今日の私の話は「魅力のあるリーダーになるにはどういうことが大事かということについてお話しします。

フラットなヨコ型の経営へ

芳村思風先生1現代は激動・激変の時代で、色々なものが根底から揺り動かされるような事件や変化が世界中で起こっています。政治も経済も社会も根底から変わっていくような、変化が期待されている時代です。
その中で社会というものは20世紀を通して人間が人間を支配することはあるのかという価値観のもと、社会というのも人間が人間を支配するタテ型の構造を持った「タテ型社会」というものが崩れ去っていって、今や人間が人間を支配しない「ヨコ型のフラットな社会」というのが望まれています。

20世紀というのは全世界から植民地というのがなくなってしまうという歴史を作った世紀です。
将来の歴史家が20世紀というのを評価するなら、独立戦争の世紀であったと評価するであろうほどの大変革が歴史的に作られていったのが20世紀の特徴でありました。
このヨコ型のフラットな社会を望むという社会構造の大転換において、企業の間でもタテ型の理性によって作られたピラミッド的なヒエラルキーを持った構造というのは批判されてきて、人間が人間を支配するという構造・システムを変えていかなければならないということが企業に要請されています。

資本主義経済下における企業というのは理性によって作られた、支配と命令と管理が経営の主軸になっていました。
その中で多くの方が精神的なストレスを感じて、人間性を破壊されるという状況が生まれてきて、毎年3万人以上の方が労働によるストレスから亡くなってしまうということが続いています。
そこで企業にどうすれば人間的なぬくもりを持たせることができるのかということが大きなテーマになって、経営の仕方も会社のあり方についても全世界で変わろうとしています。

しかし中々資本主義経済とは違う、まったく新しい経済システムとは何なのかということがわからずに、でも資本主義はダメだということから「脱資本主義」という言葉が全世界で使われています。
新しい経済社会のあり方、新しい経営のあり方というのが模索されている段階です。
感性論哲学においては、経済社会というのは資本主義経済から人間を大事にする、経済的活動とは人間性を成長させる活動に変わっていかなければならないということで、経済社会とは資本主義経済から「人格知経済」に変わっていくことを言っています。

同様に政治の世界でも、近代の政治は政党政治でしたが、将来的には政党がない政治を作っていかなければならないということも言っています。
社会というのも、今は民主社会と言われていますが、民主社会よりもっと良い社会とは何なのかということを考えなければならない大激変の時代が訪れているわけです。
民主社会というのは権利を主張しあってお互いを責め合うという構造を基本的に持っています。

不完全な人間同士が責め合ったら、正にこの世は地獄です。
だからこれから私達が目指していかなければならない新しい社会というのは、理性的に責め合うという構造を持った社会から、愛を持って許し合うという社会のあり方にしていかなければならないということを伝えています。

このように現在は、あらゆる領域で歴史的変革が求められている時代です。
経営という観点から考えてみますと、これまでの経営は実践型の経営で、支配と命令と管理というたて型の構造を持った経営が行われていましたが、社会構造がヨコ型の構造へと転換していくのであれば、その社会に合う会社のあり方もフラットな構造に転換していかなければならないわけです。

しかし、会社というのは熟練者と未熟練者が互いに関わりながら仕事をしていかなければならないわけですから、どうしてもタテ型の構造を持ってしまいます。
でも、このタテ型の構造から人間的ぬくもりのある会社を経営していくことが望まれています。
では、人間が人間を支配しない経営とはどのようなものなのかというと、理性型の経営とは支配と命令と管理による経営ですが、フラットなヨコ型の経営というのは愛と対話とパートナーシップによる経営と言うことができます。

ですからこれからは経営姿勢というものを大転換していかなければならない。支配から愛へ、命令から対話へ、管理からパートナーシップへ、とこれまでとは全く違う経営精神を持って社員の方々と関わりあっていかなければいけません。
それに伴ってリーダーシップのあり方というのも従来のリーダーのあり方とは全然違う内容が求められてくることになります。
感性によるヨコ型の社会にふさわしいリーダーシップとはどういうものなのか、どうすれば新しい時代の魅力あるリーダーになっていくことができるのか、その条件とは一体何なのかということについてお話していきます。

