ長文であっても読みます。

もう一つの理由、画像だけでは検索にヒットしない、というのは後に説明する「検索エンジン(AI)」が検索のカギを握っており、それが画像だけの場合は「画像がある」という程度にしか感知しないからです。
WEBでの情報発信のキモはこの「検索」にありますから、検索に何の影響も与えない行為に価値はありません。

[課題6]文字しかない

逆に文字しかない投稿はどうでしょうか?
これはNGどころか、文字は多ければ多いほどインターネット上の評価は高いのです。

先ほど説明した通り、検索のカギを握っている「検索エンジン(AI)」はインターネット上のWEBサイトのテキストを読み取り、その内容を判断し評価しています。
このWEBサイトに対する検索エンジンの評価を高めるための取り組みを「SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)」と言います。

これは検索サービスを提供している企業、現在はほぼGoogleですが、その検索エンジンの評価の基準に照らしてWEBサイトをはじめとするインターネット上の投稿を作るということです。
このSEOとその評価基準は後述します。

WEBによる情報発信においては文字、文章が基本であること、その量は多ければ多いほど良いということ、ただしユーザーにとって有意義なものであり、わかりやすく理解しやすいものであることが基本です。
文字だけでわかりにくければ画像や動画を含める、ユーザーのことを考えてバランスの取れた「質の高い読み物」が求められています。

[課題7]日記

先述の通り、ブログやその他のSNSでの情報発信を、企業のものであっても日記のようにしてしまうのは、有名人のブログやSNSの影響です。
有名企業であればまだ同じような感覚で興味を持ってくれる人もいるかもしれませんが、名の知れない中小企業の、それも仕事とは関係のない普段の生活上の話を知りたがる人はいません。

さらに気をつけないといけないのは、自社の情報(自分の肩書きや所属)と共に発信した場合、例えば「◯◯◯会社 社長のブログ」などとして発信する場合。
個人的な投稿なので何の問題もありませんが、それを読むユーザーはその内容、つまり考え方や価値観、センスを個人だけでなくその会社にも投影するということです。

企業が情報発信のためにブログ等を利用する場合は、日記ではなく、あくまで「ユーザーが求める情報=問題課題、悩みの解決策」でなければいけません。

[課題8]他社批判

インターネット上にはたくさんの比較サイトがあります。
飲食店などを探す時にはその比較サイトのレビュー(感想)や評価を参考にする方が多いと思います。
しかし、近年この比較サイトなどのレビューや評価がそのサイトを運営する会社によって操作されているのではないかといった疑いの目が向けられています。

その真偽は定かではありませんが、他社との比較というのはそもそもユーザーにとって重要な情報なのか、が考えるべきことです。
比較というのは相対的な価値のことですから、ユーザーにとってみれば同じ商品・サービスの情報でしかありません。
ユーザーが求めているのは「困りごとの解決策」であり、そこに他とは異なる「絶対的価値」があることを伝えるほうがユーザーにとっても重要です。

この企業における他とは異なる絶対的価値、「独自のウリ」のことを「USP:Unique Selling Proposition)」と言います。
これも後ほど説明します。
いずれにしても他社との比較を自社の情報として扱ってはいけませんし、他社批判はしてはいけません。

[課題9]内容と異なるタイトル

困りごとの解決のために検索をして答えを探します。
画面には検索をかけた結果が表示されますが、何を見て判断して選んでいるでしょうか?

画像や動画が表示されていることもありますが、大半は文字であり、検索をかけたキーワード(知りたいこと)が含まれたものが上がっていますが、一番目につくように表示されているのはその記事のタイトルです。
ユーザーは検索をかけて出てきた結果の中から自分の知りたいことが書かれていそうなタイトルを選びます。
それだけにタイトルは非常に重要であり、同時に気をつけなければいけません。

なぜなら、知りたいことが書かれていそうだと判断してそのサイトを訪れたところ、まったく見当違いだった、あるいは最後まで読んでも結局答えが書かれていなかった、などといったことになった場合、恐らくそのユーザーは二度とサイトに来ることはないからです。
記事を読んでもらいたい、サイトへ誘導したいという気持ちはわかりますが、内容と異なる、あるいはかけ離れたタイトルはNGです。

