今回は、今年最後の例会で、来年に繋げる意味も含めて「東京経営研究会の使命」をテーマに白熱教室を開催しました。
ファシリテーターは組織活性化研究室の室長である松井洋治(ひろはる)さん。
松井さんは企業におけるPC関連の困りごとを解決するビジネスをしながら、日創研の研修と経営研究会での学びの中で資格の必要性を知り、仕事をしながら8年かけて中小企業診断士の資格を取得しました。
そんな勉強熱心な松井さんから、特に中小企業経営にとってとても重要なピーター・ドラッカーの教え、その中から「5つの質問」を元に東京経営研究会のあるべき姿を参加者全員で考えていきました。

ドラッカーの「5つの質問」
第1の質問 われわれの使命は何か
第2の質問 われわれの顧客は誰か
第3の質問 顧客にとっての価値は何か
第4の質問 われわれの成果は何か
第5の質問 われわれの計画は何か

組織の三要素(リチャード・バーナード)
1、共通の目的
2、貢献意欲
3、コミュニケーション

ミッションの位置付け

ドラッカーは使命・目的が経営(マネジメント)の原点だと述べており、それはこの「共通の目的」こそが使命・ミッションだと松井講師は言います。
そして使命とは、自分(自社)が何のために・誰のために働くのか、時間(=命)を使うのかであり、それを明確にしなければならないということです。
今回のテーマ「東京経営研究会の使命」というのは、東京経営研究会で使っている時間は何のためなのかを明確にしようということです。

一方でミッションについての良くある質問として、東京経営研究は非営利団体なので当てはまらないのではないか、ということが言われますが、ドラッカーの「5つの質問」は企業のためだけに出されたものではなく、NPOなどの団体においても「組織」であればすべてに共通するものだと言っています。

ここで松井講師が有名な企業のミッションをいくつか紹介してくれました。

Google
「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」
ミッションが明確になると、会社内だけでなく顧客も巻き込んで一体化していくものであることが、このGoogleのミッションと実際の活動を見れば理解できます。

スティーブ・ジョブズ(Apple創業者の言葉)
「宇宙に衝撃を与えること」
(原文は「われわれは宇宙に衝撃を与えるために存在している。それ以外に人間の存在理由があるか?」)

赤十字
「わたしたちは、苦しんでいる人を救いたいという思いを結集し、いかなる状況下でも、人間のいのちと健康、尊厳を守ります」
東日本大震災の時、多額の寄付が赤十字に集まりましたが、それは赤十字がこのミッションに基づいた活動をしてきたことで、災害時における「支援センター」としての役割を誰もが認めていたからに他なりません。

ファンケル
「健康寿命を延ばす」
事業コンセプトとして、心身ともにより良い状態が続くこと=「Good Aging(グッドエイジング)」の実現を掲げ、日本人の健康寿命を延ばすことが使命としています。

スターバックス
「第3の場所(サードプレイス)」
第3の場所とは家庭とも職場とも違う人々が気軽に集うことができる場所のことを指し、仕事や家庭でもない非日常な空間を意味しています。一人で過ごすのにも友人とのおしゃべりにも「第三の場所」であるからこそのくつろぎや楽しさを与えてくれる、というのがスターバックスのコンセプト。

ミッションの位置付けを考えた場合、顧客満足、従業員満足、さらに会社の繁栄(経営者満足)が満たされるところであると松井講師は言います。
会社が得意なこと、強みを発揮すると顧客満足につながり、従業員も得意分野なのでさらに能力を発揮し、会社の業績は上がる。
この3つが満足されるところ、強みを見つけ出すこと。

ミッションとは何か

では、ミッションは経営理念と何が違うのでしょうか。
経営理念は作るものであり各社特有の経営の理想の思いを作ることができます。対するミッションはビジョンの基になるもので、会社の外に目を向けたもの(誰のため、何のため)でなければおかしくなると松井講師は言います。例えば会社のビジョンを「売上10億円」としてしまうと、誰にも響かず達成されることはありません。
そうならないためには、「誰のため、何のため」というミッションを明確し、それを基にしたビジョン、社会にどれだけの影響・インパクトを与えるのかということを描くことが必要です。つまりミッションとは会社の存在意義や存在目的、社会的役割のことで、会社の「核」となるもの。

