12月例会は大泉会長の最後の例会ということで、大泉会長たっての願いで経営研究会の本部会長である田舞徳太郎さんに登壇いただき、経営研究会のビジョンについてお聞きするというものでした。
田舞本部会長が単会の例会に登壇すること自体異例なことですが、講演していただくのではなく大泉会長、松井事務局長からのインタビュー形式で意見を聞き出すというスタイルも恐らく初めての試みで注目されました。

経営研究会設立の理由

最初に大泉会長から今回の主旨が話されました。

経営研究会には「共に学び 共に栄える」という理念があり、会員はこの理念の下に集い学んでいます。
ただ、コロナ禍に見舞われたこの2年間は行動変化を余儀無くされたこともあり、会場に集まり直接的なコミュニケーションが困難だったことから、会員として共に学んではいても、どこか個々の学びを経営にそれぞれが活かす、ということになってしまっていたように感じます。
学びを各会員企業の経営に活かすことに何ら問題はありませんが、今後はこれまでとは異なるコミュニケーションが求められる中、本部会長の田舞さんから会員が心を一つにして行動できるビジョンを語って頂ければと考えました。

まずは経営研究会の設立のきっかけと当時のビジョンについてお聞きしました。

経営研究会は日創研で可能思考研修をはじめとする研修を学んだ方、特に地方から大阪、東京に受講しに来る方の「研修受講後の学びの継続(フォロー)」のための場が必要だということから設立されました。
特に田舞本部会長が考えていたのは、日創研のような教育事業者は「学びに来てもらう」だけではいけないということでした。

寿司店の経営からスタートした田舞本部会長は中小企業が日々大変な思いをして経営していることを知っているため、教育事業者ばかり儲かるようなの仕事に対して矛盾を感じていました。日創研は「中小企業の100%黒字化」という経営ビジョンを掲げていましから、研修が修了したらそれで終わりではなく、受講した企業が結果が出るまでフォローしないと「コミット」したことにならない。

当時はオンライン環境などありませんから、拠点のある大阪、東京、福岡に近い企業はまだ良いのですが、遠方の企業は度々日創研を利用することはできません。
このことから、日創研の研修を受講した企業が結果が出るまで学びを継続できるフォローの場を考え、研修を受講した企業向けに経営研究会を設立しました。

会員なら誰でもご存知のことですが、田舞本部会長は父親の事業失敗によって借金の返済のために15歳で働きに出されたという経験を持っています。
日創研が掲げる「中小企業の活性化」はこの時の父親の姿を見て、助けたかったのに助けられなかったという強烈な思いから始まっています。

それだけに今でも会員企業が経営相談に来ると、その時の父親の姿が蘇り、自責の念から「中小企業の活性化」への思いが強くなると田舞本部会長は言います。
このことからも、教育事業者は顧客である中小企業に払ってもらう金額以上を感謝を持って返していかなければならないということでした。

一人一人が役割・任務に徹する

ここで大泉会長から経営研究会の強みについて質問がありました。

田舞本部会長の答えは、東京の高橋勇さんをはじめとする本部の副会長の経営者としての価値だと言います。
非常に優秀な経営者が集まっていることで、各経営研究会が質の高い運営ができているということです。
ただし、まだ経営研究会は田舞本部会長が考える理想の組織にはなっておらず、曰く「商店型組織」だということでした。

そこで、田舞本部会長が考える理想の組織とはどのようなものかを尋ねたところ、岡山経営研究会が一つの事例としてあがりました。
その理由は「喧々諤々、本音でやりあう」「勉強する」「決まったら即実行する」というところに加えて、業績の良い企業が揃っていることだということです。
また、鹿児島経営研究会は「きちっとルール化しながらまとまっている」ところが評価できるということです。

日創研同様に経営研究会のビジョンも「(会員企業の)100%黒字化」ですから、毎年の業績調査でその達成度が高い単会が評価も高く、理想の組織の判断基準となります。
単会の会長は最長2年で交代しますが、田舞本部会長が言うには年度や会長によって会員企業の業績が良くなったり悪くなったりする単会は組織としてまとまっていないということです。
それだけに組織トップのリーダーシップや志によって業績は変わるということがよくわかると言います。
これは本部会長である田舞さん自身も同じであることを理解しているので、だからこそ本部の運営は優秀な経営者が揃う副会長以下に任せていると言います。
ただ、この組織の良し悪しを左右するのはトップだけではないということも田舞本部会長は過去のJC(青年会議所)での経験も踏まえて言います。

