今回は採用研究委員会による例会で、株式会社ジンジブの佐々木満秀社長からこれからの企業の採用・人事戦略についてお話しいただきました。
上場企業の社長が「チャチャマンボ」
登壇されるなり佐々木講師はいきなり「チャチャマンボ」を参加者の目の前で踊り出しました。
これは吉本興業の間寛平さんのギャグで、関西の方ならお馴染みのものですが、このような参加者が多数いる講演会でいきなりギャグをする経営者はいません。
当然、会場の参加者も何が始まったのかと呆気にとられました。
ギャグが終わると佐々木講師は何事もなかったかのように話し始めました。
人事戦略についての話であるはずなのに、なぜ「チャチャマンボ」なのか。
ジンジブさんは昨年3月22日に東京証券取引所グロース市場に上場されました。
上場企業の社長である佐々木講師は、大手企業の経営者が集まる場に呼ばれて登壇した際もこれをやると言います。
誰もが知っている大手の飲料メーカー社長さんの講演後に話さなければならない時でも、いきなり「チャチャマンボ」をやって観衆の度肝抜くそうです。
超有名な飲料メーカー社長さんの講演後に出てくる、上場したばかりでまだ名も知られていない会社の社長の話に興味がある人はほとんどいません。
つまり、同じ土俵に立てていない企業が超有名企業と同じこと、この場合であれば同じようなことを同じように話しても誰も興味を持って聞いてくれないということです。
人材採用においても同じことで、中小企業が有名な大手企業と同じようなことをしても注目して見てくれる人はいない。
大手企業と同じことをやっては絶対にいけないということだけは明らかであり、そこでどれだけの印象を与えるのか、就活生や社員さんにどのように印象を与えるのかということが非常に重要だと佐々木講師は言います。
中小企業でも何かしらの強み、社風や文化、理念や強い思いを持っていますが、相手に深く印象を残すためにはそこに「尖り」が必要だということです。
この「尖り」で相手の心に刺していくのか、これが非常に重要だと考えている佐々木講師は、敢えてこのような場で「チャチャマンボ」を披露したわけです。
それぞれの企業においての「尖り」を考えるきっかけにして欲しいということでした。
トラックドライバーからトップセールスマン
佐々木講師も高卒で40年前に社会人になりました。
高卒の就活というのは就活と言っても、ほぼ学校の先生が決めたところに行くだけ。
先生と面談をして、先生が「この会社に行ってこい」と求人を渡されて行かされる。
半数ぐらいが工場に就職し、残り半数も先生と付き合いがある地元の企業さんに就職する、というのが高卒の就活です。
「やりたい」などという思いはほとんど無く、それだけに大半が就職しても早い段階で退職してしまい、佐々木講師も「入社後すぐに辞めた」と言います。
佐々木講師は経済的に恵まれない家庭であったため大学には行けず、働いて稼ぎたいということからトラックに乗り、23歳まで個人事業のトラックドライバーとして働きました。
トラックのローン以外が自分の売り上げ、収入ですから、ほぼ24時間働いたと佐々木講師は言います。
でも、無理がたたって23歳で肺結核になり、同じように働いていた友達が居眠り運転による事故で亡くなるということも。
それが人生を考えるきっかけになり、長く続けられるように一般の会社に就職することにしました。
でも、高卒で就職した会社を半年で辞め、その後個人でトラックドライバーだったことから一般の会社への就職は苦戦、20社以上の会社で落とされ続けました。
結果的に友達の紹介で求人広告のベンチャー企業に入社できましたが、当時は人を学歴や見た目(当時は眉毛もなくパンチパーマだったそう)で判断するのかと、今となってはわかりますがとても悔しい思いをしたと佐々木講師は言います。
その会社の社長は見た目や学歴よりも実績主義、実力主義であったことから営業成績だけで役職を与え、佐々木講師は26歳で従業員が120名もいる会社の常務取締役まで務めることになりました。
でも、常務になって22時間も働いているのに年収が400万円もないという状況でした。
この会社の社長の経営はデタラメで、粉飾だけでなく上場するからと言って社員に株を買わせる、それもコピーした株券を買わせるなどということをしていました。
人と未来を考える会社
