塚本誠さん狩野刀根男さん髙橋明希さん2015年の第1回の例会が渋谷TKPガーデンシティで開催されました。

2015115日、当日はあいにくの雨もようでしたが、97名の方々にご参加いただきました。

塚本誠さんの司会、例会企画者の進藤耕一さんによる開会宣言、狩野刀根男会長による会長挨拶でスタート。

そして、今回のコーディネート役、高橋亜希さんによる高野登先生の紹介があり、講師がご登壇されました。

今回はあのリッツカールトン大阪・東京を立ち上げた前リッツカールトン日本支社長、高野登講師による、「リッツカールトン至高のホスピタリティを学ぶ」というものです。

「至高を目指す」

高野登さん今回のテーマを読み、その極意は「至高を目指す」ということにつきると思います。

「至高を目指す」とは自分の立ち位置をどうとらえるか、日々、誰もがやっている仕事を、誰もがやらないレベルでやる、ということです。そのような視点を自分の意志で持ち行動するということです。

本日の講演にあたり、太いマーカーを依頼しましたところ、きちんと用意されていました。主催者によっては用意されていないところもあり、今回は個人で動いていただいたのだと思います。これは意志と行動がある、ということだと思います。

時々IT企業さん向けに講演します。そのときはITの法則で説明します。同じインプットをすると同じアウトプットが得られる、違うアウトプットが欲しければ違うインプットが必要、という法則です。

つまり、トップやリーダーが部下に行動を変えてもらいたければ、いままでと違うインプットが必要ということです。これまでと違うインプットで違う価値観や行動が生まれる、プログラミングを忘れない、ということです。

「奇跡はつくるもの」

あるお客様がプールでコンタクトレンズを落としてしまったそうです。

もちろん「探すのは無理だろうから気にしないで」ということだったそうですが、スタッフがそれを見つけました。3日間、深夜から早朝の時間を利用して交代で見つけたのです。指示は出していません。報告もあとで聞きました、当たり前のことですからね。

多分、他のホテルであれば探さないでしょうね。奇跡は起きるものではありません。奇跡は起こすものです。この話をした、ある講演の終了後、ある人が駆け寄ってきて「そのお客は実は僕です。そのコンタクトは、今、使わず宝物として飾ってあります。友人が来るたびに自慢するんです。リッツはすごいよって」。

小さなことですが、それまでになかったもの、それは奇跡といえると思います。

ルーズベルト大統領が「ボクシングのリングで戦う2人がえらい。外でとやかく言う人は相手にしない。リングに上がらないと勝者にも敗者にもなれない」と言っています。

リッツカールトン大阪を立ち上げた時もそうでした。宿泊料金、ヒルトンが11千円でリッツが27千円です。1年以上、笑われました。新聞や雑誌でも無謀だ、今月も稼働率最下位だと。現場からも突き上げが来ました。じっと耐えて2年目の春から好転しました。きっかけは婚礼への提案です。リッツはホテルの中で美しく見えるポイントの案内を優先します。「ここで撮るとこうなりますよ」決定者である女性に場面つくりの提案をするのです。婚礼挙式した方は予算でなく、リッツに泊まってくれました。

そこから火がついて業績がよくなりました。メディアは手のひらを返したように賞賛してくれました。メディアとは戦いませんでした。悪く書く人とも食事をして、記者の方も社員ですから「なんでこう書く必要があったのか」を聞き、「なんでこんなことを書くのか」とは言いませんでした。

リッツカールトン東京がオープンするとき、週間ダイヤモンドが36ページの特集を組んでくれました。その手配を取ってくれた人は、昔、リッツ大阪を悪く書いて「いつかお詫びをしないと」と思ってくれていたそうです。

「おもてなし」

IMG_3951ホスピタリティ、日本語で「おもてなし」、流行語にもなりましたが、広辞苑で引いた人はいますか?