[課題10]押し売り

何度も繰り返しますが、ユーザーがインターネット上で求めている情報は「知りたいこと、わからないこと=困りごとの解決策」です。
また、ユーザーはそれを「自ら検索し選択」したいと考えています。大手広告代理店が提唱していた「消費者の行動モデル」の変遷からそれを見ることができます。

インターネットが普及しだした初期段階に提唱されたのが「AISAS」です。

Attention(注意)→Interest(興味)→Search(検索)→Action(購買)→Share(共有)

これ以前、インターネットが普及する以前は「AIDMA」とされ、

Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(購買)

インターネットが普及する以前の情報は先述した通り企業から出される広告もしくは類似するテレビ・ラジオあるいは新聞・雑誌等の印刷物で紹介される記事でした。
それが無ければ商品・サービスの存在を知ることはできませんでした。
つまり「AIDMA」は広告ありきの行動モデルだったわけです。

インターネットが普及し、その活用が高まってくると行動に「検索」というアクションが加わり、さらに「共有」というこれまでにほとんど見られなかった行為が生まれ、「口コミ」というのが大いに注目されました。
ただし、これはまだ企業の広告活動があって初めて情報に触れ、その情報に興味を持つことで購買のために検索をする、とされています。

現在はインターネット利用がさらに進み、SNSの発展もあって消費行動は大きく変化しました。
それが「DECAX」です。

Discovery(発見)→Engage(関係)→Check(確認)→Action(購買)→eXperience(体験と共有)

現在はもはやインターネットでの検索なしでは考えられず、それぞれが自発的に検索し発見するところから始まります。
さらに「Engage(関係)」とは検索して見つけた情報に対してユーザーがコミュニケーションを図ることを表していますが、つまり検索の目的が決して購買ではないということを意味しています。
これまで説明した通り、ユーザーは自分の「困りごと」の解決のために検索をし、その答えの中で購買が必要だと判断した場合に行動するというわけです。

このことからもわかるように、現在の消費活動の主役はユーザーです。
ユーザーが自分に適した情報を選択し、自らが情報の再発信者にもなる。
商品・サービスを買うか買わないかはユーザー次第、先に紹介した言葉「人は感情でモノを買い、理屈でそれを正当化」であれば、買うかどうかは「ユーザーの感情」に響くか否かにかかっているということです。
言い換えれば、自発的に行動できる現在のユーザーは押し売り、広告を敬遠するということです。
自ら検索して発見したサイトで、いきなり購買を求めてきたら大抵の人はそのサイトを離れていきます。

人を魅きつける伝え方[10STEP]

ここからは、前章の広報における課題に対して具体的な改善策、方法をお伝えします。

[STEP1]ユーザーを知る(WEBを使う)

[課題1]であった「情報発信しない」というのは、苦手意識であったり、これまでの企業主体の情報発信の概念から抜けきれていないことが原因でした。

しかし、現在は誰もがWEBを使って自由に情報検索でき、情報発信できる時代です。
言い換えれば、WEB上に情報がなければ存在が確認できず、同時に価値も認められないということであり、WEBを使っての情報発信をしなない会社の「存在価値」が問われていると言えます。

情報発信をしない会社の多くは普段からWEBを利用しないことが考えられます。
それだけに企業広報のSTEP1は「ユーザーを知る」、つまりWEBを利用することです。
先述の通り、現在はWEB上にあらゆるニーズとユーザー、その情報がありますから、まずは自社の商品・サービスに関連した情報、ニーズ、ユーザーをあらゆる角度から検索することから始めてください。

[STEP2]ブログ型ホームページ

[課題2]にあった「マーケットイン発想での情報発信」とは具体的にどういうものでしょうか。
その答えの一つが「ブログ」による情報発信です。

ブログもSNSの一つで、SNSの初期段階に生まれました。
日本で一番有名なのは「アメーバブログ」で、今もたくさんの方が利用しています。
このブログの利用者の多くは、個人でも企業でも販売目的よりも「情報共有」を目的に使用しています。
利用したお店の情報や食べたものなど、「日記」のように使っています。
先述の通り、現在のニーズの基本はこの「共有(シェア)」ですから、このブログこそが情報発信ツールとして最適なのです。

