体感 チームビルディング

2月は阿部利成委員長の組織活性化委員会主催の例会で、日創研の杵渕隆講師による「人と組織の元気力を高めるコミュニケーション」というテーマでの講演でした。
開会にあたり阿部委員長から、今から学ぶ「チームビルディング」についてのワークがありました。チームビルディングを体感してもらおうという簡単なゲームで、各テーブルごとに配られたA4用紙30枚を時間内に一番高く積み上げたチームが勝ち、というものでした。簡単で道具は一切使えないというルールの元、各テーブルがチームとなって資本(用紙)を如何に上手く使って売上(高さ)を伸ばすかというものでした。
スタートと同時に用紙を折ったり並べて積み上げたりして、各テーブルが競って高く積み上げていきました。途中で崩れてやり直すところもでてきたりと、参加者全員が熱中して取り組みました。
阿部委員長からの楽しいゲームで場が温まったところで、杵渕講師に登壇して頂きました。

組織に不可欠なコミュニケーション

杵渕講師は講義の冒頭、ピーター・ドラッカーの「マネジメント」の中に書かれたコミュニケーションについて一文を紹介してくれました。
「組織におけるコミュニケーションとは手段ではない。組織のあり方そのものである」
組織とは共通の目的・目標を持った2人以上の人の集まりだと定義できますが、共通の目的・目標を達成させるためにはそのための情報等を共有しなければならない。このことが手段ではないということを人体に置き換えて説明してくれました。

人体は様々な臓器や筋肉や骨、さらにそれらを形付けている細胞組織で構成されています。しかしそれらが人体として活動をするためにはそれらを有機的につなぎ、活動するためのエネルギーを送り届けなければいけません。その重要な働きをするのが血液であり、血液の流れが悪くなることで体の各機能が働かなくなって病気になったり、最悪の場合は死に至ります。人が生きるために不可欠なものであり、この血液こそが組織におけるコミュニケーションなのだということでした。コミュニケーションが悪化すると、情報伝達や意思疎通が不十分になり、人体同様組織は機能不全に陥ります。退職者は増え、業績は悪化し、最悪の場合倒産してしまうことになります。

ピーター・ドラッカーの言葉は、人体における血液が決して手段ではなく、人体を動かしているのは血液であり人体そのものであることと同じ様に、コミュニケーションがあって初めて組織は活動できることから、コミュニケーションは組織のあり方そのものだと示していると杵渕講師は教えてくれました。
その上で、コミュニケーションが円滑な組織に必要な4項目を教えてくれました。
●ビジョンを共有している
●理念が浸透している
●報告・連絡・相談が徹底されている
●縦・横の信頼関係が構築されている

最強の組織・チームづくり(チームビルディング)

チームビルディングとは、「複数のメンバーが個々の能力を最大限に発揮し、一丸となってゴールに向かうチームになるための取り組み」のことを言います。その組織・チームというのは段階的に成長していくものでありプロセスがあります。言い換えれば、そのプロセスを正しく進んでいけば最強の組織・チームを作ることができると杵渕講師は言います。

その成長段階は4段階あります。

第1段階:フォーミング(Forming 形成期)
人が集まったばかりの段階、気心の知れてない状態、建前論、事なかれ主義、責任の所在が曖昧、リーダー不在、自分は頑張っている、他人は関係ない

第2段階:ストーミング(Storming 混乱期)
集団の中でそれぞれの主張が出てぶつかり合う段階、自己主張、対立・諦め、不安・恐れ、私は正しい、やるだけ無駄、リーダーはまだ義務・役割として

第3段階:ノーミング(Norming 標準期)
衝突を経てルールが生まれる、許容・承認、協調・協力、支援・統率、やればできる、楽しい、周りから信頼される人が自然にリーダーに選ばれる

第4段階:トランスフォーミング(Transforming 達成期)
チームとして結束が生まれる、信頼・結束、目標達成による一体感、相乗効果を発揮、それぞれが役割を認識し能力を発揮

4段階を経て最強の組織・チームは出来上がるのですが、8割以上が第2段階までしかいかない、第2段階でうまくいかなくなると言います。第2段階から第3段階へ進むためにはトコトン「本音」でぶつかり合い、お互いの思いを理解し合えるようになれるかだと杵渕講師は言います。