昨年の広辞苑には掲載されていませんでした。OxfordにはHospitalityとありますが。日本では言葉でなく、概念なのでしょう。

語源はおそらく聖徳太子の17条憲法の第1条、「以和為貴、わを・もって・とうとしと・なす」の「もって・なし」ではないでしょうか。

リッツでは「人との出会いに感謝してイキイキ・ワクワク、お客様に心のこもったサービスをする」のですが、お客様に出会う機会の少ないメイドさんのような役割もあります。あるメイドさんはあるお客様の宿泊後、2回とも角部屋の椅子が外に向いていることに気がつきました。実はそのお客様は毎回角部屋に泊まり、外出から戻り、椅子を窓に向け、ブランデーを飲み、回想することを楽しみにしていました。メイドさんはルームサービスに確認をして、次回の宿泊日を確認して、そのお客様の外出の間に椅子を外に向け、コースターを置き、メモを残しました。そのお客様から「また、やられちゃったよ、リッツまだまだ進化してるね」と電話がありました。

こういったことが出来るかどうかは自分の心のアンテナを「何ができるかな?」と立てておく必要があります。心も栄養で伸びます。感性を豊かにする、人や本を意識的に学ぶことが栄養になります。

組織でアンテナを高めるのは簡単なことです。トップ自ら、リーダー自らが意識的に学ぶことです。部下に求め、俺はそこそこ、では結果がでない、ということです。

「やらない事を決める」

IMG_39652009年、長野市長選挙に出ました。長野の人に頼まれて3週間前の立候補です。

ホテルの仕事が大好きで未練はありましたが、後悔は残らないと思い、決意したのです。3週間しかありませんので、無謀だとかいろいろといわれましたが、3週間はゼロではありません。3週間ですから、まずやらないことを決めました。ライバルと同じ土俵にあがらない、オリエンテーション以外はやらない、と決めました。

リッツでは「オリエンテーション」「研修」「教育」を211の割合で行います。リッツ開業のとき、従業員は経験者の寄せ集めです。今回は時間がないので、オリエンテーションのみ、「どんな長野市にしたいのか」、夢とビジョンを語り続けることでした。

1週間目には記者・TVカメラも来ません。2週間目から新聞・テレビに紹介されるようになり、3週間目には選挙カーの後ろを女子高生がついてきてくれるようになりました。

これは嬉しかった。選挙権はありませんが地域の将来を考えていてくれるのは若者なんですね。

結果は負けてしまいました。現職58,379票、私57,728票の651票差です。負けはしましたが惜しいところまで、3週間でも結構出来るのだな、と思いました。

「コトバ」

心のアンテナを高め「至高に至る思考回路」をつくるためにはコトバが重要です。

私もいろいろな人に、いろいろなコトバをいただき、影響を受けました。

スティーブンコビー博士、ピーターFドラッカー博士のお二人の影響は大きいです。

リッツでは講師をお招きしてお話を伺う機会を設けています。宇宙飛行士、オリンピック金メダルコーチ、マイクタイソンのコーチ、全身80%の大やけどを2回負った人、など。

オリンピック・コーチからは金メダルを取る人は「俺はメダルを取る」と練習しているなど意識のレベルで変わると教わりました。タイソンのコーチは裏切られても3度留置所を訪れ、来れば家に住まわせ、3ヶ月礼儀を教え、3ヶ月歴代チャンプのビデオを見せ、そして初めて練習をさせる、信頼・基本・イメージの大切さを教わりました。

「あの」が付きますか?

さて、私は長野の戸隠の出身です。幼少時代は井戸やランプを使い、水道・電気をつかうようになったのは後のことで、それは、それは嬉しかったことを覚えています。

IMG_3970そのころは、ご飯がなくても腹いっぱい食べられればありがたい、作れば売れた時代です。

そのころは胃袋で食べる時代ですが、味をもとめて口で食べる時代になり、三ツ星だとか頭で食べる時代になり、今は意味を求め心で食べる時代のようです。つまり、みんなと同じことをやっていても売れない時代です。

あなたから買う必要がないのです。それでは人はどんな時にあなたから買うのでしょうか?