そのような社長でしたが、採用してもらっただけでなく実力で役職を与えてくれるなど、初めて認めてもらったという思いから裏切らることはできないと、佐々木講師は頑張り続けました。
ただ、そのようなデタラメな経営をする会社が続くわけもなく、佐々木講師が30歳の時に倒産してしまいます。
そして、会社が倒産したことを機に佐々木講師は30歳で起業、人と未来を考えるという思いだけを決めてピーアンドエフという名の会社を立ち上げました。
ピーアンドエフを立ち上げて最初に手掛けたのが「フリーペーパー」でした。
今でこそ広告主の広告掲載料で運営されている無料の情報ソースはたくさんありますが、リクルートの「ホットペッパー」が創刊された2000年の2年前、1998年に求人広告のフリーペーパーを始めました。
今から27年前の当時、就職情報誌はありましたが300円ほどで販売されており、アルバイトするのにも費用がかかっていました。
何をするのにもお金が必要な時代に、媒体の発行費用も含めて広告掲載料で賄い、情報を無料で提供するという事業を始めました。
このフリーペーパーでスタートダッシュに成功した佐々木講師は、その5年後には早くも別の市場へ新しい展開を始めました。
それが、2000年代に入り急激に普及し始めた「携帯電話」市場での広告事業でした。
電話は1985年に民営化されて以降、「ポケベル」の普及に始まって急速に個人の携帯化が進み、通信事業者(NTTドコモ、DDIなど)の競争によって携帯電話販売の代理店網が拡大しました。
販売代理店は顧客獲得のためにそれぞれが費用をかけて広告、主に新聞折込による宣伝告知をしていました。
フリーペーパー時代にそのことをいち早く察知した佐々木講師は、「携帯電話専門会社」として販売代理店への営業に集中しました。
さらに、フリーペーパーの経験を活かして各販売代理店の取りまとめることでコストダウンを図った格安の「連合広告」を発売、ピーアンドエフは急成長を遂げます。
その当時すでに日創研の研修を受講していた佐々木講師は、日創研で教わる「強い会社」を目指した経営を行い、自己資本比率90%で無借金、企業体力は400という盤石な会社を作り上げました。
2010年代には広告事業を主軸にして、ウェブマーケティング、デザイン会社、さらにアパレルや不動産などいくつもの事業を手掛けるホールディング会社へと成長します。
その中に現在の会社の基となる人材紹介会社(社名はジンジブ)もありました。
未来に向けた社会貢献
では、なぜ絶好調で儲かっている会社から、「絶対に無理」と言われた事業に全てを注ぎ込むことにしたのか。
日創研で学んでいた佐々木講師は前職の苦い経験もあり、とにかく強い会社、企業規模に関係なく日本一強い会社を目指して経営をしてきました。
携帯電話業界の波に乗って成長し儲かってはいましたが、営業メインの言わば属人的なビジネスモデルであったため、営業マンのスキルや顧客の大きさなど人に依存した課題はいくつかありました。
ただ、それ以上に大きな課題だったのが、佐々木講師の中で当時の仕事に「やりがい」が感じられなかったことでした。
日創研で学んだ中でもナンバーワンの実績、実力を作り上げ、携帯電話普及させるために大手通信事業者という立派な会社を支援する仕事をしていながらも「やりがい」が感じられず、逆に常に不安を抱えながら経営をしていたと佐々木講師は振り返ります。
そして、そんな中で佐々木講師はパニック障害を引き起こし、それが元でうつ病を発してしまいました。
その時経営者人生とはすごくしんどいことだと考え、経営をやめるかどうかを真剣に悩んだと佐々木講師は言います。
散々悩み考えた末に出てきた結論は「社会貢献で振り切る」というものでした。
さらに、その社会貢献が具体的な形となったのが、当時の会社の新卒採用における「あるやり取り」でした。
それは、ピーアンドエフの頃から新卒採用をしてきた中で、自分自身のこともあり高卒採用も面白いと考えた佐々木講師は当時のジンジブの社長に高卒採用を提案した時でした。
佐々木講師の提案に対してジンジブの社長は「できない」と即答しました。
当時ピーアンドエフには大卒のエントリーがち2〜3000人もあるほど人気がありましたから、佐々木講師はジンジブの社長が言う「できない」という理由がわかりませんでした。
その時の「高校生は先生紹介しか無理なんです」という答えが、社会貢献として現在のジンジブを始めたきっかけになったと佐々木講師は言います。
