今回の例会は、これまでのように経営トップの方がメインではなく、現場で働く社員さんや現場リーダーの方に光を当てて、仕事におけるこだわりや思いを発表してもらうというこれまでに無い初めての試みの例会でした。

最初に本例会の担当である組織活性化室の室長 寺門聡一郎さんから趣旨を説明して頂きました。

このスタイルの原型は「一般財団法人 人財開発推進機構」というところで行われている「こだわりカンファレンス」という発表大会にあります。

それをベースにして、今回発表いただく3社の社員の方たちと勉強会を行いました。
勉強会の中で出てきた今回の発表のキーワードは「価値観」です。

ピーター・ドラッカーさんはこの価値観について著書の中でこのように語っています。

組織において成果を上げるためには、働く者の価値観が組織の価値観になじむものでなければならない。同じである必要はない。だが、共存しえなければならない。さもなければ、心楽しまず、成果も上がらない。

私は日創研において価値観教育というものを学び、これまで社員さんと会社の価値観を一致させなければならない、と考えていましたが、今回の勉強会を通して、その必要が無いということを強く感じました。

このことは多くの方が悩まれている「理念の浸透」ということに大きく関係しているということも感じました。

今日ご参加の経営者の皆さんは、この価値観を社員さんとどのように共有しながら自社の理念を浸透させていくのか、そしてビジョンに向かって進んでいくのか、そして今日は社員さんも多数ご参加頂いていますので社員の皆さんは、個人の価値観を会社の理念、ビジョン、使命と共存させ、そこから「やりがい」やお客様への貢献について考えるきっかけにしてもらえればと思います。

今回は、ベースとなっている「こだわりカンファレンス」を考えられた方で東京経営研究会の会員でもある早津茂久さんをファシリテーターに迎えて、発表ごとにディスカッション、質疑応答を行い、会場の皆さんと一緒に例会を作り上げていきたいと思います。

人との繋がりを大切に

お客様のコスト削減と快適な通信環境の実現に強いこだわりを持つ株式会社ロード(酒井孝社長)さん。
「ICT(情報通信技術)で企業様の業績アップ!」という使命を掲げ、豊富な専門知識による顧客対応力に自信を持つ会社です。

そのロードさんからは、入社8年目の國本卓さんとまだ入社3年目の風有沙さんがそれぞれのエピソードを元に、気づいた自分の中にある価値観やこだわりと会社に対する思いを語ってくれました。

風さんは入社後に初めて経験した大口の仕事を通して、未熟ゆえの失敗をしながらも諦めずに最後まで仕事をやりきり、見事に大幅なコスト削減という成果を実現してお客様の満足を得ることができたという話をしてくれました。

風さんは石川県の出身で、その中でも人口が700人に満たないという過疎の地域で生まれ育ったこともあり、人とのつながりに強いこだわりを持っていました。
さらに、料理やお菓子作りが趣味で、本格的な料理を作ってはSNSに投稿しているということで、写真を見せてくれましたが見栄えのする、プロが作ったもののようでした。

風さんは自分の強みとして「自分の時間(命)を犠牲にしてもお客様のために、ご要望に対して成し遂げようとする責任感がある」ところだと話してくれましたが、それは風さんの価値観の根本にこの「人との縁をとても大切にし、相手に喜んでもらう」ことがあるからだということがよくわかりました。
そしてそれが現在の仕事のこだわりである「お客様に、社内の方に、通信の分野において信頼して任せて頂けるコンシェルジュとして仕事をする」ことにつながっていました。

仕事を通して自分が持つこだわりや思いと会社の思いやビジョンと重なっていることを知り、自分の成長が会社の成長発展につながっていくのでこれからも貪欲に仕事に取り組んで行きたいと語ってくれました。

國本さんは、「周りとの繋がりを大切にしたい」という現在の思いが、幼少の頃の経験から生じた強い劣等感によるものであることを話してくれました。

お兄さんの影響で小学生から野球をしてきた國本さんですが、そのお兄さんが優秀であったことからよく比較をされてきたことで劣等感を感じるようになったこと。さらに、野球チームにおいて選球眼の良さから3番になっていたことを仲間から非難されたことや、自分の生活態度が原因でレギュラーから外されたことなどから抱いた自己否定の感情。
一方で、國本さんは強いチームにいたことで小学生、中学生の二度も優勝を経験することができ、その時に「仲間と一丸となって勝つことの喜び」を知った。