それは「あの」がつく、人・チーム・会社になったときです。

「あの」が付く人には「センターピン」が見えています。ボーリングのセンターピン、あれです。お客さんの外せないピンが見えているか、そのための感性を育てているか、です。それには相手への信頼、尊敬、好意がないと活用されません。

9.11の事件を皆さんご存知と思います。その翌日、9/12にリッツカールトンのVIPイベントが国際貿易センタービルの最上階で予定されていました。1日ずれていたら大変なことになっていたのです。幹部たちは残された自分たちの使命について話し合いました。さて、その9.11あと、しばらく犠牲者・遺族のインタビューが不思議なことにTVに出てこないのです。遺族にマイク・カメラを向けない、取り決めが4大ネットワークのトップ司会の間で取り決めがされていたのです。これがアメリカ国民のセンターピンです。日本では異なると思いますが、そっとしておこう、そういう配慮だと思います。

「役に立つ、誰かのために」

IMG_3978こんな実験があります、厚いカーテンで仕切られた向こうに3人いて「ハサミを使いたい」と知らされます。あなたがハサミを用意すると、カーテンが開きます。一人は右手が不自由な人です、右利きのハサミが使えません。もう一人は目が見えない人で、金属製の普通のハサミが危なくて使えません。そして最後の一人は2歳の女の子でした。普通のハサミを用意すると、誰の役にも立たないのです。

この問題点は「コミュニケーションがない」「自分の価値観で判断している」ということです。よくあるフレーズの「みんなが」という「みんな」は「私」ということです。

ある車椅子が必要な方がいます。その人とコラボレーションさせていただいているのですが、この人がすばらしい。お会いしたときが23歳で「僕は46歳で死にます。折り返し地点に来ているのです。吉田松陰さんのように誰かのために自分の時間を使いたい。」というのです。彼のお父さん、おじいさんが同じ病気で46歳で亡くなっているそうです。そして「人生の長さは変えることが出来なくても、人生の幅は変えられる。何倍の幅で生きれば短い人生でも負けない広い面積になる」とも教えてくれました。「障がい者などいないんです。健常者が作り上げた世の中の仕組みが障害になっているだけです」というのです。バリアフリーですごいのは新宿の京王プラザホテルです。これみよがしの障がい者用の部屋ではなく、全室がだれでも快適にすごせるようにしているのです。

Q&A

IMG_3991オリエンテーションと人材選択の仕組み

いい質問です。それ3時間の研修になります。

クオリティセレクトシステムというものがあります。(「サービスを越える瞬間」参照)「どういう人と仕事をしたいか」レベルによって55から235の質問をしてポテンシャルを見ます。そして採用したベテランのプライドを傷つけずにOSを入れ替えします。

IMG_3993あなたの経験にリッツのホスピタリティを乗せるとすごい、と。それに十分に納得した上で具体的な研修に入る。それに3年かかりました。

高野講師の伝える哲学

二宮尊徳先生、福沢諭吉先生が語る際に気をつけたことです。

学校の障子越しに針仕事している下女が「なるほど」というようにわかりやすく話すこと、それを心がけています。

ビジョンを語る

ビジョンとビジョンでないものの区別をすること。長野タクシー運転手を例に使命と業務責任の違い。本当の意味での使命感、どんな価値を生み出したいのか、何で社会から必要とされる会社にするのか、ワクワク・納得するものがあれば、話す、伝わる。リッツの社長は11時間をあてた。

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最後に進藤さんによる謝辞、岩田さんによる閉会宣言、参加会員で記念撮影、終了しました。

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冷たい雨の降る、足元の悪い中ではありましたが、狩野刀根男会長の第一回の例会に多数集まり頂きありがとうございました。

今後共よろしくお願いします。

【出席数】
会 員   :49名
オブザーブ :48名
合 計   :97名

来月は同じ東京経営研究会の仲間である杉山浩一さんのレクチャラーデビューの例会です!
お見逃しなく!

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