「学校の先生に足運んでなんとかお願いしたら何名か紹介してくれるかもわかりませんけど」と言われた時佐々木講師は「27年前に俺は同じ経験してるな」と思い、あの時から変わっていないということに驚きました。
憲法は職業選択の自由を謳いながらも、未成年に対するセーフティネット的な役割も果たすべく学校や国そして企業の代表としての経団連が決めたルールだと言います。
しかし、30年前から変わらないという実態を知った佐々木講師の中で「人と未来を考える」という根幹の思想が心に火を着け、あえて儲かる会社を辞めて「高校生の就活支援に特化した会社」に集中することを決意しました。
未来の見えない高卒採用の実態
高卒採用についてここで改めてその問題点を教えてもらいました。
3者協定とは、行政(厚生労働省、文部科学省)、学校組織(全国高等学校長協会)、主要経済団体(経団連、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会)の3者が高校生の就職活動のルールを決めて、それを守らせているというものです。
具体的には、求職者(高校生)側と雇用者(企業)側で以下のような取り決めです。
高校生:一人一社制(応募できるのが1社のみ、ほぼ学校の先生の推薦)
企業の情報は求人票のみ(待遇、休日、勤務時間など基本情報のみ)
職場見学も1〜2社程度
短すぎる就活期間(7月開始、9月応募)
企 業:先生と仲良くならなければ採用できない(紹介してもらえない)
先生個人の偏見や思い込みが影響(ベンチャーはブラックなど)
生徒を選べない(紹介された人しか採用できない)
働く側も企業側も大事なのは「理念」や「会社の思い」、さらに社風や働き方、そして「やりがい」であるのに、それらが双方にまったく共有されない。
先述の通り、3社協定の目的は「未成年に対するセーフティネット的な役割も果たす」こととされていますが、言い換えれば「右も左もわからない未成年者をブラック企業、劣悪な環境から守る」ために、目の行き届いた企業、職場にのみ送り込む形になっています。
方や大卒の場合は、多い人で50社程度、少ない人でも10社は企業訪問して自分に合う仕事や職場を探します。
高校生は卒業まで普通に毎日授業があり、大学生ほど自由に歩き回れる時間はありませんから、そもそも多くの会社を回ることはできませんし、期間が2ヶ月ほどに決められているので自ずと紹介された1〜2社しか見学に行くことはできません。
企業側も形式的な面接しかできない上に、入社を断った企業は次の年からは学校が紹介してくれるなくなるので、紹介されて面接した高校生にはほぼ必ず内定出さないといけないことになっています。
このような条件で高校生と企業双方でミスマッチなく決まるというのは奇跡でしかありません。
既成ルールに縛られた既成概念を壊す
佐々木講師はこのルールに縛られ、誰もやっていない高卒の就活支援をやる以上は、大卒と同じ就活環境にしたいと考え、大卒と同じ大手の就活情報ソースで高卒のための企業情報発信を始めました。
さらに上場企業の就活イベントと同じように、大きな会場に企業を集めた高卒向けの就活イベントも。
10年前から始めて今では高卒の求人も増え、高卒の求人倍率も高くなってきました。
ただ、このルールがある以上は元のジンジブの社長のように高卒採用は「できない」という考えに縛られてしまいます。
そこで佐々木講師は高卒採用という言わば「社会問題」に取り組むことを決意し、自分が代表を務めるジンジブに資本を集中させること決断しました。
2019年中に会社をジンジブ1社に絞り、2020年1月1日より高卒の就活支援に特化した新生ジンジブとしてスタートしました。
辛かったのはピーアンドエフの時代からついてきていただいてる社員さんに辞めてもらわないといけないことでした。
ただ、会社を売るのではなく、社員さんに当時の売り上げ、つまり顧客を持って他社へ転職してもらうことにしました。
当時の売り上げが顧客によって2億〜7億円、上場している企業もたくさんあり、つまり給料が600万円で7億円の売り上げを持ってきてくれるという形になり、良い条件で転職できるようにしました。
2019年中に会社をジンジブ1社に絞り、2020年1月1日より高卒の就活支援に特化した新生ジンジブとしてスタートしました。
日付を見ればわかりますが、ジンジブが新しくスタートした直後新型コロナウイルスによる、いわゆる「コロナ禍」に見舞われてしまいました。