さらに、WEB上での企業の情報発信の基本はホームページ(WEBサイト)だということも理解しておかなければいけません。
多くの人は同じSNSでもフェイスブックやツイッター、LINEといったコミュニケーションツールを利用して情報発信をしていますが、これらのツールは情報共有の範囲が限定されています。
関係のある人(友だち、フォロワー)には確実に情報が届きますが、それ以外の人へ伝えるにはその関係ある人たちから拡散(シェア、リツイート)してもらわないといけません。
また、これらのSNSはそのサービス上での検索はできても、一般の検索(GoogleやYahoo)にはヒットしませんから、範囲は限定的でビジネスで利用するには不十分です。

このことから企業の情報発信の基本はホームページ(WEBサイト)、発信ツールはブログということになります。
ただし、ここでもう一つ注意しないといけないことがあります。
それは先に挙げた「アメーバブログ」のような、いわゆる企業による「ブログサービス」の利用です。

特定企業によるブログサービスは他のSNSと同様、そのサービスの会員(アカウント)となることで無料でブログが始められるものですが、ここで書いた記事はすべてそのサービス上のもの、例えて言えば賃貸マンションの部屋を借りているようなもので、そこにいる間はいつまで経っても自分のものにはなりません。
個人で行っている場合は何の問題もありませんが、会社として、ビジネスとして利用するなら自社の資産となる方が良い。

そこで近年増えているのが、ブログが内蔵されたホームページ(正確にはブログ形式で作られたWEBサイト)です。
この「ブログ型ホームページ」だと、ブログがホームページの1ページとなるので、記事を書けば書くほどホームページのページ数が増え、ホームページの評価が高くなる、つまり資産になるということです。
さらに、一般の検索にヒットしますから広域の情報発信が可能です。

企業情報のWEBでの伝え方の基本は、ブログ型ホームページでブログを書き、その記事を他のSNSで関係ある人に伝え拡散してもらうことなのです。

[STEP3]ブログで情報発信(コンテンツマーケティング)

 

「ユーザーの求める情報(問題課題・悩みの解決策)を把握もしくは予測し、それに対して自社が提供できる情報=コンテンツをWEB上に投げかけることで親和性の高いユーザーとつながりを持とうとする取組み」

これをコンテンツマーケティングと言い、それを実現するのがブログによる情報発信です。
これは[課題3]で説明した通り、人に情報を正しく伝えるためには「5W1H」を明確にすることが基本だと言いましたが、つまりそれをインターネット上で行おうとするのがブログによるコンテンツマーケティングです。
「5W1H」でユーザーを特定し、特定のユーザーのための記事を作成しブログで発信することではじめて自社が求める特定のユーザーに伝わる、届くということです。

裏を返せば、ブログをいくら書いても伝わらないのは、5W1Hが不明確なまま記事を書いているからかもしれません。
誰の何のためのものなのかわからない情報、記事をいくら書いてもユーザーには伝わらない、届かないということです。

また、[STEP2]のブログ型ホームページで「自社独自のブログ」を書くと、書いた記事一つ一つがホームページの新しいページとして加わっていきますので、書けば書くほどホームページの情報は増えていきます。
先述した通りインターネット上のそれぞれのWEBサイトの評価を決めているのは「検索エンジン(AI)」ですが、このホームページの情報量、ページ数は多ければ多いほど評価は高まります。
評価が上がるというのは「SEO(検索エンジン最適化)」がされていることですから、検索にヒットされやすくなるということです。これが自社のホームページが資産になるということです。

ただし、気をつけないといけないのは、単にページ数が増えれば評価が上がるというわけではありません。
ここで書いたようにあくまで「ユーザーのため」の質の高いコンテンツであることが絶対条件です。
間違ったSEO対策として意味のないページを増やしてしまうとユーザーにも迷惑がかかりますし、最悪の場合はインターネット上から排除されます(検索しても表示されない)。

[STEP4]SNSで情報を拡散

[STEP2]でも触れましたが、インターネット上の情報発信の基本はホームページ(WEBサイト)で、SNSはそこで発信された記事を拡散するために使用します。
その理由として、コミュニケーション目的のSNS(フェイスブックやツイッター、LINEなど)は

  • 範囲が限定的(友達、フォロワー)
  • 一般の検索にヒットしない

この2点を上げましたが、より根本の理由は先述したことも含めて以下になります。

  • ブログ以外のSNSではユーザーの「困りごと」の解決を書けない
  • ブログ以外のSNS(外部ブログを含む)にいくら書いても自社の資産にならない

ブログ以外のSNSは知り合いとのコミュニケーションや情報共有が目的ですから、そもそも長文で伝えるようにはできていません。
書いても問題ではありませんが、決まったタイムライン上に表示された長文は読みづらく、その他の情報がドンドン入ってくる中では読む機会が無くなったり、迷惑がられるだけです。
かと言って、ユーザーの「困りごと」の解決策を短い文章で伝えることはできません。