JCや経営研究会は様々な企業経営者の集まりであり、経営研究会は日創研の研修を一緒に学んだ仲間ですが、田舞本部会長はもちろん、仕事上の取引関係にある人も少なくありません。
経営研究会の外ではお客様だとしても、理事会などでは一切の忖度なしに議論を戦わせる必要があり、そうでなければそれぞれのプライベートの利害が優先され、組織として共通の目的を果たすことができなくなります。
田舞本部会長も会議の場では机を叩いての激しい議論をしながも、会議が終わったらお客様として頭を下げるという「切り替え」を大事にしていると言います。
これは経営研究会だけでなくそれぞれの職場においても、「役割、任務に徹する」ことがメリハリのついた活き活きとした組織運営を実現させるということでした。

未来の日本のために利益を残せ

次に、大泉会長から「100%黒字化」の先にあるものが何であるのかを問いました。

その答えは「次世代の子どもたちに残すため」でした。
田舞本部会長が研修や講演で伝えていることは先を見据えてのことですが、ほとんどの人はあまり知らない、知ろうとしていないことが多いため、本質がなかなか理解されないと言います。

田舞本部会長は日本国内だけでなく海外からも情報を集めているため、諸外国の状況と施策、経済政策を見ています。
そこからは、将来起こりうる問題に対して如何に日本の取り組みが遅れていること、引いては現場の経営者の意識が先に向けられていないかがわかると言います。
このまま進んでいくと、日本の経済が経ち行かなくなるどころかアメリカや中国の一部になってしまうかもしれない、という過激な考えも無視できないのが日本の現在の状態です。
だからこそ、「100%黒字化」「経常利益率10%」と言っているのは現在の自分達のためではなく、未来の日本を支えるために今を生きる子どもたちへの投資であり、日本という国を残していくためだということでした。

ここで松井事務局長の方から「経常利益率10%」について、なぜ10%なのかを問われた田舞本部会長は一言「松下幸之助さんが言っていたから」と答えました。
松下幸之助翁のことを尊敬し、その考えを継承し伝えられてきたからこその答えですが、松下幸之助翁の「思い描いた通りになる」という言葉から、人間の深層心理にまで考えを巡らせた田舞本部会長の意見がありました。
企業の望ましい姿を思い描いた時、会社が儲かっていて社員さんや関わる人が幸せであることだと考えた田舞本部会長は、経常利益率が10%であれば余裕でボーナスも支給できることから、業種業界を問わず「経常利益率10%」を中小企業の「思い描きやすい目標」として掲げました。

中小企業の多くは「それほど儲からない」あるいは「業種業界特有の事情がある」といった固定観念や先入観を持っているため、最初から高い目標やそのための戦略を考えようとしない。
これは17世紀の哲学者フランシス・ベーコンが説いた「洞窟のイドラ(個人経験からくる思い込み)」であると田舞本部会長は言います。
だからこそ、イドラを取り除かなければ田舞本部会長が思い描く望ましい企業にならないと考え、日創研の研修や経営研究会を通じて「経常利益率10%」を掲げ、その実現に向けた取り組み、つまり企業が儲かるための学びをしているということでした。
そこには二宮尊徳の「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」という言葉通り、右手で健全な価値観の下に理念を学びつつ、同時に左手で価値を高めて勝つという戦略が両立したものでなければいけないということでした。

話の最後に田舞本部会長がスタンフォード大学で研究していたスターバックスとアップルの成功物語を聴きながら、アップル創業者のスティーブ・ジョブズの言葉「Stay hungry Stay foolish」を伝えました。
そこには「夢は思い描けば誰でも叶えられるということ、そのためには現状に満足せず進み続け、常識に囚われず信じた道を進め」という田舞本部会長の中小企業に向けた思いが込められていました。

田舞徳太郎本部会長、研修でお忙しい中、会場に駆けつけていただき本当にありがとうございました。

ご参加いただいた会員の皆様にも改めて感謝申し上げます。