なぜ今、イノベーションが必要なのか?

takahata2016年の「中小企業白書」には、2012年から2014年の間に4万社もの企業が減少しているという驚くべき事実が記されています。
注目すべきなのが、その中でも「中規模企業」は5万社増加しているのに、「小規模企業」は9万社も減少しているというのです。
「小規模企業」というのは5名以下、製造業の場合は20名以下の企業を指します。
つまり、小さな会社が大きくなる前に潰れてしまう、出来てはなくなるという状態にあるというのです。
でも、中規模に成長できたところは企業数が増えています。
これは「弱者が急激に淘汰されている」のだと高畑講師は言います。
どんどん大きな企業に集約されていっているということでした。

さらに「オリンピック前後のGDPの推移」を表したグラフを見せて下さいました。
中央に開催年を示し、そこにピークの山があり、その前後は大きく下がっていることが一目瞭然のグラフです。
これまで色々な都市でオリンピックが開催されてきましたが、グラフを見れば前後2年は経済は「大荒れ」になるということでした。
2020年に東京オリンピックを控えている日本ですが、大半の人がそれまで経済は上がり調子だと考えていますが、このデータからは2018年からは下降傾向になることが予想されます。
さらに、オリンピック後も2年間下降することが予想されます。
つまり決して「安泰」でいられる時代ではないということです。

そんな中でも企業の目的というのは同じです。
ピータードラッカーは「企業の目的はただひとつ、顧客の創造である」と言っています。
お客様の創造と維持がすべての企業の唯一の目的であるということです。
この目的を果たすために企業がすべきこと、それが「マーケティング」と「イノベーション」であると言っています。
ここで間違えがちな一つの命題を高畑講師は示されました。
「顧客を創造する経営資源は何か?」この問に人財育成について学んでいる私たちは「最前線にいる社員さん」と答えがちですが、「イノベーション」においてはそうではないということです。
企業と顧客の間には必ず「商品サービス」が存在し、それがあって初めて顧客は創造される、つまり「商品サービスなき所に取引なし」。
ただ、ここで注意すべきが商品の寿命「プロダクトライフサイクル」です。
商品サービスが生まれ、成長しピークを迎え、下降していく、すべての商品サービスがこの曲線を辿っていくわけですが、企業は一つの商品サービスが衰退する前に新しい山を次々に作っていかなければならないわけです。
これこそが企業が生み出すべき「新しい価値」であり、そのための取り組みが「イノベーション」なのです。
そして企業はこの「新しい価値」を生み出し続けなければいけないということです。
イノベーションは企業活動において極めて重要で、なくてはならないものではあるのですが、多くの中小企業においてはなかなかうまくいかないというのが現状です。

まずイノベーションとは何のなのか?
ピータードラッカーは「新しい価値を創造し、顧客または社会に提供すること」としています。
高畑講師はこれをさらにわかりやすく「昨日まで叶えられなかったニーズに今日お応えすること」と説明されました。
さらにイノベーションは4つに分類されるということでした。

「持続的イノベーション」
「破壊的イノベーション」
「プロセス・イノベーション」
「プロダクト・イノベーション」

keitaiこれをわかりやすくするために、日本の携帯業界にあてはめて説明されました。
まず「携帯電話」の登場がそもそも「破壊的イノベーション」です。
それが普及につれてさらに使いやすく便利なものへとドンドン進化していき、いわゆる後に「ガラケー」と言われるものへと成長していきましたが、これが「持続的イノベーション」です。
しかし、その後に「iPhone」の登場によって一気に「ガラケー」は衰退していきましたが、この「ガラケー」に対する「iPhone」がプロダクトにおける「破壊的イノベーション」になります。
さらに「ガラケー」の中でもドコモがその「持続的イノベーション」において生み出された「iモード」が、「ガラケー」というプロダクトにおける「プロセスイノベーション」として提供し携帯電話の普及を加速させました。
しかしならが、これもiPhoneと共にアップルが送り出した「iTunes」という「破壊的イノベーション」によって駆逐されてしまいました。