チームビルディングにおけるリーダーの心得

チームビルディングには「良いチームを創ろう!」というリーダーの強い意志が必要不可欠です。さらに、そのリーダー自身の「人としての成長」の上に、はじめてチームの成長があることを理解しなければなりません。組織・チームがリーダー以上の成長をすることはありません。
このことからリーダーに求められるのは、チームビルディングを通じて「自分と対峙する」ことだということです。組織・チームを動かそうとするなら、まずリーダーが動かなければいけません。つまり、リーダーとして自分はできているのか顧み、できていないこと、過ちに気づき、キチンと正さなければならないということでした。

これは、人としてとても辛いことであり、その道程の中で「そこまでしなくともリーダーの職務に何ら問題はない」と考えてしまいがちですが、この考えを必ず払拭しなければならないと杵渕講師は言います。なぜなら、辛い道のりであってもそれらはすべてリーダーとしての役割を通じて「人として成長する機会を得られている」からであり、そう考えるのが真のリーダーだと言えるのだということでした。
事実、リーダーはそれ以外の人では絶対に経験できない「圧倒的な自身の成長機会」を手に入れ体験をします。この体験から、いつの日か肩書ではなく自分の人格によって「誰からも認められ、信頼されるリーダー」になることができるのだということでした。

チームビルディング後の行動変容

では、チームで困難なミッションをクリアし、達成感や一体感を味わう経験によってチームにどんな変化が現れるのでしょうか?

①チームメンバーへの信頼度が増す
チームで目標を達成するということが非常に大事なことであり、チームとしてその成功体験を積ませることが重要です。このことからも、適正目標の設定はとても大事で、小さな目標の達成の繰り返しが自信と信頼を生み、大きな目標を達成させることができます。

②今まで個人で抱え込んでいた課題も、チームの力を借りて解決しようとする
成功体験を積むことでチーム内相互の信頼度が高まり、個人がチームの力を頼って問題を解決させることできるようになります。

③組織的にチーム力が向上する
チーム内の個人がチームの力で課題を克服することでチームのレベルアップにつながり、チームで解決させる力、チームとしての能力が向上します。

④イノベーションが生まれやすい土壌が形成される
組織・チームが一体となることで、目的・目標達成のために意見やアイデアが活発に出るようになり、これまでにない結果や成果を生み出すようになります。

そこで、チームビルディングを行っていく上で、現在の自分たちの組織・チームの「健全度」を確認するためにも健全・不健全それぞれの組織・チームの特長を教えてもらいました。

不健全な組織・チームの特長
①個人主義が強く、縦と横の連携が悪く、統制が取れない
②上司や影響力を持つ人の顔色を伺って行動している
③自己防衛的で排他的な言動や行動が多い
④やらされ感が強く設定された目標が高いと感じている
⑤改善提案やアイデアなどがほとんど出ない
⑥全てにおいて、誰かが何とかするだろうという傾向が強い
⑦全ての意思決定をリーダーに依存している
⑧経営理念やビジョンは形だけで何の効力もない

健全な組織・チームの特長
①チーム意識が強く、全員が協力して業務が行われている
②職位、経験に関係なく本音が言える
③悪いことも開示され、どんなことでも受け入れる関係性がある(安心で安全な場)
④設定された目標を妥当と感じて、達成意欲は極めて高い
⑤メンバー全員から様々な改善提案やアイデアが出される
⑥自分自身ができることを探し、当事者意識を持って進める
⑦リーダーシップは組織・チーム全員が発揮する
⑧経営理念やビジョンを共有し、仕事として体現している

最後にまとめとして、チームビルディングの意義と価値について聴きました。
チームビルディングの意義とは、組織・チームを構成する一人ひとりの能力を最大限発揮させようとすることです。一人ひとりが、組織・チームを何でも言える安心安全な場所であることを理解させ、最高のパフォーマンスを発揮させることだということです。つまり、今回のテーマの通り「人組織の元気力を高める」ことだということでした。
だからこそ、リーダーにはコミュニケーションを駆使して、それを生み出すチームを創るという尊い使命があるということでした。

 

杵渕 隆講師 ありがとうございました。
ご参加頂いた皆様にも改めて感謝申し上げます。


【講師プロフィール】
1960年、東京都世田谷区に生まれる。
高等学校で教鞭をとるが、教師生活の中で社会人教育の重要性に気づき、株式会社日本創造教育研究所に入社。
社内大学学長、講師育成担当、東京研修センター所長として人財育成に情熱を注ぐ。現在は、同社取締役。
また、自ら講師としても、モチベーションアップ、コミュニケーション力アップ、ビジネスソリューション、企業向けの出張研修等を務め、各団体の講演の活動も積極的に行っている。