この3つを車に例えると、経営理念はブレーキ、ビジョンはアクセル、そしてミッションはエンジンと言われます。景気が良い時ほど経営理念を大事にして行き過ぎないようにし、停滞している時はビジョンを描いて前進させようとします。ただ、いずれにしても車を実際に動かすエンジンがなければ動きようがないということなのです。

また、組織がそのミッションに気づくことができれば次の5つのブレイクスルー(解決策の発見)が組織に生じると松井講師は教えてくれました。
1、組織に安心感と一体感、開放感が生まれる
2、夢、ビジョンが生まれる
3、日々の仕事に優先順位が生まれる
4、新たな顧客が生まれる
5、イノベーションが生まれる

東京経営研究会のミッション

ここから参加者全員でディスカッションを通して質問の答えを探っていきました。
最初は東京経営研究会の「顧客は誰か」。
経営に悩みを持つ経営者、勉強熱心だが悩みを持つ経営者・経営幹部、向上心があり業績を上げたい経営者、魅力ある経営者になりたい経営者・経営幹部、学ぶ意欲の高い経営者が集まる場を求めている経営者、などの意見が上がりました。

次は「価値(強み)は何か」。
自分たちの顧客が何に困っているのか、何を得たいのか、を知ることになりますが、東京経営研究の会員の多くは学びを得るためにいることがわかっているので、この場合「何のために学ぶのか」あるいは「どんな学びを得たいのか」というところから考えることになります。
ここでは「日創研経営研究会」と「東京経営研究会」を分けて考えました。
全体の強みとして上がったのは、全国の様々な業種の経営者と繋がりが持てること、同じ研修を受けて同じ価値観を共有した仲間と学べること、経営上の問題課題の解決に向けた指導をしてくれる、全国行事(全国大会、経営発表大会)、などでした。
東京の強みとして上がったのは、ルールを守りつつ自由な発想でチャレンジしているところ、歴史が古くて中身が濃いところ、フラットな繋がりと仲間意識の高さ、黒字企業が多い、日創研の東京センターがある、(東京にあることから)情報が最先端、企業規模の大きい会員が多い、などが上がりました。

これを踏まえて「使命は何か」を考えました。
使命を考える上での3つの条件を松井講師が教えてくれました。
①我々の機会、ニーズは何なのか
②それは、我々が卓越しているか?強みか?
③心からそれを感じているか
先ほど上がった顧客像を踏まえて出てきたのは、会員企業のスキル向上、コアコンピタンスの追求、より良い未来の創造、未来の優良経営者、勉強熱心な経営者の応援団、成長し続ける経営を創る、経営者の幸せの追求、会員企業の業績アップ、経営者の総合トレーニングジム、などが上がりました。

松井講師が考えた答えも教えてもらいました。
東京経営研究会の顧客は「リーダー」であり、その使命は「リーダーの成長」ですが、これではまだ広いので近年のよく使われるキーワードを加えて「持続可能なリーダーの成長」ではないかということでした。
ただ、「リーダー」というのは幅広い言葉なので、ここに東京経営研究会独自の定義を付与することでその使命がより明確になるのではないかということでした。松井講師が考えた東京経営研究会が考えるリーダー像とは「自利利他の精神を持って、先に与えることのできる人」ということでした。
自利利他とは仏教用語ですが、自利は自らのミッションを得ること、それが他の人の利益になるということ、「天職をもって人を助ける」ことだと松井講師は教えてくれました。

今回は東京経営研究会の使命を考えましたが、参加者はそれぞれの会社に置き換えて感がることができ、とても学びの多い時間でした。経営理念、ビジョン、ミッションの位置付け、特にどれが核となり軸となるものなのかがわかりにくいそれぞれの概念をわかりやすく教えてもらった上でのディスカッションだったのでとても盛り上がりました。

松井洋治講師、ありがとうございました。
ご参加頂いた皆様にも改めて感謝申し上げます。