新しい時代の魅力あるリーダーになるために

芳村思風先生2魅力あるリーダーになるためにどういうことをすれば良いのかということですが、リーダーが組織の上でしなければならない最初の仕事は社員教育です。
教育というとどうしても教えよう教えようとしますが、雇った人の本当の力を引き出してあげて、その人らしい個性ある能力で仕事をしてもらうというようには中々できにくいというのが現実の社員教育の姿ではないでしょうか。
それではあまりにも今の社員教育というのは教えすぎてるというところがあります。
しかしリーダーには、社員のほうから魅力を感じてもらえるようになる新しい時代の社員教育、雇った人を活かしきる教育が望まれています。

教育という言葉は「教」と「育」という字が合わさってできている言葉で、教える、育てるという両面があります。
教育を英語では「education」といいますが、その語源はラテン語の「educatus」で、e-は「外へ」という接頭語、-ducは「引っ張りだす」という意味なんです。ですから、教育するという語源的な意味は「内にあるものを外へ引っ張りだす行為」であり、教育の本質的なあり方であるわけです。

ということは、教育は「教」と「育」の2つの行為があるわけですが、基本的には「教」が「育」を超えてはいけない、教えすぎては個性を潰す、教えすぎれば本人が持っている力を引き出すことができない、教えすぎれば「支配」になってしまうということです。
これからの時代の教育においては特に注意し避けなければいけないことなのです。

どうすれば本人が持っている独特の力を引き出してあげて、それを会社の発展のために使わせもらうことができるかという観点から教育を考えていかなければいけません。
魅力のあるリーダー、すなわちフォロワーから魅力を感じてもらえるリーダーとしてのあり方を教育の面から、魅力あるリーダーとして持たなければならない教育力について考えたいと思います。

【第一条件】教育力と活人力

芳村思風先生3まず第一に活人力を持った教育というのを考えていかなければなりません。
ある程度はマニュアル的なことを教えなければいけませんが、教えられた人は教えられたとおりにしなければならないと思うので、教えた人の顔色を伺いながら、間違わないように戦々恐々としながら仕事をすることになってしまいます。こうなると、その人の持つ底力というものは出てこなくなってしまう。

では、どうすればその人が持つ底力を引き出してあげることができるかというと、教えるのではなく、問題提起をして質問を投げかけてフォロワー本人に答えさせるのです。こうすれば確実にフォロワーの持つ特性、能力を湧き出させることができます。
これを実践し会社を世界的な企業にしたのが松下幸之助さんです。

ある時社員に経済について繰り返し質問し、松下さんを含めて誰もがわかる、納得できるまで説明をさせました。こうすることで、多くの人が納得できる説明の仕方を習得し、多くの人が求めるような製品を作れるようになる、という方向性で社員教育をしていったわけです。これがこれからの感性の時代に求められる教育だと言えます。

教えるのではなく、問を発して答えさせることで本人の能力や可能性を引き出してあげる、という教育の仕方が「活人力」ということです。この「活人力」を実現していくためのリーダーとしてのあり方というのは、短所や欠点をさらけ出す勇気を持って、本来自分がやらなければならない仕事を不得手だからと言って部下に与えて、部下の持っている力を引き出してあげるというリーダーシップ、マネジメントがこれからのリーダーには求められます。

個々の社員の特性を引き出してあげるというのは、これからの個性の時代の多様な需要に応えていくためにはとても大事な社員教育のあり方です。そういった仕事の与え方、させ方をすることによって部下から信頼される、魅力を感じてもらえるリーダーになれるわけです。

【第二条件】魅力ある個性か人望を持つ

芳村思風先生4カリスマ性というのは、部下から憧れられる存在のリーダーであるということです。
憧れられるには、非常に個性的で秀でた能力を持っていなければなりません。あるいは、性格的な魅力を持っているということもリーダーの大事な条件です。

例えば、我社の社長は仕事は大したこと無いけど、居るだけで楽しくなる、などといった性格的な魅力というのも経営者のカリスマ性にとって大事な条件です。これまで見てきた会社でも、あまり仕事はしなくても社員から好かれている、慕われているという社長、そんな社長を助けよう、支えようと社員が頑張るところは業績が良い。そういう会社は明るいし、皆楽しそうに仕事をしています。

