今回は、月刊『理念と経営』を使った勉強会(共に学ぶ会、経営者の会)の目的と効果性を改めて会員の方に知ってもらうために、勉強会を活用し業績向上につなげている会員企業を事例として紹介し、参加者と一緒に体験するという企画です。
今回事例として登壇してもらったのは、昨年 TOKYO PRO Market に上場された「株式会社プラン・ドゥ」の杉山浩一社長です。
杉山さんは2010年から東京経営研究会に参加され、『理念と経営』を使った社内勉強会「共に学ぶ会」を毎月休まず継続、約15年も行ってきました。
生き残るための戦略
株式会社プラン・ドゥさんは不動産業を営み、現在従業員約70名で24期目に入っています。
創業は2003年、当時は外資系ファンドや大手企業との取引で利益が伸びる時代でしたが、2008年の「リーマンショック」を契機に経営方針の転換を迫られました。
危機に直面した杉山さんは「ベンチャーが生き残るにはニッチに絞るしかない」と考え、ビジネスモデルをニッチに絞った「ニッチ×ニッチ」の戦略を採ることにしました。
同時に、当初は力のある個人の集団で「この力で稼ぐ」というスタイルでしたが、このままだと企業の強みができず成長し続けられないと考え、組織運営のためのマネジメントを学ぶことにしました。
ターゲットの絞り込みと顧客価値
「ニッチ×ニッチ」とは、バブル期の物件など「中古の郊外一棟マンション」という領域に特化し、それを年収2000万円以上の「富裕層のエリートサラリーマン」を主な顧客層に設定し、戦略的に販売していくというもの。
当時市場の主流は「節税対策」でしたが、プラン・ドゥさんは「節税にはならない」と伝え、真逆のポジションで差別化を図り、専門性を高めることで競争力を維持し高めていきました。
また、プラン・ドゥさんの事業運営のモデルは、ターゲットである「富裕層のエリートサラリーマン」のニーズを的確につかんだ「循環型ワンストップサービス」です。
「富裕層のエリートサラリーマン」は本業が極めて多忙であることから、不動産投資に興味があっても購入後の運営に手が回らないという不安があります。
そこでプラン・ドゥさんは、仕入れから大規模修繕・リノベーション、リーシング(入居者募集)、販売、ローン手続き、そして長期の管理まで一貫して責任を持つことで、「売って終わり」ではなく「売って始まる」ビジネスを成立させることで「安心して不動産投資を任せられる」という価値を提供しています。
チームでワンゴールを目指すために
この「循環型ワンストップサービス」を実現させるためには、これまでのように各個人が利益を追うのではなく、顧客が求める「任せられる安心な不動産投資」を追求しなければなりません。
そこでプラン・ドゥさんでは個人ではなく組織として、しかも各部署が部分最適に走るのではなくトータルで顧客の幸福を作ることを目標にし、利益計上も部署単位ではなくチーム全体で作るものと位置づけるようにしました。
その結果、現在は売上や利益の個別目標を設ける代わりに、入居率やリクエスト(クレーム)解決率など部署ごとのKPIを重視することにしています。
個人ではなく組織として「顧客の幸福」を追求する「循環型ワンストップサービス」ですが、個人ではなく会社としての強みになっていく一方で、個人の能力差や部署ごとの業務の違いからどうしても「ズレ」が生じます。
誰かが遅れていたり早かったりする状況で、全体最適を目指すためには責任分野を明確化しつつ、重なり合う部分では協力し合える仕組みが重要です。
各工程(仕入れ→工事→リーシング→販売→管理)がリレーのバトン受け渡しのように連続するため、重複(ダブル走り)やギャップ(空白)を防ぐことが課題です。
そこで杉山さんはリレー競技において非常に重要なバトンの受け渡し区間「バトンゾーン」を業務に応用することを考えました。
重要なのは、どこまで各部署が関与するかという「受け渡しの範囲」を明確にし、案件や担当チームの状況に応じて工程の前後や重なりを柔軟に調整し、全体としての成果(リレーでの勝利)を優先するということです。
全員が経営視点を持つ
この「全体の勝利を目指す」という考え方が浸透すれば、個々の「速さ」よりもリレー全体での成果を追求する文化が育ちます。
ただ、「誰がどこまでやるべきか」という曖昧さが残ることから、責任分野の明確化と部署間コミュニケーションの強化がこのバトンゾーンのレベルアップ、ひいては「循環型ワンストップサービス」成功の鍵になります。
そのために杉山さんが取り入れたのが『理念と経営』を使った社内勉強会です。
ワンゴール(全社共通の目的)への理解を深めるには、経営視点を持つことが不可欠で、単なるアルバイト感覚の働き方であってはならないと考えています。
理念(社会的使命や哲学)と経営(人・物・金の運用)を結びつけ、社風と戦略を掛け合わせて落とし込むことが大切です。
プラン・ドゥさんでは「理念と経営の共に学ぶ会(社内勉強会)」を社風と戦略づくりのための装置として活用しており、社員が経営者の言葉や他社事例から学び、自分の責任役割を認識して全体に貢献することを期待しています。
プラン・ドゥさんでは誌面記事や説問票を活用しますが、説問票そのものの解答よりも目的意識を重視しています。説問票は「委員会」が作成し、内容のチェックにあまり介入せず、盛り上がりを優先して使うことにしています。
学びを行動に落とし込むためにはKPIの設定とPDCAの運用、タスクマップの活用が不可欠であり、プラン・ドゥさんでは入居率やリクエスト解決率などのKPIを業務時間内に扱い、全員が記入・提出する仕組みを導入しています。これらの取り組みの提出状況は給与や評価に反映されることも事前に周知しています。
さらに、「13の徳目朝礼」を用いて目標管理を行い、日常業務と連動させながら社員の行動変容を促しています。
まとめ
まとめると、「バトンゾーン」概念に基づく全体最適を重視し、そのために『理念と経営』の学びを通じて社員に経営視点と責任感を醸成すること。
説問票や誌面記事、KPI・PDCA・タスクマップなどのツールを現場に近い形で運用し、提出や行動の実行を評価に結びつけることで、社風と戦略を同時に育てる仕組みを構築しています。
杉山さんはこれらを信じて継続しており、盛り上がりがあれば会社のマネジメントと業績は向上すると確信しているということでした。
杉山社長の講義の後、参加者全員で『理念と経営』の勉強会を体験しました。
プラン・ドゥさんが社内で行っている勉強会は「共に学ぶ会」と言いますが、今回会場で行った異業種の経営者や経営幹部、経営を学びたい人が集まって行う勉強会を「経営者の会」と言います。
基本は10人までくらいの少人数で、各地域ごとで行われており、東京では現在11の支部で毎月開催されています。
プラン・ドゥさんの社内勉強会同様に会場も大いに盛り上がり、笑顔と拍手の絶えない勉強会となりました。
勉強会後の発表では「理念や方針の浸透、価値観やお互いの考え方などを共有する場として最適」だとする意見が出されていました。
プラン・ドゥさんの取り組み方を参考例として、『理念と経営』を使った勉強会を業績向上の手段の一つとして活用してもらえればと思います。
杉山浩一社長、貴重なお話をありがとうございました。
また、ご参加いただいた皆様にも改めて感謝申し上げます。