これまでのイノベーションはこのように大手企業のイノベーションによってライフスタイルやこれまでのやり方を変えるといった、いわば大手のイノベーションに「乗っかる」つまり間接的な受け手という立場でしかありませんでした。
ところがそれが今大きく変わりつつあると高畑講師は警鐘を鳴らされました。
それは、中小企業にダイレクトに影響を与える「破壊的イノベーション」であり、我々中小企業を飲み込もうとしているということです。
その破壊的イノベーションの中核であるのが「シェアリングエコノミー」と言われるものです。
代表的なものがタクシーの配車サービス「UBER」「LYFT」、さらに個人管理の部屋や家を貸す民泊サービス「Air BnB」や個別のトラックに依頼できる配送サービスの「ハコベル」、個人の車を貸し出すカーシェアサービス「Anyca」、やはり個人の駐車場を貸し出す「akippa」、そして洋服を買わずにレンタルする「airCloset」など。
いずれも「個人が保有している遊休資産の貸出を仲介するサービス」であり、個人間で非常に効率的に取引ができるというものです。
これがもし自分たちの事業の中で、個人間の貸し借りで済まされてしまうような「破壊的イノベーション」が起こったら、どのように対処すれば良いでしょうか?

さらに、注意すべきはこのような表向きのことだけでなく、これらのサービスを行っているベンチャー企業の経営の在り方だと高畑講師は教えてくれました。
これらの企業はVC(ベンチャーキャピタル)から多額の資金を調達し、数千億円の赤字を出しながら猛烈に成長していく、ということでした。
「ツイッター」を例に教えてもらいました。
ツイッター社の現在の売り上げは2200億円、急速に成長を遂げているわけですが、一方で累積損失が2300億円あり、創業以来一度も黒字になったことがありませんが、時価総額は1兆1300億円という信じられない会社です。
さらに前述の「Air BnB」は、現在の売り上げが900億円ですが、時価総額は3兆1000億円。
何の物件も持たない仲介会社が世界にホテルを所有するヒルトングループよりも上回ります。
これよりもヒドイのが前述の「UBER」で、売り上げが2000億円ですが、2016年の上半期だけで出した赤字が1300億円、にも関わらず時価総額が6兆1200億円で日産自動車を上回る。
やはり工場を持たない仲介会社が巨額の資金を持ってやって来て、どう戦えば良いのでしょうか?いくら質の高いタクシー業界であっても、10年間赤字を垂れ流してもやっていける会社がやってきてすべてを破壊していきます。
高畑講師は米国シリコンバレーに視察に行かれましたが、そこで実際にシリコンバレーで一番大きなタクシー会社が倒産しているのを見ています。
UBER社の赤字は質の高いドライバーに多額のボーナスを支給しているためですが、それによって利用者を増やして一気に他社を圧倒するわけです。
今の延長線上の経営でこの環境変化を乗り越えて行けるのか、とてつもない脅威を感じていると高畑講師は言います。

こうした変化に対応するには、自らがイノベーションを起こし新しい価値を提供していくしかありません。

イノベーションを妨げる10の理由

イノベーションできない企業の5つの要因

1 既存顧客や先代に経営を依存

これは新しいことを取り組みたいけれども、やるとお客様に迷惑をかけてしまうということがあります。
あるいは先代経営者の目の黒いうちは新しいことを中々できないということもあります。

2 市場が小さく見える

例えば現在売り上げが10億円という会社が、そこにイノベーションの種があるとしても、今は年間1000万円の売り上げしか上げられないといった時に近視眼的になってしまい、中々手が出ないということがあります。

3 存在しない市場が分析できない

現在まだ存在しないものに対して根拠も証拠も示せない、分からない、となってしまうと、最初からその話は無かったことになってしまう傾向がある。

4 今の能力が邪魔して種が育たない

今すでに売り上げが上がって活躍している分野があるがゆえに、次のステップに行けない。
企業が大きく変わる時というのは、今の事業が破壊されて「どうにかしないと」といった時に起こることが多い。

5 衰退する商品・技術にすがりつく

もはや必要とされていない商品や技術が、あるいはいくらオーバースペック(過剰性能)であったとしてもそれこそが自社の強みだと思い込み、周囲から取り残されてしまう。

イノベーション失敗の5つの要因

6 ニーズの読み違い

お客様の「欲しい」というのは簡単にはわからず、新しいものがおもったよりも反応が鈍かったり、違ったものの方が売れている、といったことが起こる。

7 タイミングが早い・遅い

すごく良いものを思いついたとしてもお客様が戸惑う、あるいは他社が先に売り出し後発になったことでインパクトが失われてしまう。

8 能力不足(低品質・低販売力)