また、人望を獲得するために必要なのは、「自信と謙虚さ」です。
自信の無いリーダーには誰もついていかないが、自信だけでは自信過剰になってしまう。自信過剰にならないために大事なのが「謙虚さ」です。自信のある人が謙虚だと「立派だ」と言われる。

自信と謙虚さは一対のものであり、一対で持つことによって社会を生き抜く力になるのです。自信だけでもだめ、謙虚だけでもだめ。謙虚すぎても弱さになり、媚びへつらいになってしまう。人望には自信と謙虚さが一対で必要です。

もう一つ必要なのが「感謝と謝罪」で、これも一対のものです。
よく感謝が大事だというので感謝という言葉を聞きますが、不完全な人間において感謝というだけでは「良い人に思われたい」という「善人根性」がちらついていて、人徳としてはまだ浅い。不完全な人間が人徳として人望を得るには、「間違ったらすぐに謝れる「謝罪」が「感謝」に加わることで人徳に深さができてくるのです。

親が子供に謝ったら、子供は親を信頼し好きになります。
学校の先生が学生に謝れば、かえって学生はその先生を尊敬します。
同様に経営者が社員に謝れば、社長のことを好きになったり、尊敬するようになります。

謝ると引け目を感じしまって、つい言い訳をしてしまうということが多いですが、かえって嫌われたり尊敬されない原因になってしまうのです。間違ってしまったら素直にすぐ謝ることができるというのは、不完全な人間にとってとても大切な人徳なのです。謝罪という力があってはじめて不完全な人間の本当の価値が生まれてくるということを忘れないで下さい。地位の高い人ほど謝れば信頼され、尊敬され、好かれるということを覚えておいて下さい。

人徳を得るための原理は2つ、「自信と謙虚さ」「感謝と謝罪」この両方が無いと得られない、そして人望を得ることができないということをよく覚えておいて下さい。

【第三条件】勇気ある行動力

芳村思風先生5部下が失敗しても責めないでかばって安心させる、救ってあげる、という上司について行きたくなるものです。
人の上に立っているというのは、その仕事においての熟練者であり、失敗も含めて色々と経験しているわけですから、未熟練者が失敗をしても、それをすでに体験したものとして「大丈夫だ、何とかするから」と言って安心させてあげるというのがリーダーが持つべき「勇気ある行動力」なのです。

また、部下をかばって上司に直言できるという力もリーダーは持っていないといけません。
上司にちゃんと納得してもらい、部下の失敗を許してもらえるという説得力をもって、事態を収めるという形で部下をかばうという力がリーダーには求められます。組織において人の上に立つ者というのは「部下のために死ねる」「部下のためなら一肌も二肌も脱げる」という部下に対する愛が必要です。

また、問題から逃げないで立ち向かっていくという姿勢がリーダーには必要です。問題に立ち向かっていくという「勇気ある生き方」に部下は魅力を感じるわけです。

【第四条件】先見力

先を読む力で、未来に夢や希望を持たせて今の辛さに耐えさせる、そういう力をリーダーが持っていないと、現実の辛い仕事をやり遂げることはできません。
リーダーには確実な先を読む力が求められています。

この確かな先見力というのは、「哲学的歴史観」が必要です。「哲学的歴史観」というのは、過去の事実の根底に流れている時流をつかむということです。「時の流れの方向性」というのを掴んで、だから先は必ずこうなる、と言えるというのが「哲学的歴史観」なのです。

政治家の最大の任務は国民に未来の夢と希望を与えることです。
親の最大の任務は子供に未来の夢と希望を与えることです。
同様に経営者の最大の任務は社員に未来の夢と希望を与えることです。

未来に夢も希望もない会社に誰が入りますか。
夢と希望があるからこそ頑張れるわけです。ですから、リーダーは常に情熱をもって夢や希望を語らなければならないのです。夢や希望を語ることによって部下に共有していくという組織を作っていかなければ、会社の本当の団結力と推進力は引き出せません。

夢と希望を情熱を持って語ることによって、部下が自分もその夢に関わりたいという気持ちを持たせることができ、団結力と会社の発展力を作っていくことができるのです。
リーダーは先見力を持って夢と理想を語り続けるというのが大事な役割です。そしてリーダーの夢をフォロワーが共有してくれる、そういう気持ちにフォロワーをさせていくというのが魅力あるリーダーの役割です。

