今回の講師は株式会社LIGUNA 代表の南沢典子さんです。
南沢さんの会社は昨年有限会社あきゅらいずから社名変更され、小金井市に新社屋も建てられたばかり。
「あきゅらいず」ブランドのスキンケア商品をすべて通信販売のみで販売されています。

社名のLIGUNAとは、ラテン語の木を意味する「ligunum」からきており、多様性のある木々が集まって構成している森をイメージして、多様性のある会社を作っていこうということからつけられました。
多様性のある森の生態系のような持続可能性を追求していきたいという思いが込められています。
新社屋は「LIGUNA 0」という名称ですが、唯一の世界共通語である0(ゼロ)には過不足のない「これでいい・これがいい」というものを追求するという意思が込められています。

自分との約束

南沢さんは今回の講演を4ヶ月前に依頼を受け、そこから改めて自分のこれまでの生き方ややってきたこと、そして目指しているところについて見つめ直したと言います。

Who are you ? あなたは誰ですか?
What do you want to do ? あなたは何がしたいのですか?

この問いを自分にかけ続けたということです。

南沢さんは子供の頃、リヤカーの荷台に乗って当時のアイドル歌手の歌を歌いながら、近所の子供たちにリヤカーを引かせて町内を回る、という自己主張の子供だったと言います。
また、小学校の卒業式で「どんな険しい道でも頂上目指して頑張ります」と挨拶したということですが、この言葉が自分自身との約束になり、その後の人生においても必ず思い出され何があっても頑張れたということでした。

自分との約束はこれだけでなく、8歳にはすでに「商売をする」と決め、17歳の時には「わたしが死んだ時、たくさんの人が涙するぐらい人の役に立ちたい」と人前で発表しました。
さらに18歳で大手化粧品会社に就職した際には、新入社員の挨拶の時に「社長になる」と宣言をし、満員電車で通勤していた19歳の時に「みんなが笑顔になれるビルを建てる」と心に思い描きました。

そして3年前の51歳の時には「自分の人生を思いっきり使い切る」と決めて、自分に何ができるのかを常に考えて行動しているということでした。

持続可能な経営スタイルを追求

南沢さんには「完成しないことがいい」という持論があり、それは特に経営においては当初「目的」としていたものが経年変化して「目標」に変わっていくことへの危機感から生まれたと言います。

創業期には世の中のため、人の役に立つ、という目的を持って始めるのですが、事業を始めると思考が業績に傾いて、いつの間にか目的が具体的な目標になってそればかりを追い求めている。
けれども世の中はなにかと変化が多いので社会に必要とされるものも変化していきますから、それを求め続ける、トライし続ける、つまり共感が得られる目的を追い求めることが大事ではないかということです。

2003年に創業した「あきゅらいず」は通販で急成長を遂げましたが、気がついたら目標ばかりを追い続けていることに疑問を感じ、2009年には目標を廃止しました。
2010年には目黒から三鷹へ移転し、そこで学びの施設や食堂をオープンさせて地域社会とのコミュニケーションを図ります。
さらに翌年2011年の東日本大震災を機に、持続可能な経営スタイルを模索することになりました。

会社は社会へむけて、社会は地球へむけてという循環が持続可能な世の中を作っていくと南沢さんは考えています。
これを実現する上で大事なのが「memu」(文化遺伝子;造語)の最適化と最大化だと南沢さんは言います。
会社はそれぞれ文化を持っていてその文化あるいは情報は、植物の種が風や昆虫よって運ばれ広がっていき、辿り着いた先で発芽(最適化)して花が咲き実をつける(最大化)ことで、そこにいる生き物が恩恵を享受するようになります。

つまり、会社がどのような文化を持っているのかが大事になってくるということです。
このことから南沢さんは会社は社会のための実験場だと考えて、これまでも社内で新しい取り組みにトライしてきました。
そして今年コロナ禍もあり「はたらき方」を大きく変えました。
具体的には固定化した部署を廃止し、すべての業務をプロジェクト化しました。

プロジェクト化するということはどのような業務でも「終わり」があるということ、つまり新しい仕事を考えていかないといけないということ、そしてプロジェクトの成果に対して報酬が受け取れるというものです。
コロナの影響でリモートワークが増え、社員さんが何をしているのかがわかりにくくなり、やってもらいたいことも伝えにくい状況になったことで思い切って舵を切ることにしました。

自分自身のコアバリューを知る

この取り組みの一番の狙いは、どこでも働けて、どこでも成果を出せる ”個人事業主” を増やすことにあります。
企業は環境に適応していかなければ生き残れず、そのためには進化し続けることが必要で、だからこそ近年イノベーションが叫ばれています。
しかし日本の企業で思うようにイノベーションは進んでいないのが現状です。

企業で行うイノベーションには2つあり、社内で進めるクローズドイノベーションと社外にも求めるオープンイノベーションがあるということで、イノベーションが進まない多くの企業は結果的に前者での取り組みになってしまっていると南沢さんは言います。

最初にイノベーションに取り組むのは経営者で、トップは外部へ学びに行ったり多くの人と関わりを持ちますが、それを自社に持ち込んでも内部はこれまで通りのやり方、保守的な発想や行動が占めているためうまく進みません。
だから全社がオープンになること、社員一人一人が外へ向かうことでイノベーションは起こる、あるいは外部の個人事業主を集めることでイノベーションを起こすという考えから、今回の組織に変えたということです。

南沢さんは今回の大幅な「はたらき方」を変える取り組みの背景には、ミレニアル世代(1981年以降に生まれインターネットが当たり前の世代)の急速なフリーランス化があると言います。「はたらき方を自分で選ぶ」人がこれからどんどん増えていくことになることから、これからは一人一人が自分のcore(コア)を考え、それに合う仕事や人生を選んでいくことが大事だということです。

経営者も自分自身のコアバリューを追求し、それに合う人を集めていくことが必要だと言います。
南沢さんは「好奇心・創造・人が喜ぶ」ということが自分のコアバリューで、仕事や人生における関わり(Vision map)の軸になっていると言い、そこから導き出されたLIGUNAのVision mapは

「Sustainable Wellness(持続可能な健やかさ)」

であるということです。
これはLIGUNAにおいて持続可能な経営を実現する上でお客様に喜んでもらえるもの、持続可能であり続けるためにどういうものが提供できるのかを考えた時に、これからはSX(Sustainable Experience;持続可能な経験)だという考えから導き出し、これを目指していくということでした。

 

南沢典子講師、貴重な講演をありがとうございました。
また、ご参加いただいた皆様にも改めて感謝申し上げます。