アイデアは良いけれども、出来上がったものがポンコツだった、あるいは良いものができたのに売り方が分からずに売れなかった。

9 変化や想定外に対応できない

自分たちは良いと思って提供しているが、お客様に聴くと満足していない、あるいは想定したものとは違う使われ方をしている場合に柔軟に対応できずに駄目になってしまう。

10 継続性がない

売れるまでには時間とお金、そして社員全てのヤル気が必要だけれども、そうではない場合には長続きしない。

これらの「壁」を乗り越えなければイノベーションできません。
そこでこの「壁」を乗り越える4つの手順を教わりました。

①固定観念の理解

うまくいっている企業というのは、「理念の維持」と「あくなき進化」という対立する2つをどちらも追求しています。
また、「短期的利益」もしっかりと追いかけ、同時に「長期的利益」も同じだけの力で追い求めています。
さらに「起業家精神」と「規律の文化」を持ち合わせ、「従業員満足」と「顧客満足」を区別せず同じものとして取り組みます。
うまくいっている企業、イノベーションが起こせている企業はこの「andの才能」(『ビジョナリー・カンパニー』参照)というものを持っています。
つまり普通はどちらか一方を取らなければならないと考えがちですが、うまくいっている企業というのは「どちらも手に入れるにはどうするか」ということに知恵を絞っています。
あれだからできない、これだからできない、そんな固定観念を捨てて「真の欲張り」にならなければいけない、と高畑講師は言います。

②具体的方法に着手する

1.狙った顧客と取引のある企業とコラボ
2.市場規模に応じた小さな組織をつくる
3.分析するより試行錯誤から学ぶ
4.既存のルールや基準から外す
5.新しい市場は、探すか自分で創る

③イノベーションはあせらずじっくり育てる

Problem/Solution Fit(問題と問題解決手法のマッチしたものをつくる)
→・Product/Market Fit(製品を市場のニーズにマッチしたものに育てる)
→・Scale(マーケティングによるシェアの拡大)

これは、発想したものをいきなり攻めるから失敗するということであり、ある顧客と徹底して製品を磨き上げニーズにマッチしたものにしていくことが必要だということであり、これを「成功のカギ」と言います。

④成功のカギに着目する(KFC)

顧客に選択される重要なニーズこそが「成功のカギ」であり、これを間違えると絶対に勝てません。先述の携帯事業で考えてみると、「成功のカギ」は

1)初期は通話エリアや音声の品質
2)次にメールやインターネット接続などの機能
3)最後に端末デザインやブランド力

お客様は一度手にした価値を当り前と感じるため、「成功のカギ」はドンドン変化していきます。ですから、その一度上手くいった「成功体験」にしがみつくと、次の「成功のカギ」を見つけた企業に取って代わられてしまいます。
この「成功のカギ」というのは市場が進んで飽和していくとドンドン細分化されていきます。
ですから中小企業は大企業が目を向けないこの細分化した「成功のカギ」を捉えて叶えることができれば勝つことができます。

イノベーションとデザイン思考

高畑講師が渡米して感じたのは、とにかく「楽しそうに働いている姿」だと言います。
日本ではどうしても「失敗するのでは」という恐怖心や「しなければいけない」という義務感に苛まれながら働いているため思考が硬化しがちでイノベーションを起こせるようなアイデアが湧かないという問題があるそうです。

これを解き放ってくれるのが「デザイン思考」といわれるものです。
これは「IDEO(アイディオ)」という企業の創業者デビッド・ケリーとトム・ケリーという兄弟によって提唱されたもので「デザイン思考とは、イノベーションを日常的に行うための方法論のひとつ」と言っています。
「イノベーションの日常化」というのは「新しいものを生み出す物の見方や考え方を習慣化」させようというものです。
彼らは「人は創造性に対する自信を持てば誰でもクリエイティブな人間になれる」と言い切っています。
そもそも日本は世界でもトップクラスのイノベーターであり、過去には次々と新しい発想の商品を生み出してきました。
それがなぜ、変わってしまったのでしょうか。その理由は