現在は激動の時代であり、どうしても時流に乗り遅れまいと変化に対応していこうする人が多いのですが、変化があって対応するのでは今の激変、激動の時代では生き残ることはできません。
激動の時代を生きていこうとするなら変化対応ではなく、「時流独創」時の流れを自らが作るのだという精神で、経営者は先頭に立って道を切り開いていくという志が必要です。

【第五条件】仕事の意味や価値や本当の素晴らしさを情熱をもって語る

芳村思風先生7朝礼でやるべきは、社訓や経営理念を唱和したりするのではなく、自分たちが今からする仕事の意味や素晴らしさをリーダーが社員に熱く語りモチベーションを高めることです。
人間の心とは「意味と価値を感じる感性」であり、人間は意味や価値を感じないとやる気にならない、命に火がつかないのです。リーダーは全社員の心に火をつけなければいけません。

ですから、リーダーは常に仕事の意味や価値を語り、社員の心に火をつけないといけないのです。
またそのために、仕事のより深い意味やより高度な価値について常に追求し、気づいた意味や価値を部下にわかってもらえるよう、情熱をもって語らなければいけないのです。

意味と価値を感じてこそ「人間的」と言える世界が作られていきます。意味と価値を感じなかったらただのモノです。意味を感じないでしていることとは「意味のないことをしている」のです。だからほとんどの会社の業務というのは「惰性」です。仕事があるからやっているだけであって、意味や価値や素晴らしさを感じないでやっています。仕事に追われて仕事をしている「惰性」なのです。

これでは「いい仕事」はできませんし、「いい製品」は作れるはずがありません。惰性でやっているような仕事の仕方では顧客を感動させることはできません。ですから、リーダーは部下に毎日毎日仕事の意味や価値や素晴らしさを、口が酸っぱくなるくらい語り続けることが仕事なのです。

入社式で会長や社長が語られる演説でも、仕事の意味や価値や素晴らしさを語るのをあまり聞いたことがありません。ただ命令的な訓示をすることが多く、君たちにこれからやってもらう仕事はこれほど素晴らしいものなんだよ、という演説を入社式であまり聞きません。

入社式というのは、これからこの会社に入って仕事を始めようという時なんですから、この会社でやる仕事はこんなに価値がある、こんなに素晴らしいということを会長や社長さんに語ってもらいたい。これはその仕事の熟練者であるリーダーにしかできない仕事なのです。

【第六条件】自分の生き方を支える哲学(マイフィロソフィー)を持つ

このマイフィロソフィーというのは「信念」という言葉に置き換えることができます。リーダーというのは「ブレない信念」というのを持っていないとリーダーとは言えません。では、「ブレない信念」はどうすれば出てくるのか。

「ブレない信念」というのはただひとつ、「俺はこの人のためなら死ねる」というのが信念なのです。「ブレない」というのは「死ねる」ということなのです。死んでしまってはどうしようもありませんから、「死ぬ」という気持ちを持って生きるのが最良の生き方だということです。

人に何かを言われてグラついているようでは、まだ信念になっていません。「死ねる」という気持ちを持たないと、グラつかない信念はできません。そのためにはリーダーというのは、仕事の持つ意味や価値を突き詰めた時に信念が生まれますから、仕事の意味や価値を感じることができる「感性」を育てる必要がありませす。

人間の心というのは「意味と価値を感じる感性」ですから、最高に意味や価値を感じたら誰でも、何のためにでも「死ねる」という思いにまでいってしまいます。だから今やっている仕事にその人がどれほどの意味や価値や値打ちや素晴らしさを感じるところまでいっているかによって、「死ねる」という気持ちが持てるかどうかが決まります。

芳村思風先生6気持ちというのは本来「生きたい」と思うものですが、「生きたい」と思っている命が一番輝く時というのは「これのためならもう死んでもいい」というものに出会った時こそ一番美しく輝き燃え上がり、その時「完全燃焼」するのです。ですから「死んでもいい」というものを持ってない命は不完全燃焼の「くすぶった命」なのです。それでは命に輝きがない。自分たちの仕事の素晴らしさを感じて命が輝いているというのが「魅力」であるのです。

