7月16日、日創研東京センターにて7月例会が開催されました。

経営研究室 室長の塚本誠さんの司会で進められ、今回担当の経営戦略委員会 副委員長の岡田和郎さんの開会宣言から始まりました。

IMG_1127 IMG_1131 IMG_1135 IMG_1150

栗駒和訓会長の挨拶に続いて委員長の笠原智久さんから今回の講師のご紹介をして頂きました。

IMG_1157今回の講師は石坂産業株式会社で石坂典子社長です。

現在では環境コンプライアンスを遵守し先進的な技術と取組みで全国の産業廃棄物処理工場の模範とされ、毎日たくさんの見学者が訪れる素晴らしい会社になっている石坂産業さんですが、そこまでの道のりは大変厳しいものでした。

石坂典子社長は元々父親が起こした会社を継ぐことは考えていなかったそうですが、父親に言われて事務として入社されました。

また、入社後も会社経営について深く考えて仕事をしていなかったそうですが、入社して10年が過ぎ、結婚・出産を経て自分の会社をもっと誇りの持てる会社にしたいという思いがこみ上げてきました。

IMG_1163産業廃棄物を扱う会社というのはどうしても社会的に低く見られ、また会社自体そこで働く人たちの意識も低かったので、それを変えて「社会になくてはならない会社」になろうと考えられたそうです。

ちょうどそのころにテレビのニュース番組による地元所沢でのダイオキシン問題、周辺の産廃工場による環境汚染、埼玉県産の野菜が汚染されているという「誤報」によって激しいバッシングを受けるという事態が起こりました。

これは完全に誤報で、テレビ局側は番組内でも謝罪をし、風評被害にあった農家に対しては裁判で和解になった、つまり周辺の産廃会社には何の問題もなかったのですが、元々社会的に低く見られていただけにバッシングはかなり激しいものだったということです。

バッシングに打ちのめされる当時の社長である父親の姿を見て、心に火が付き、「社長をやらせて欲しい」とお願いされたそうです。

IMG_1168そしてまず取組まれたのが中心であった焼却炉を止めることでした。

産業廃棄物は焼却処理して「廃棄物を少なくする」のが普通なのですが、その焼却施設が目の敵にされたわけですから、会社を存続させるためにはまずこの焼却炉をなくしてしまわなければなりません。

それまでおこなっていた焼却処理については全国の同業者へお願いし、一方で自社は廃棄物を「再資源化」するためのプラントに作り直され、「脱産廃屋」を図られました。

さらに、会社内部、体質の変革にも取組み、これまでの体質を象徴していた本社ビルを建て直し、挨拶など職場での躾教育を徹底されました。

また、体質改善・教育には仕組みが必要だということで環境認証である「ISO14001」取得を目指し、1年間取得のために取組んだことで新しい仕事の仕組みづくりができました。

IMG_1172その取組みの中では4割もの社員さんが、どうしてもこれまでのやり方や体質から抜け出せずに反発して辞めていきましたが、反面新しい社屋と新しい体質の会社にこれまでとは違う若い人たちが集まってきました。

そしてそれだけにとどまらず、これまで処理施設に対して反対されてきた方や地元の方に安心してもらうために、施設内部を見学できるようにまでし、今では年間3000人もの人が見学に来るようになりました。

さらに、これまで周辺の荒れた里山には不法投棄が絶えず、会社のためにも周辺のゴミ拾いをしていましたが、きちんと手入れをして公園をつくり管理をすることにしました。

それを工場見学に来た方にも公開すると、地元の方から自分達の土地も管理をお願いされるようになったので、里山保全に向けた取組みを始め、それが生物多様性の保護や回復への取組みを評価する「JHEP認証」の最高ランク「AAA」に認定されることになりました。

IMG_1174後半は同じ女性のトップとして、またこの地域への取組みが認められて「おもてなし経営企業選」に選ばれた会社として、東京経営研究会の髙橋明希会員と対談形式で進められました。

IMG_1183髙橋会員からは社員教育、次世代リーダー育成に向けての取組みについて質問がありました。

石坂産業さんでは企業の永続のために「石坂技塾」として古い社員さんから新しい社員さんに技術を伝承させる取組みをされています。

また、個人のレベルアップのために「資格取得制度」を設けて、資格取得のための全面的なサポートもされています。

仕事上の法制についてのセミナーや講習など社員教育が充実しているのですが、そこにはやはり「私たちは無くてなならない仕事をしている」と社員が誇りを持ってほしいという石坂社長の思いから生み出されています。

IMG_1186また、先の将来を見据えた時、石坂産業だけでなく業界全体が変わっていかなければならない、そのためには業界の常識に縛られず柔軟な発想ができる社員を育てなければならないという使命感から行われているとのことでした。

最後に動画で会社を案内して頂きましたが、冒頭に父親であり創業者である先代社長の写真が映し出された時に「見て下さい、この父が1台のダンプで一所懸命働いて今の会社を築きあげました。私はそんな父の背中を見て育ちました」とお話しされたのが印象的でした。

講演の中で「誇れる会社」になるために取組まれ、社員さんにも「自分達の仕事に誇りを持ってほしい」と何度もお話しされていましたが、その原点が家族のためにがむしゃらに働く父親の姿とそれを誇りに思う気持ちにあるということを感じました。

石坂典子社長、今回は本当に素晴らしいお話しをありがとうございました。

IMG_1217 IMG_1225

また、ご参加頂いた会員の皆様にも感謝申し上げます。

【出席数】
会 員   : 58名
オブザーブ: 42名
   合 計:100名