・発展途上国の台頭によってコスト競争に巻き込まれたこと
・効率化や海外シフトで技術は画一化(災害が起きても大丈夫なように誰でもできるものに変わってしまった)
・ニーズの細分化でヒット商品が短命になった
・インターネットに乗り遅れ情報後進国に

これらのことが重なって日本企業の創造性が失われてしまったということです。
そこで、日本が復活するためのキーワードは「情緒的(意味的)価値」だと高畑講師は言います。機能的価値とは車なら走行性能、飲食店なら美味しさ、テレビなら画質といった言わば製品の持つ基本性能のことを言います。
これに対して情緒的価値というのは、車でもデザイン、飲食店なら雰囲気、テレビなら通信といった基本性能以外の付加価値のことを言います。

wiiこのことは過去にテレビゲーム業界で起こったことで説明ができます。
テレビゲームは任天堂の「ファミリーコンピュータ」から大きく発展し、ゲーム性が発展していく中で次第に画質や処理スピードに目が向けられ、ソニーの「プレイステーション」でひとつのピークを迎えます。
ゲーム機がパソコンに匹敵するほどの性能を持ち、ファンにはとってはとても価値あるものでしたが、それに対してそもそもの「ゲーム性」を捉え直し、コアなファンだけではなく老若男女誰もが楽しめるゲームというのものを改めてテレビゲームで形にしたものが「Wii」でした。
この流れ「1を0にして、再び1にする」、つまり「機能的価値(高機能ゲーム機)」から「情緒的価値(誰でも楽しめるゲーム)」に目を向けそれを再度「機能的価値(体感型ゲーム機)」こそがデザイン・シンキングだということでした。

ここで注目すべきは、このデザイン・シンキングというのは何もないところから奇想天外なアイデアをひねり出すことではなく、今あるものを分解したり、足し合わせたり、ひっくり返したりして今までにない価値を生み出すことだということです。
スティーブ・ジョブズが作った「iPhone」に使われている部品の70%ほどが日本製であり、日本の技術を組み合わせて作られています。
ですからこれも何も無いところから全く新しいものを生み出したわけではありません。
彼がそのときにあった技術に目を向けて、この革新的な製品を生み出しました。

ningendesignここで大切になってくるのが「人間中心デザイン」であるということです。
これは、大抵の場合企業は自分たちの技術や強みをベースにして「どのようにして売り込もうか」と考えがちですが、「すべては人々のニーズ(情緒的価値)」から始まり、それに今持っている技術(実現可能性)とビジネスとして成立させるための持続可能性が重なり合った領域にイノベーションを持ってくる必要があるということです。

さらに「イノベーションは仕組みで創る」ことが大切だということです。
ピータードラッカーは「イノベーションに優れた企業はイノベーションのための活動を厳しく管理する」と言っており、これは「新しいものを創れ」というのではなく「新しいものが生み出されるような仕組み」を企業内に作らないといけないと言っています。

次にデザイン・シンキングの具体的な5つのステップを教わりました。

1共感 すべてはユーザーを知ることから始まる

「観察する」「関わる」「没頭する」こと、これは実際に現場に行き、観察し、質問し、自ら体験する、すべてを共感し受け取る、ということで、決して会議室でお客様が考えていることは何かを考えていてはいけない、ということです。

2問題定義 本人も気づいていない驚くべき真実は何か?(KSF)

今ある製品に対してお客様が本来求めている「情緒的価値」を捉え、それを満たす製品の価値を考える、顧客の持つ問題を定義し直すということです。
具体例として宝酒造が新しく作った「澪」という日本酒で、この時に考えられたのが、これまで「どうしたら日本酒を飲むようになるのか?」という問いかけから「若者はどんなお酒を好んで飲むのか?」ということに変えて考えました。
「澪」はスパークリングワインのような日本酒で、他のメーカーや関係者から「これはもう日本酒ではない」という意見があるようですが、若者の間でヒットしている日本酒です。