さらに、アメーバブログなどの「外部ブログ」やブログ以外のSNSで情報発信をしても、それを運営する会社の資産(各SNSサービスが巨大化し評価が上がる)になるだけです。
これらのことから、情報発信の流れはあくまで下記にすべきです。

  1. ブログ型ホームページのブログを書く
  2. その記事をSNSで発信(ブログのURLをSNSのタイムラインに貼り付けて投稿)

ブログのURLをSNSに貼り付けて投稿というのは、SNSからブログへのリンクを貼ることになります。
この自社サイトへのリンクを「被リンク」と言い、これも評価されるポイントの一つです。
つまり、情報の参照元ということになるわけですが、リンクを貼ったサイトの評価が高ければ高いほど、被リンクの評価も上がります。
フェイスブックやツイッター、LINEなどはどれもトップクラスのサイトですから、そこからの被リンクだと評価されるのです。

[STEP5]業務日報で慣らし運転

ここまではWEB広報の準備段階の話でしたが、ここからは具体的な情報発信について、記事についての解説をします。

まず、ブログを書いたことがない、あるいは「お知らせ」や「日記」のようなものしか書いてこなかったという方にとっては、「何を書けばいいのか」ということになるかと思います。
先述の通り、企業が発信すべき情報とは「ユーザーが抱える問題課題、悩み、欲求の解決」ですから、それを考えて記事を書けば良いわけですが、いきなりだとまず書けないと思います。

実は、ユーザーは問題課題の解決策を探しているのですが、ズバリの解答よりも経緯や体験を探しています。
自分に合った、自分と同じような問題課題、自分と同じような境遇、その中から自分にピッタリの解答を探しています。
原因や理由、そこから何を選択し、結果どうなったのか、を探しているのです。

これは、お客様の要望を聞いて、満足してもらえる提案をし、その結果どうなったのか、という普段のお客様とのやり取りそのものです。
ですから、初めから記事を書こうとせず、普段のお客様とのやりとり、つまり日々の業務日報のようなことを書いていけば自然と自社と親和性の高いユーザーが求めるものが伝えられます。

これと同様に「お客様の声」を掲載しているサイトもよく見ます。
お客様本人の言葉であれば信用度も高く、共感しやすいので記事としても質が高いと言えます。
ただ、お客様の承認が必要で、お話を聴いて記事にしないといけないので、これも少しハードルが高い。
業務日報だと自分がやったことを自分の言葉で書けば良いので、書き始めるならこちらのほうが良いと思います。

ブログも1回書けば良いわけではなく、どんどん書いていく、書き続けることが大事なので、まずは書くことに慣れることが必要だということです。

[STEP6]他にはない自社の独自性を明確にする

[課題8]で他社との比較や批判はいけない、と述べました。
比較という「相対的価値」はユーザーにとってそれほど大きなものではなく、むしろ商品・サービスの価値を下げることになりかねません。

ユーザーは「自分にとって必要な情報」だと判断した(感情に響いた)場合に行動をします。
それであれば「そんな貴方に」という限定した情報、伝え方をした方が良い。
この限定した売り方やユーザーを絞り込んだ伝え方は、ユーザーにとって他と比較したものではなく自社独自の発信となります。
これを「USP:Unique Selling Proposition(独自のウリ)」と言います。

差別化あるいは独自性と聞くと、全く新しいものや技術、特許のようなものが必要だと考えられますが、そうではありません。
そういったものがあれば良いですが、仮に持っていたとしてもユーザーが求めていなければ何の価値もありません。
この「独自性」もあくまでユーザー目線で考えるべきものなのです。

このUSPを考える一つの方法が「マーケティングの5P」を組み合わせて考えてみるというものです。
マーケティングの5P(要素)とは

  1. Product(商品・サービス、製造工程など)
  2. Place(店舗、オフィス、バーチャル、配送など)
  3. Price(定価、仕入れ、時間など)
  4. Promotion(宣伝、イベント、サンプリングなど)
  5. Person(スタッフ、技術者、紹介など)