でも、決断した佐々木講師に迷いはなく、既成ルールの中でやっていく以上は知名度を上げて学校などの市場関係者に安心感を高めるために赤字覚悟で広告費に資金を投入しました。
佐々木講師の強気の姿勢が功を奏し、知名度が上がると同時に学校や企業への働きかけも進み、売り上げ3億円からスタートして1年目に6億円、2年目10億円、3年目には21億円となり、昨年上場を果たすことができました。
この上場も目的は知名度、高卒就活支援という今までにない事業のブランディングのためであると同時に、3社協定の一角である経団連に加盟して、内部からこのルールを変えていこうと考えたからです。
これからの日本社会は不安がよぎる時代であるからこそ、とにかく高校生をはじめとした若い子たちがこれからの日本も大丈夫だと思う時代を作る、夢を、希望を与えることがミッション、そしてビジョン、パーパスになっていると佐々木講師は言います。
強固な組織を作るための採用戦略
近年は転職が当たり前のようになり、10代から20代の若い方にとって転職が普通になっています。
これは良い悪いではなく、働く側の就職に対する意識として当たり前になっているということです。
近年は多くの人が入社の段階で、3年で次に行くことを決めているわけですから、採用・人事において実は「定着」が最も重要だと佐々木講師は言います。
採用も難しいと叫ばれていますが、佐々木講師は「定着」をしっかり取り組まないと結局会社はザル状態、入れても辞めていくことになり、コストがすべて無駄になると言います。
その上で「入社動機ランキング」を見ると、冒頭で教えてもらった「尖り」をこの中から決めていくのが良いということがわかります。
会社の評判やブランドなど大手に勝ちにくいところはたくさんありますが、自分の会社で何を磨くのか、尖らせるのか、そこは絶対に負けないというところを作ると辞めにくくなる。
なぜなら、求職者は同じ仕事であってもそれぞれの会社の尖った部分を選ぶからです。
定着させるためにも「尖り」を作ることは非常に重要なポイントだと佐々木講師は言います。
次に重要なのが組織の内側です。
日創研で教えている可能思考教育(価値観教育)を通じて、理念、パーパス、文化、社風、ミッション、ビジョン、バリュー、これらを浸透させることがとても重要で、これらを土台とした組織にどのような体制を組んでいくか。
一般的な4つの階層(メンバー、ロワーマネジメント、ミドルマネジメント、トップマネジメント)で体制を組む場合には理想の組織体制、いわば「黄金比」があると佐々木講師は言います。
これは佐々木講師が多くの会社を経営し、さまざまな社員の悩みや問題、定着についても経験した上で見えてきたもので、ある程度の規模の会社で考えた場合は、こうすれば間違いないという割合です。
それは、中途採用と新卒採用の階層ごとの比率で、一般メンバーの場合は8割を新卒にした方が良いというものです。
一般メンバーの場合8割を新卒にするという理由、それは新卒と中途では理念や価値観などの浸透が圧倒的に違うからだということです。
新卒はまっさらの状態で入ってくることから、価値観どころか職業観すらまだわかっていない。
だからこそ土台となる理念やパーパスが価値観教育を通して浸透しやすいということです。
ただ、中途がいけないわけではないので、中途が2割ぐらいで構成されるのが良いということでした。
そうしてしっかりと理念やパーパスが浸透した新卒が、現場の主任や係長、課長、マネージャー、店長といったロワーマネジメントでも固まってくるとベストです。
新卒といえども辞めていく人もいるのでロワーマネジメントで新卒7割ぐらい、中途は3割、その上の部長や次長、支店長といった幹部クラスであるミドルマネージメントで5割ぐらいが新卒採用の人であればベストです。
なぜ、マネジメント層でも新卒採用の人が5割以上いるべきなのか。
それは、組織の土台となる「理念の浸透」は一番重要ですが、それを社長がやっているだけではダメだと佐々木講師は言います。
社長ももちろん行いますが、マネジメントクラスが新卒採用の理念がしっかりと浸透した人で固まっていれば、現場の部長や役員が社長の代わりにやってくれるからです。
会社の価値観をしっかり理解した10年選手、20年選手がマネジメントクラスに5割ぐらいいると、中途がいくら来ても理念が浸透した社風、文化になっているからです。