このことから、國本さんは「周りとの協調」という価値観に重きをおくようになりましたが、過去に感じた劣等感から自信を持てないまま社会人として働き始めました。
入社当初は良かった成績が、個人から法人担当に変わってから下がっていたのですが、今回のこの勉強会の中で内観したことでその自信の持てない自分に気づいたことを話してくれました。

自信を持つためには仕事で困難なことに挑戦し自分を成長させることだと気づき、またそれを会社が望み、後押ししてくれるところであることを理解し、これからは周りとの繋がりを大切にし、お客様や関わる人に貢献できるように努力したいと話してくれました。

会場からは、若い二人が大勢の前で発表することを評価されると共に、自分の内面を見つめ弱さをさらけ出すことに感動したという意見が出されました。
二人の会社と仕事に対する素直でひたむきな姿が多くの共感を呼んでいました。

人を活かすために経営者が一番頑張る

株式会社キャンディルテクト(阿部利成社長)さんは、家具工事やオフィス工事、健在揚重、さらに職人さんの派遣も手掛け、全国に展開されている会社。

今回は幹部社員である服部正裕さんが一社員であり現場リーダーの目線で会社の取り組みとその根底にあるべき価値観について語ってくれました。

キャンディルテクトさんは、昨年グループの再編、統合をして新しく生まれ変わった会社で、以前は株式会社スペックという会社でした。

新しく生まれ変わったことで、経営理念を変えられたそうですが、やはり変わってから日が浅いということからまだまだ浸透しきれていないとのこと。
ただ、これは日が浅いという理由だけでなく、以前の理念であった「人間尊重の経営」というのが会社の取り組みの柱になっていて、会社にその理念が深く根付いているからだということです。

それを説明する上で、社内の取り組みについて教えてもらいました。
一つはグループウェアを使った共有の仕組みで、情報共有だけでなく、全従業員が関わり合い評価しあうことができるもので、特にそのやり取り自体を評価して表彰するというところまで突っ込んで取り組んでいるというのが特徴的です。
また、同様に従業員数が多く、部署が多岐にわたっているという事情から、新しく入った人でもそれぞれの人となりが伝わるように全員のプロフィールデータを一覧にした「選手名鑑」というものも作成しています。
それ以外にも、「13の徳目朝礼」「方針勉強会」「年間表彰」「野球チーム・フットサルチーム」など様々な取り組み、特に関わる人との繋がりを目的とした「人間尊重」という理念の下に作られたこれらの取り組みによって、理念が浸透し、結果として業績も上がったということでした。

服部さんは部門長、現場のリーダーであり、経営者と社員さんをつなぐ中間管理職として、今回のテーマである「価値観の共存」ということについて考え、それを実現するための提言を「経営者の皆さんへのお願い」として5つあげてくれました。

  • 学んでください・・・学ぶことで成長し変化する、経営者が変わることで社員が変わる
  • 実践してください・・経営者が実践できなければ社員はできない、経営者の実践する姿を見せることで実践できる組織は作られる
  • 伝えてください・・・伝えたい大切なことは何度でも伝え続ける、内容だけでなく思いを込めて伝えることで社員とのコミュニケーションは深まる
  • 育ててください・・・人は思うようには育たないものだから諦めずに育て続けること、育て方が次の世代の育成に深く関わるので手を抜かずに育てる
  • 継続してください・・やると決めたことはやり続ける、経営者が続けられないものは社員はできない

最後にこれらを実行し、それぞれの価値観が共存している会社組織の根本になければならないものとして「愛と理想とお金」をあげてくれました。

発表後にファシリテーターの早津さんより「こだわり」について訊かれた服部さんは、「やはり人であり、愛と理想とお金を元にして人と関わることにこだわる」と答えていました。
新しい会社となり、新しい理念の下でこれからは働いていくけれども、その根本には以前の会社から培われてきた「人間尊重」という価値観をこれからも共存させていこうという服部さんの強い意志が表れた発表でした。

関わる人に夢や希望を与えたい

脇田華穂さんはまだ22歳の若いスタッフさんですが、18歳からネイルサロンで働いていて、店長としても1年間働いていました。工藤さんとはその時に一緒に働いていました。

脇田さんがネイリストを目指すきっかけとなったのは、小中学生の頃に見ていたファッション雑誌に掲載されているモデルに施された美しいネイルアートに魅了されたことでした。
それをいつしか自分でも見よう見まねで始め、それを友達から評価されたことで表現することに喜びを覚えてプロの道に入りました。