プロの仕事というのは顧客からお金をもらって仕事をするわけですから、「流石プロですね」と言わせてはじめてプロです。「流石だ」と言われて相応のお金をもらえる、という信念がないといけません。「流石だ」と言われないような半端な力でお金をもらうなんておこがましいと思わないといけません。顧客に金の出し惜しみをさせてるようではプロではありません。

これだけの仕事をしてくれたのだから、これぐらいのお金は当たり前だ、と思って快くお金を払ってくれてはじめてプロです。そういった信念がプロには大事なわけです。少なくともそういうところを目標にして仕事に精進していかなければなりません。そういう力をリーダーが持つことによって、部下が「あんな仕事ができるリーダーになりたい」と魅力を感じさせることができるのです。これが哲学を持った人間の仕事の仕方なのです。

命は燃えたがっているのです。人間の命の構造というのは、「永遠の生命」と個体的生命が融合して一個の人間の生命ができています。個体的生命はせいぜい100年生きるというものですが、この個体的生命の中には地球上で38億年間も生き続けてきた「永遠の生命」というのが存在しているのです。個体的生命は「永遠の生命」を完全燃焼させるよう「永遠の生命」に関わらなければならないのです。

ですから私達は生きている間に「死ねる」というものを持ち完全燃焼する、というのが個体的生命が「永遠の生命」への関わり方です。「永遠の生命」というのはただ永く続いているわけではなく進化しているのです。進化して今日の人間としての命に辿り着いたわけです。

ですから、個体的生命はその時々において「永遠の生命」を進化させるという関わり方をしないといけない構造になっているのです。「永遠の生命」を進化させるために個体的生命は何をしなければいけないのか。「このためなら死ねる」という思いで生きる仕事をしないと「永遠の生命」は進化しません。

「永遠の生命」を進化させるためには、個体的生命に「命に痛みを感じる体験」「限界への挑戦」「不可能を可能にする」という生き方をさせないと、「永遠の生命」に火がつきません。遺伝子というのは変化しないと思われていますが、そのような激しい生き方をすれば遺伝子は生きている間に進化します。

これを発見したのが利根川進さんの研究です。遺伝子は進化しないものであるなら、永遠に命の形は変わらない、なぜ変わるのかということを研究されました。そうすると、生きている間に遺伝子が進化するということを発見したわけです。「命に痛みを感じる体験」「限界への挑戦」「不可能を可能にする」という生き方をすれば、遺伝子という「永遠の生命」に影響し進化させるということがわかったのです。

個体的生命における最高の生き方である、「死ねる」という程の価値を感じて生きるというのは、「永遠の生命」に対する個体的生命の役割です。そうしないと、個体的生命は「永遠の生命」を内に孕んで生きている意味がありません。「永遠の生命」は燃えたいのです。

「幸せだなぁ」という実感は「永遠の生命」から湧いてくるのです。ですから、「永遠の生命」に幸せを感じさせる生き方を個体的生命はしないといけないわけです。恋愛でも同じで、一番燃えた時は「こいつのためなら死ねる」と思いますが、後から考えたらあの時何でそんなこと言ったのかと反省したりします。

とにかく、命はそこまでいきたい、燃えたいわけです。私達は何のために生まれてきたのか、私達は歴史を作る、自分の生きた証を残すために生まれてきたわけですから、その仕事の歴史を作ることが職業人の最高の生き方なのです。歴史を作るためには、今までに誰もやったことがないことをしないといけませんから、その仕事に生命を燃やして関わっていかなければいけません。

【第七条件】人間として成長したいとという成長意欲を持ち続ける

芳村思風先生10リーダーが成長意欲を持たなくなると会社の成長は止まってしまいます。リーダーが成長意欲を失うと、必ず部下を責め始めます。業績がうまく上がらないと、成長の止まったリーダーは部下を責めるのです。これは最低のリーダーです。

「敗戦の将、兵を語らず」というように、負けた時に兵を責めるような大将に誰もついていきたいと思いません。例え負けたとしても、自分の責任だと言って部下をかばって責めない、そんな大将に部下はついていきたいのです。そのためにもリーダーは人間としてもっと成長したい、成長意欲を持ち続けるというのはリーダーとして組織上の責任です。