これらを単体で独自性を見出すのは難しいので、組みあせて考えてみるのです。

  • Product×Place×Person=出張サービス
  • Price×Promotion=お試し価格
  • Product×Promotion=商品パッケージ
  • Product×Price=サブスクリプション

現在流行しているものや話題のあるものを調べていけば色々な組み合わせが見えてきます。
同じような商品・サービスでも、要素を考えていくとユーザー(のニーズ)を絞り込んでいくことができます。
企業の情報発信では、このUSPを考え出し、伝えていくことが大事です。

[STEP7]伝える相手を明確にして”刺さる”情報を

繰り返しになりますが、WEB広報で最も大事なことは「誰に」「何のための」情報を伝えるか、つまり「ユーザー目線」を持つことです。
企業の情報発信はどうしても広告目的の「商品・サービスの案内」もしくは自社の活動などを伝えがちです。
それがユーザーが求める情報(問題課題、悩み、欲求)であるなら良いのですが、まず合致することはありません。

では、どうすればユーザー目線の情報発信ができるのでしょうか?
[STEP5]でも書きましたが、ユーザー目線を一番身近に知ることができるのは「お客様の声」です。
現在のお客様は何かしら「困りごと」があったから自社の商品・サービスを利用し、満足をしたからこそお客様であるわけです。
この「自社の商品・サービの典型的なユーザー像」のことを「ペルソナ」と言い、このユーザー像を考えることこそが「ユーザー目線」です。

お付き合いする最初の「きっかけ」と結果こそがユーザーが求める困りごとの解決策なのです。
ここで注意すべきは、この「きっかけ」というのは例えば「対応が良かったから」など自社の良いところや強みとしていることだけではないということ。
自社とお付き合いするまでの経緯、発端となった問題課題から、どこで自社を知り、お付き合いをすることにした理由まで、この一連の経緯が「きっかけ」です。

「お客様の声」を聴く、集めることはとても大事ですが、自社の都合の良いことばかりを集めても仕方ありません。
それよりも、もっと客観的に自社とユーザーの繋がりを知ることが大事です。
この「きっかけ」がいくつも集まると、そこから傾向が見えてきますが、それが自社の「ペルソナ」になります。

「ペルソナ」が明確になれば、あとはそこに向けて何度も情報発信して新しい繋がりを作っていけばいいわけです。
ただし、この「ペルソナ」も一度で明確になるとは限りませんから、何度も情報発信をして、その反応を分析することでより絞り込んでいくことが重要です。

[STEP8]書き方の基本は論文形式

[課題6]でSEOについて書きましたが、ここで改めてSEOについて説明します。

SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)

ホームページやブログの記事など、インターネット上にある各サイトやページはこの「検索エンジン」というAIによって評価されています。
現在の検索サービスはほぼGoogleが握っていますので、この検索エンジンもGoogleがコントロールしています。
つまり、インターネット上の評価はGoogleの基準によって行われているということです。

では、インターネット上のサイトやページに対してGoogleが求めていることとは何でしょうか?
それは「検索結果の質」です。

Googleの顧客とはGoogleの検索サービスを使うすべての人です。
その人たちのニーズとは、検索をした時に「期待通りの結果を示す」ことです。
いつ検索をしても、いつも期待通りの、満足できる検索結果、つまりインターネット上にある情報の中から問題解決につながる情報を示してくれることです。

Googleはユーザーが検索をして、表示した結果の中からどのサイト・ページを選んだのか、そのサイトを訪問してどのように回遊をして離脱したのか、すべての行動を把握しています。
その膨大な行動を分析して、検索したキーワード、検索後の行動からユーザーの満足度を測り、その「検索マッチング」の精度を向上させようとします。
これが「検索結果の質」であり、インターネット上の評価の基準です。
これはGoogleが公表していることであり、WEBサイト・ページはどうあるべきかを示しています。

ところが、このインターネット上の評価を上げ、検索結果の上位に表示されたWEBサイト・ページは選択される可能性が高いわけですが、そこに目をつけビジネスにしようとした企業が出てきました。
それが「SEO対策請負会社」ともいうべき企業です。
彼らはGoogleの評価基準を、実際の検索結果の傾向から読み解き、上位に位置付けられるサイトの特徴を調べあげ、独自にGoogleの評価基準を導き出しました。