50名から100名ぐらいの企業になると役員などの経営層、トップマネージメントがありますが、この階層だけは新卒は関係ないと佐々木講師は言います。
経営層は中途、新卒関係なく、経営のプロが大事だということです。
これが佐々木講師がこれまで経営してきた中で見つけた「組織体制の黄金比」です。
経営者が元気な会社が伸びる
佐々木講師はここまで新卒にこだわり、勧めるにはさらに理由があります。
それは、新卒が入ると「社長や幹部が驚くほど元気になる」というものです。
色々要因はありますが、結局会社が伸びるか伸びないかは社長の元気さ、社長のポジティブさだと佐々木講師は言います。
社長に元気がなければ絶対落ち込み、いくら理念があっても社長が暗い、元気がないとその会社は絶対伸びない。
組織は全部上から流れてしまうものなので、上が元気であれば下も元気になる。
若い真っさらな新卒が入ると、可愛いくて「こいつらのためやったらなんでもしてやろう」と思えると佐々木講師は言います。
また、会社は良い時もあれば悪い時も絶対出てきますが、苦しい時に残ってくれるのは新卒だと言います。
中途は良い時に入ってきて、苦しくなると給料2倍にしないといけないだけでなく、中途は辞めていく。
新卒は苦しい時でも残ってくれると佐々木講師は言います。
新しいジンジブをスタートしていきなりコロナに突入し、いきなり4億円の赤字という事態になりました。
そんな状況下でボーナスは出せないし、幹部は給料10パーセントカット、社長は40パーセントカット、という苦しい時期を迎えました。
お金がドンドン無くなり、毎日貯金通帳から200万から300万円も減っていく、うつ状態になるぐらい減る。
そんな苦しい時でも残って一緒に頑張ってくれるのは新卒で、苦しいことだらけだったはずなのに、辞めないでいてくれたこと、本当に助かったと佐々木講師は言います。
社員の気持ちに寄り添った経営
ただ、それでも高卒4割、大卒3割と言われますが、必ず辞めていくしこれからはもうそれでは収まらないと言います。
だからこそ、離職に対して手を打つべきだと佐々木講師は強く言います。
先述の通り、離職が良い悪いということでは既になく、時代がそうだということです。
労働環境・条件、給与水準、職場の人間関係、上司と合わない、働き方、退職理由も色々ありますが、これも自社の課題はどこなのか、そこに対して手を打っていく、改善していくことが重要です。
離職に対してやるべきことも教えてもらいました。
一つ目は「キャリアパスの明確化と成長実感」です。
入社後から3年後にはこうなってほしい、5年後はこうなってほしい、10年後にはこうなってほしい、というのを明確に持たせること。
それを実感させるために色々な仕事を経験させたり、スキルアップのために日創研で学ぶ機会を提供すること、つまり目標を持たせてそれに近づいている、成長していることを本人が実感できることが重要です。
二つ目は「エンゲージメントを高める組織文化」。
これは経営層と直接的なコミュニケーションを通して社員の心理的安全性を確保し、やりがいある仕事を与えることでエンゲージメントは高まります。
今の時代、特に若いは人個人的な欲望が希薄になっているので、会社の社会的意義を明らかにして社員満足を高めていかないといけません。
会社は社会にどれだけ貢献できているのか、社会にとって必要な存在なのか、パーパスや社会的意義が重要です。
三つ目は「働きやすさの向上」ですが、ここで絶対考えておくべきは働く人も働き方も多種多様だということです。
女性、高齢者、外国人を含めて、例えば主婦がいかに働きやすい環境にすると人が集まるということ。
報酬の透明性や働く人に寄り添った福利厚生を充実させるなど、働きやすい環境をつくることです。
四つ目は「データ活用で退職リスクを予測」すること。
感覚で社員の状態を図るのではなく、定量的に状態を確認することで社員のモチベーションの見える化、離職に対する信号の見える化をすることです。
現在はAIを活用して、離職の予想、黄信号の状態を見つけることもできます。
退職届が出た時点では辞めると決めているので、止めるは難しい。
やめようかなって考えてる段階で、その信号をキャッチできるかだということです。
佐々木満秀講師、貴重なお話ありがとうございました。
ご参加いただいた皆様にも改めて感謝申し上げます。