会社の成長発展はリーダーの一念如何で決まります。では人間としての成長意欲とは何なのか。それは能力の成長と人間性の成長の両面において考えないといけません。リーダーは仕事を通して能力と人間性の成長を成し遂げないといけません。

職業というのは本来人間の能力と人間性を成長させる役割を持っています。職業というのは従事する人間を人に喜んでもらえるような仕事の仕方ができる能力と人間性を持った「本物の人間」に成長させる力を持っています。ですから、人に喜んでもらえるような仕事の仕方ができる能力と人間性を持てるようになろうと考えて仕事に取り組まなければいけないわけです。

ではなぜ職業という経済活動をしないと人間は本物になれないのか。食べるために何かをするというのが経済活動ですから、経済活動とは人間が人間として生きるための最も土台になる活動なのです。人間が人間として生きるために初めに作ったのが経済活動で、経済活動を通して人間は動物とは違う、人間としての生き方を作ってきました。

人間は経済活動をすることによって人間の「格」を作り、人間性を形にしてきたわけです。ですから、経済活動をしなければ人間として本物にならないのです。ではなぜ、経済活動をしなければ本物の人間といえないのか。人間本物になるには2つのことが必要です。

一つは人間の本質と実態を知らないといけない。人間は社会的存在ですから、社会の本質と実態に触れないと社会的存在として本物になれない。社会の本質と実態に触れるとはどういうことなのか。人間の本当の恐ろしさと醜さと素晴らしさに命が触れて、はじめて人間はこの娑婆社会を生き抜いていく実力を持つ自分を作ることができるのです。

人間としてのあらゆることを体験してはじめてこの娑婆社会を生き抜いていく力が作られるのです。人間本物になるためには座禅瞑想しなければダメだという人がいますが、座禅瞑想は架空の世界であり、本物の痛みを感じる体験がないので、意識は成長して悟ったつもりにはなれても命までは成長しません。

体験なしでは真実は語れません。
座禅瞑想は一人だけでやるもので、厳しい人間関係の悩みがありませんから磨かれません。体験をして這い上がってきた時に実力ができ本物になるのです。そういう体験をさせてくれるのが職場です。喜怒哀楽を味わい尽くさないと人間として本物にならない。人間として成長したいという職業人の意欲を実現したいのであれば職場を離れてはいけません。職場こそ人生唯一の道場です。

そして、能力を成長させるには「不可能を可能にする挑戦」をしないといけません。
リーダーが「不可能を可能にする」仕事の仕方をすることによって、フォロワーもその姿を見て仕事の仕方を覚えていってくれることで会社が成長するのです。限界に挑戦しないと能力の成長はありません。能力の成長がなければ社会の変化、発展についていけなくなりますから会社は成り立っていきません。

芳村思風先生9仕事で成功するために必要なのは「謙虚さ」と「成長意欲」と「愛」です。
不完全な人間にとって傲慢さほど醜いものはありません。ですから「謙虚さ」を持つことが大事ですが、「謙虚さ」だけでは弱いので自信も持たなければなならない。自信を持つためには「成長意欲」を持って自分を鍛えなければならないのですが、それだけだと自己満足で終わってしまうので、人の役に立ちたいという「愛」が必要なのです。どこまで消費者の要望に応え続けていけるのかというのが職業における「愛の実践」です。

しかし、消費者に主体性を奪われてそれに応えているだけでは従属的でプロとして情けない。消費者教育をしながら、消費者が気付いていない未来をみせる、リードしていくことができてこそプロの誇りある仕事といえるのです。

仕事で成功しようとすると「謙虚さ」と「成長意欲」と「愛」が必要なのですが、実はこれが人間の「格」を作る原理なのです。感性論哲学において人格とはこの「謙虚さ」と「成長意欲」と「愛」なのです。仕事をしながらこの3つの原理を「人間の格」として自分の中に作っていかないと、本当に身についた人格とは言えない。

人間性というのは性格と人格という「格」が絡み合ったものです。ですから人間性をさせる時には性格と人格の両面から考えないといけません。ただし、性格というのは自分では作れず、気がついたらこの性格になってしまっていた、というものです。性格の50%は遺伝で、残りの50%は生まれてから後、意識しない間に命に積み重ねられていったものが性格に反映されるのです。