ただし、憧れだけでできるほど甘くなく、仕事としてやり始めると自分の中にある「自由に表現したい」という理想とお客様の要望に応えるというギャップに悩まされます。
社会人としての訓練を受け、働くことの意味を理解するようになって、お客様の要望やお店の強みがわかるようになっていき、工藤さんが辞めてからは店長として働くまでになりました。

もっと色々な人に会いたい、まったく違う仕事をしてみたいと思うようになって、そのサロンを辞めてしばらくアルバイトとして違う職種で働いていた期間があるそうですが、その時の仕事の質の違いから、脇田さん曰く「ポンコツ」になってしまったそうです。

自分がやりたかったことはこれではないということに気がついて、以前の上司であった工藤さんの会社に入りました。
そこで、緩んでしまった気持ちを工藤さんによって再度引き締められ、そうすることで周りの人間関係にも変化がおこり、互いに頑張る友達や夢や目標を語れるお客様に出会えるようになりました。

脇田さんは、自分が最初に見て憧れたネイルアートとネイリストのように、今度は自分が「夢を与えられる人」になることが目標です。
その実現に向けて、表現力を磨くための学び、人としての魅力を高めるための学びに努力をしているということでした。

ネイルモンスターの代表である工藤こず恵さんは、最初からネイルの仕事をしていたわけではなく、会計事務所に勤めながらスクールに通ってネイリストになったそうです。
岐阜県で3店舗展開しているサロンに入社して、総合責任者を6年間勤めた後に独立、一昨年に渋谷にプライベートネイルサロンをオープンしました。

ネイルの仕事を始めたきっかけは、友人から結婚式でのネイルを頼まれたことでした。
その頃はまだ趣味としてやっていたことでしたが、頼まれてやってあげたところ大変喜ばれたことで心に火がつき、プロのネイリストさんの仕事を見に行くことで憧れを抱いて自分もプロになることを決意しました。

プロとしてサロンへ転職をし、そこで総合責任者まで務めることになったのですが、責任者としての仕事量と重圧に苦しみました。
そんな中で日創研の可能思考研修とコーチング研修を受講することで、新たな価値観を得ることができ、人の接し方や考え方、捉え方が変わったと工藤さんは言います。

このことがきっかけとなり、新たに東京で独立することにし、東京経営研究会にも入会しました。さらに、「13の徳目朝礼大会」のメンバーに選ばれ、結果として初の全国大会優勝を成し遂げました。工藤さんはそのことを振返ります。
独立してからは人から褒められたとしても自信が持てずに素直にそれを受け入れられていなかった自分が、多くの人が関わって支え、そして評価をしてくれたことで「自分でもできる」と素直な気持ちで頑張れた。そして最後まで諦めずにやり続けて最高の結果を手にしたことで「諦めなければ夢は叶う」という自信を持つことができた。
そして何より、経営者である自分が変化し、本気で取り組むことでスタッフに感動を与え、応援してくれるだけでなく触発されて変化し、お客様や関わる人に積極的に役立とうとしてくれるようになりました。

今回この勉強会を通して内観して出てきたのは「笑顔と自信がある姿」というものでした。
関わる人を笑顔にすることが自分の自信につながるということです。このことから、工藤さんの「こだわり」とは、何事においても自分が起点となって関わる人に夢や希望を与えられる人であることでした。
だから、これからも人を笑顔にする魔法が使える怪物(モンスター)になっていくと語ってくれました。

会場からは、ネイルへの愛や会社、スタッフへの愛がとても感じられて理想の上司像を見た、という意見や、工藤さんと脇田さんの「関わる人に何を与えられるか」という強い信念から生じる普段の笑顔や元気、気遣いを感じることができたという意見が上がりました。

最後にはそれぞれの社長さん、あるいは尊敬する先輩経営者の方から花束をプレゼントして、温かい承認をしてもらいました。

今回はこれまでにないスタイルの例会でしたが、事前の早津さんと寺門さんによる勉強会、ファシリテーションによって、発表する方の心の声を最大限引き出して表現してもらい、それを会場の参加者と共有共感するという「場」を創り上げてもらいました。

発表者して頂いた國本卓さんと風有沙さん、服部正裕さん、工藤こず恵さんと脇田華穂さん、そして早津茂久さん、寺門聡一郎さん、さらに、場の空気を和ませつつ進行してくれた野口貴生さんと淺本寧枝さん、ありがとうございました。

ご参加頂いた会員の皆さまと社員の皆様にも感謝申し上げます。

 

次回は、経営研究会の真骨頂ともいうべき「経営計画発表」のプレ発表大会です。
是非仲間の経営者の発表から多くを学びに来てください。