これらのことからインターネット上の評価の基準がいくつか明確になりました。

  1. テキストが1,000字以上
  2. 論文形式で書かれている(タイトル、見出し、小見出し、本文、引用などで構成されている文章)
  3. 画像や動画を効果的に使用
  4. 検索キーワードが含まれていて専門的な内容である
  5. 記事が多い(そのWEBサイトのページ数が多い)

SEO会社ではさらに細かな基準を設けていますが、SEO会社の目的は「検索上位に上げること」ですから、Googleが求めていることとは異なります。
検索上位に上がるのは結果であり、Googleやユーザーが求めているのはあくまで「マッチング」です。
ユーザーの困りごとを解決できる情報=上記の5つの基準で書かれた専門的で質の高い情報を数多く発信することこそ本来のSEOであるのです。

[STEP9]思わず読みたくなる魅力的なタイトル

[課題9]で内容とかけ離れたタイトル、いわゆる「釣りタイトル」はNGだと述べました。
では、内容に沿ってストレートなタイトルであれば良いのでしょうか?

[課題9]で述べた通り、私たちは検索結果として示された各ページのタイトルを見て判断し、そのサイトやページを訪問します。
ここで思い出して欲しいのが「人は感情でモノを買い、理屈でそれを正当化する」という言葉です。
私たちは無意識のうちに、目に入ってくる情報のうち感情に響く表現に引かれて選択をしています。

感情に響く魅力的(に見える)タイトルというのはどういうものでしょうか?

  • 数字を入れる
  • 疑問形
  • 逆説的

例)来店客数増加のための必要資材→→→繁盛店に共通する5つの資材とは?

これらは人の知的好奇心に訴えかけるもので、なおかつ困りごとの解決策をとてもシンプルに訴えかけています。
重要なのは「ユーザーの困りごと」をつかみ、その解決策をシンプルに「心に響く」表現で伝えることです。

[STEP10]ユーザーが求めているもの(ネタ)

大谷翔平選手が高校生の時に作成したマンダラチャート

ここまでユーザーの困りごとの解決策をブログにして発信していくことをお伝えしてきましたが、これを行っていく中でよくあるのが「ネタがない」「ネタ切れ」です。

ただしこれは、ブログで情報発信をスタートさせるのは良いのですが、何の計画もなしにいきなり始めることから起こることです。
これまでお伝えしてきた通り、まずはユーザーのことを知り、自社に親和性の高いユーザーとはどういう人・企業なのか、そのペルソナと問題課題・悩み・欲求を明確にしなければなりません。
その上で発信していく情報、つまり「ネタ」を用意していくことになります。

このユーザーニーズに対する一連の作業を「デザインシンキング」で行います。
デザインシンキングとは「顧客ニーズに対する創造力」と言われますが、その手順は簡単です。

  1. 元ネタをあげる
  2. 元ネタに対する情報を考える

実はこれと同じような目的で使用されるフレームワークがあります。
それが「マンダラチャート」です。

現在MLBで二刀流で活躍している大谷翔平選手が高校生の時に作成したものが取り上げられ注目されたこのマンダラチャートですが、元は経営コンサルタントが事業計画立案のために考案したものです。
3×3の9マスで構成されるもので、最初の9マスが元ネタ、それに対する情報が8マス×9ブロックに展開させることで72のネタを考えることができます。

コンテンツマーケティングの基本的な進め方

インターネットを使ったコンテンツマーケティングの進め方をまとめると以下のようになります。

  1. 誰のため、何のための情報かを明確にし、対象となるユーザーに届くように、今あるつながりから拡散させていく
  2. 一つの情報を相手に応じて伝わりやすい方法で伝える

コンテンツとはそれぞれの企業が持つ情報のことですが、誰のため、何のための情報であるのかを考えて「ユーザー目線」で編集し直すことで初めて有効なコンテンツとなり得ます。
企業からの一方的な情報発信ではなく、様々な「つながり」を通して発信し、コミュニケーションを図ること。
今あるつながり=「価値が正しく伝わっている人」からコミュニケーションの輪を広げる(拡散する)ことで、必要としている人や企業に到達します。

最後に、くどいようですが、中小企業が行うべきWEB広報の目的を記しておきます。

  • 目的はユーザーの問題課題、悩み、欲求に対する解決であり、情報の提供
  • 目的はつながりを作る(コミュニケーション)こと、販売や契約はその結果