遺伝というのは38億年間この地球上で生きていくことによって遺伝子が積み重なっていくわけですが、それが肉体的に現れるのが易相学で言う「手相」や「顔の相」で、精神的に現れるのが性格だというわけです。これに生まれてから後の体験や経験が重なってそれぞれに反映されるのです。

一方人格というのは自分で作っていくものです。生まれてから後に人間社会において教育を受けて人間の格が身に付いていくわけです。人間性を成長させようと思うなら、人格を作っただけではダメです。人格を磨かないと人間性は成長しません。

人格を磨くというのは、人格には「高さ」「深さ」「大きさ」があり、それぞれを求めていくことが必要です。人格の高さとは「高貴なる精神」を持とうとすることです。人間の大きさとは「器が大きい」「度量が大きい」「包容力がある」といったものです。これらを追求していくと人格が磨かれていくわけです。

人格を磨いていくと、性格が持っているマイナス面が表に出にくくなり、性格が良くなっていき、総合的に人間性が成長するというわけです。私達はこのことを仕事を通してやり遂げていかなければならないのです。仕事を通して人格を作り、仕事を通して人格の高さである「高貴なる精神」を作り、仕事をしながら人格の深さを作り、仕事をしながら大きな人間になっていかなければならない。

こうすることよって、観念ではない、綺麗事ではない本当の「肉化=身に付いた」人間性が出来上がるのです。これがリーダーが率先してフォロワーに見せなければならない仕事の仕方であり、生き様なのです。

【第八条件】常に変化を作り出し続ける仕事の仕方

変化がない、ということは死んでいることと同じです。会社を活性化させる根本原理は変化を作り出し続けることなのです。現実を破壊して、より素晴らしいものを作っていくという創意工夫の努力を忘れてはいけません。

よくある話が、講演会などで他社の成功談を聴いて真似をしようとしますが、二番煎じ、三番煎じはうまくいきません。それは、他社が置かれている条件と自分の会社が置かれている条件が違うからです。魅力を感じてもらえるリーダーになるためには、会社を発展させることにおいて他社の真似をしてはいけません。

自社の中から出てくる社員の提言・提案を出来る限り形にしていくことでの創意工夫を続けていくことが大事です。そうすることで、他社が真似のできない、独特の存在感のある会社になっていきます。これが個性の時代の創意工夫の仕方なのです。社員の提言・提案を活かすことで、採用してくれた上司を尊敬しますし、団結が生まれます。

【第九条件】文化力を身につける

芳村思風先生8仕事以外のものを身につける、例えばギターが弾ける、小説が書けるなどの「文化力」を身につけることで、仕事で尊敬されるだけでなく、人間的に親しみを感じてもらったり、尊敬してもらえるようになります。人間的に心から服する「心服」という心情が部下から出てきます。

このことは、豊臣秀吉がなぜ国の統治において茶道を取り入れたかを考えるとわかります。
秀吉はすでに軍事力、政治力、経済力においてはダントツの力を持っていたのに茶道を取り入れようとしたのか。軍事力、政治力、経済力だけでは「力の支配」に過ぎないので、何か事が起こったら自分が天下を取ろうとする者が後を絶たなかった。どうすれば諸侯が秀吉に従ってくれるのかを考え、取り入れたのが茶道なのです。

茶道というのは室町時代末期から武士社会に広がり始めた文化ですが、茶室に入れば身分も刀もない、同じ立場で胸を開いて話ができる、というものです。そういう文化を取り入れることによって、諸侯との間に「心のつながり=信頼関係」を作っていこうとしたわけです。千利休から茶道を学ぶところを諸侯に見せ、茶道の師匠である千利休も政治の場では秀吉にひれ伏すという姿を見せ、茶道の世界を政治的に支配していこうとしました。

しかし、秀吉は茶道を学びながらも金箔の茶室を作るなどしたことで、信頼を得ることはできませんでした。とにかく、秀吉は諸侯との心のつながりを茶道を通して手に入れられると考えたわけであり、リーダーが「文化力を身につける」ことが必要だという一つの実例です。