3創造 定義した問題を解決する方法は無限にある

ここでのポイントは「制約」だということです。
制約こそイノベーションの源泉、「時間」「予算」「品質」を制限し、徹底的にアウトプットさせるということで、身近な例えで言うと「1年かけて新しいものを創れ」というと出来ませんが「3日で創れ」と言われれば何か出来上がるものです。

4プロトタイプ より早く、より多くの失敗を繰り返すために

3日間かけてひとつのプロトタイプを作るよりも、1日で作ったプロトタイプを3回試すほうがより良い結果をもたらす、ということです。
大抵の人が完成形に近いものを作ろうとしがちですが、とにかく試作を高速で何度も回してたくさん失敗することが大事だということです。

5テスト そのアイデアはユーザーの課題をより良く解決するか?

これは、もしユーザーが抱える真の課題や不満が解消されないとすれば、共感や問題定義に戻り、何度も繰り返すことがもっとも大切だということです。

大事なのはこの5つのステップが会社の日常の中(仕組み)に組み込まれて習慣化されているか、ということです。
いざという時にいきなり新商品を考えようとするのでうまくいかないわけですから、常に新しい商品サービスが考えられている風土を作れば、おのずと物は作られていきます。

一勝九敗の真実

ここからは高畑講師の会社を事例として、これまでの取り組みについてお聴きしました。
高畑講師が社長を務める株式会社エクストは創業15年だということですが、高畑講師曰く「節操がない」ほど新しい事業をやってこられたそうです。
その中でも数々の失敗例と上手くいかなかった理由、また成功例を教えてもらいました。
失敗例の多くは、今でこそヒットしている、つまりやるのが早すぎた、というものから取引先が失くなった、もしくは技術力不足から継続ができなくなったりと、前述で教えてもらった通りのことを実際に体験されたということでした。
一方で成功したものは、やはりその時のニーズにマッチしたもの、時流にあったものが売れ続けたということですが、さらにそこに顧客の必要としている「情緒的価値」にマッチしたものであったからだということがよくわかりました。
つまり、複雑な機能がたくさんある製品ではなく、顧客がしたい、実現したいというものだけに絞られたものがやはり一番求められたようです。

未来を創造する経営戦略

最後に高畑講師から問いかけがありました。

「皆さんの会社の経営計画書でイノベーションが起きますか?」

visionaploach高畑講師は経営研究会の中でこれまで多くの経営計画書を見てこられたわけですが、いずれも「問題対処型」の計画書であり、お客様に新しい価値が提供できるようなものになっていない、ということでした。

「企業は『顧客の創造』のために『イノベーション』を起こし続けなければなりません。そして自らの理想、あるべき姿を追い求めていくのです。その目指すもの、なりたい姿のことを私たちはビジョンと呼んでいます。外部環境の変化に振り回されるのではなく、なりたい姿に向けて今日どうするか?を描く「ビジョン型経営」に移行しなければならないのです」

具体的には、経営計画書を作る手順として、理念(なんのために)からはじまり事業領域(誰にどう役立つか)を定め、ビジョン(なりたい姿)を明確にします。
そして実現するための戦略(どうやるか)を立案し、3~5年後(いつするか)までにどうするか、1年後(今日何をするか)までにすることを決めます。
この中で、ビジョンを実現するための戦略において「破壊的イノベーション」を、そして1年後の計画において「持続的イノベーション」のための仕組みが必要だということでした。

ここでさらに経営計画書作成の5つのポイントを教えてもらいました。

1.ハリネズミの概念

これは「ビジョナリー・カンパニー2」という書籍の中で紹介されている概念で、偉大になった会社の共通項として上げられています。
「世界一になれる分野はどこか?(願望ではなく自社が一番になれるところはどこか)」
「経済的原動力になるか?(売上などではなく自社に最もマッチした●●当たり利益という指標を長期的に上昇させているか)」
「情熱を持って取り組めるか?(一貫したビジョンを持ち共感できる人を集めて成果を出し続ける=経営者の本気を見せているか)」
という3つの重なった領域に深い理解がある企業は成功すると書かれています。