社員との心のつながり、心の信頼関係、心を開いて話ができるようになるために、何か文化力において玄人はだしと言える力を養っていくというのがリーダーにとっての課題になってきます。

【第十条件】人間性の豊かさを作っていく努力

人間性の豊かさとは幅を持つということです。
人間性の幅とは、考え方が違い、立場の違う人、性格の違う人でも一緒にやっていける、ということです。リーダーというのは多くの人を懐に抱えて統率していかなければならない立場ですから、自分と考え方が違うのでダメだと言っていたらリーダーはやっていけません。考え方、価値観、宗教、性格が違っていても、まとめて統率できるという力をつけていかないといけません。

そのために大事なことが2つあります。
一つは考え方の違う人とも共に生き、仕事ができる「矛盾を生きる力」です。理性は矛盾を排除しますが、社会を生きていくために必要なのは「社会性」であり、性格が違っていても一緒にやっていける、考え方が違っても一緒にやっていけるというのが「社会性」です。

宗教が違うから戦争をしているというのは「社会性」が無いということです。「社会性」が無いということは、人間は社会的存在ですから、「社会性」が無いということは人間性が無いということであり、人間ではないということです。宗教戦争をしているということは人間ではないということです。「人間の格」が無いのです。

社会的存在としての人間に一番大事なのは「社会性」なのです。「社会性」とは社会の中で私達が生きていかなければならない「愛の実力」なのです。考え方が違っても一緒にやっていける「愛の実力」が無ければ、人間の現実を止められません。今の人類に最も求められる力は「矛盾を生きる力」です。

これまでは理性に生きてきたから、価値観が違えば一緒に仕事ができるはずがない、考え方が違えば敵だと、宗教が違えば殺しあう、これが理性の時代の社会です。これからは、考え方が違っても、価値観が違っても、宗教が違っても一緒にやっていけるという人間性を作っていかなければならないのです。

考え方が違うという現象が起こる原因は5つあります。
体験が違う、経験が違う、知識量が違う、物事の解釈が違う、人生の様々な出会いが違う、この5つから考え方が違ってきます。ですから、対立している人というのは、自分に無い何かを持っているということです。

人間は成長しようと思うなら、同じ考えの人とどれだけ付き合っても成長はしません。楽しい、愉快、気楽では成長しません。成長しようと思ったら、自分に無いものを持っている人と付き合って、自分に無いものを学ばないと成長しません。

芳村思風先生11対立というのは嫌なものですが、対立という現象は自分にないもの教えてくれている、人間と成長ために学ばなければならないものを持っている人間が自分の目の前にいる、と教えてくれている現象なのです。
対立したらどう思わないといけないかというと、相手は自分に無い何を持っているのか、相手から一体何を学んだら良いのだろう、と思えば、相手を敵として見る目がなくなり、相手から学ばないといけないというように眼の色が変わります。

この眼の色の変化が人間関係を激変させます。
経営者は社員を「惚れた、お前が好きだ」という眼で見ることができなければ、素晴らしい人間関係は作れません。見下げるような、批判するような、否定的な眼で見れば人間関係は壊れ誰もついてきません。

もう一つ「人間性の豊かさ」のために大事な原理は、人間誰でも長所半分、短所半分で、人を愛するということは長所も短所も丸抱えで愛することです。長所は愛せても短所は愛せないという人は、人を愛する資格がありません。そのためには「不完全を生きる力」を作っていかないといけません。

短所を非難し、責めているようでは人間ではありません。短所がなかったら人間ではない、短所があってこそ人間です。短所が無かったら謙虚にする理由がなくなってしまい、傲慢になるだけです。長所と関わり、短所は許すという「不完全を生きる力」を作っていかないと魅力あるリーダーになれません。

ということで、今日は魅力あるリーダーになるためにはどういうことが必要なのかということについてお話を致しました。

どうもありがとうございました。

※今回は講師のお話を正しく伝えるために語られたことをほぼそのまま再現しました。

研修で人気の講師なので、たくさんの方に参加いただきました。

芳村思風先生、そして参加頂いた会員の皆様に感謝申し上げます。

次回は7月13日(月)開催の「自社を優良企業に導く自立型人財育成法!」