2.コアコンピタンス

競合他社がマネの出来ない圧倒的な競争優位を創りだすための中核となる資源。

3.マーケティング

お客様の方から「買います」と言っていただくためのすべての活動のことを言いますが、やはりピータードラッカーが言っているのは「企業の目的、使命の出発点は一つしか無い。顧客である。私たちは何を売りたいかではなく、お客様は何を買いたいかを問わなければならない」と述べています。

4.踊り場の経営

踊り場とは不可能が可能になるポイントです。
エクストさんでも山あり谷ありで、投資したいけれどもお金がない、など色々な条件がありますが、ステップを踏んで少しずつできることを増やしていくことが大事だということです。
エクストさんでは経営方針を半年区切りで方針を作り変えているそうです。
ただし3カ年作っていて、今年はこれをやる、この半年はこれ、というのを少しずつ上積みして少しずつ出来ることを増やしていくという経営計画を作られています。
先だけ見ていても仕方がないので、ビジョンから振り返って積み上げていくという計画を作っているということです。

5.テコの経営

teko「外部環境」「成果」「実力」「時」といった要素が色々ある中で、先見性がないと同じ実力をもってしても大きな成果は上がらない。
また、外部環境が大きく変化すると、やはり同じ実力をもってしても成果は上がらない。
あるいは、タイミングを間違うと同じ実力を持ってしても成果は上がらない。
そもそも実力がないと何をやっても成果は上がらない。
つまり「人間性を良くする教育」ではなく「能力を高めるための教育」をしなければいけないということです。
さらに、環境変化に敏感な組織をつくること、そして時間という資源にコミットすること。
戦略とは、最小の資源で最大の成果を得ることであるので、いかに自社の資源を効率的に使うかということを考えていかなければならないということでした。

これら5つの視点で自社の経営方針を見直してみた時に、足りないところがあるならばそこを変えていくことでイノベーションが起こるだろうと高畑講師は言います。
これまでの「問題対処型」経営方針から「ビジョン型」経営方針に変わっていくということでした。

変えてはならないもの

今私たちに必要なのは

1 いち早く変化を察知し
2 その変化に対応する術を身につけ
3 自社なりの成功法則を探し出す

そのために私たちは学び続けなければならない。
これこそが不変の法則だと高畑講師は最後にご自身のこれまでの体験を通しての学びについて教えてくれました。

高畑講師が経営者を志したのは22歳の時で、当時は美容師の見習いをしていました。
ある時帰宅すると父親からの一通の手紙があり、そこには返しきれない程の借金の事が書かれていました。
父親はその手紙を残して夜逃げ、高畑講師はその借金を背負うことになりました。
父親が経営していた会社は倒産して家も追い出され、高畑講師はそのリベンジを誓って起業します。

それから20年が経ち、ここまで経営を続けることが出来たのはなぜかと振り返った時、3つのポイントがあることに気づいたそうです。

1 決して諦めなかった事
2 たくさんの方の支えを得られた事
3 継続して学び続けた事

高畑講師は経営研究会に入会して17年になるそうですが、例会を休んだのは4~5回しかありません。
理事や役員も務めてきましたので例会以外にもたくさんの会合や行事に参加してきました。
それは、とにかく知識を増やしたいという一心からだったそうです。

しかしながら、これからの経営は「情熱」や「ご縁」の力だけでは乗り越えられない壁があることを実感しているということです。
そうした壁を乗り越えるためには、壁を乗り越える方法を学び、それを「実行できる実力」を身につける、つまり「知った」ということだけではいけないということです。
この「学び」それを「実行」できる実力を身につけていくことこそが「成長」です。
成長するということは、昨日できなかったことが今日できるようになること、今日できないことが明日できるようになること。
これはつまり「自己革新」であり、自分の中のイノベーションです。
だからこそ、できることを一つずつ増やしていくための学びを継続していかなければいけないということでした。

最後に高畑講師の好きな言葉で締めくくられました。

「未来を予測する最良の方法は自ら創りだす事である」ピータードラッカー

高畑講師、今年最後にふさわしい素晴らしいお話でした。
本当にありがとうございました。

また、ご参加頂いた多くの会員の皆様にも改めて感謝申し上げます。

次回は新年初回であり、小林会長の記念すべき第1回目の例会です。
また、例会後には恒例の賀詞交歓会を兼ねた懇親会もありますので、奮ってご参加ください。

topmedia201701

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