今回はタイトル通り、同じ経営研究会の仲間お二人を講師としてお呼びし、コアコンピタンス経営の事例として自社の取り組みをお話して頂きました。
お一人目は、南大阪経営研究会に所属の有限会社エム・カンパニーの代表取締役である松木克浩さんです。

学びとの出会い

エム・カンパニーさんは現在は「畜産物に絞り込んだ物流」として展開していますが、日創研と出会った頃、松木社長が学び始める前は「何でも運ぶ」運送業でした。
創業して10年目に研修を受講されました。
当時の売上が2億1,000万円、経常利益が700万円、自己資本は600万円、社員数32名、車両が24台でした。
現在は売上が7億円、経常利益が4,200万円(25期見込み)、自己資本は1億2,000万円、社員数70名、車両が45台になっています。
松木社長は身近にいたある経営者に憧れて18歳で創業されました。
創業当時の1990年代に規制緩和によって輸入肉が入ってくることになり、大手食肉メーカーから「代行納品」という仕事の依頼が来たことで創業することができました。

その後周囲からのアドバイスによって運送業として確立させていった松木社長の当時の合言葉は「寝るな休むな倒れるな」で、社長が先頭きって寝る間を惜しんで働きました。
バブル崩壊後でしたが、働けば働いた分だけ売上は拡大していきました。
しかし、当然ながら過酷な状況では社員さんが辞めていく、長続きしないという問題が起こり、さらに資金繰りにも困るようになります。

そんな時に日創研に出会い、SA研修を受講されました。
そこでこれまでの生き方を反省し、家族や社員さんに喜んでもらえる仕事や会社にしていくことを決意されます。
さらに、そのタイミングでチャンスとピンチが松木社長に降りかかり、人財育成の大切さを痛感し、そのために経営者としての姿勢を正すことを決意し、本当の意味で学ぶことを始められました。

最初は松木社長自身も劣等感に苛まれ、学ぶことから逃げ出したくなったこともありました。
それでも頑張って学び続けていると、5年ほど経過した頃から社員さんに変化が表れ、松木社長と一緒に学んでくれるようになったそうです。
これは言い換えれば、「変化が起こるまで5年かかった」と松木社長はおっしゃいました。

自社の強みから圧倒的な競争優位へ

松木社長が現在の「畜産物専門物流」というコアコンピタンスに出会ったのは「業績アップ研修」での学びからです。

まず初級コースで、損益構造の改革について学び、これまでの「取引数=売上」を増やそうとする経営から、適正な「価値の提供」による業績向上に取り組むことになりました。
そして、上級コースにおいて「ベネフィットの創出=お困りごとの解決」と「競争優位」について学ぶことで「畜産物流」に絞り込むことを決め、本格的に取り組み出されました。

ここで松木社長は釘を差すように「畜産物流」に着眼するまでに3年かかったこと、確立までにはさらに5年かかったことを告げられました。
つまり、研修を3年受講して学び続けてようやく「畜産物流」に着眼、絞り込み、さらにそれに特化した経営に変えるための社内の調整、取り組みに5年かかったということでした。

コアコンピタンスとは
他社が提供できないような利益を顧客にもたらすことができる、自社内部に秘められた独自のスキル・技術・ノウハウ。

コアコンピタンス経営とは
他社が絶対真似できない自社独自の競争優位の源泉を持ち、それによってお客様に提供するベネフィット(利益・便益)を最大化すると共に、自社のプロフィット(利益)を最大化する経営。

「畜産物流」に絞り込んだことで、そこでの「顧客のお困りごと」つまり自社が提供できるベネフィットは何かということを深いレベルで探ることができたということでした。
具体的には
お困りごと①:コスト削減、納品日、納品時間→→→解決策(ベネフィット):畜産物流路線便
お困りごと②:保管スペース、品質管理→→→解決策(ベネフィット):物流センター
お困りごと③:仕入・販売・加工の情報、与信審査→→→解決策(ベネフィット):マッチング

さらに、取引先を固定せず細分化させることで、畜産物流における需要の中で仕事が自然と集まるようになっていきました。
結果として、この取り組みがエム・カンパニーさんにとっては、「生産性の向上」「労働環境改善」「新しい事業展開」というプロフィットを最大化させることに繋がっていきました。

コアコンピタンスに必要なもの

松木社長は現在コアコンピタンス経営を実践されているわけですが、そこに必要なものとして教えて頂いた項目ではなく、それを永続発展させていくためには「大きな夢・ビジョン」が必要だということでした。
物流という仕事は発展性に乏しいところがあるため、独立してもある程度まで伸びても伸び悩みに陥ってしまいます。
それを防ぐには経営の「多角化」が必要になってきますが、そこで失敗しないためにもこのコアコンピタンス経営を確立させ、その発展段階で関連する事業展開をしていくことだということでした。
エム・カンパニーさんでは、焼肉店という飲食事業を手がけることで自社のコアコンピタンスを発展させようと考えられています。

さらに、国内の畜産農家が減少していることに対しての「お役立ち」として、自社が牧場を運営することを考え、現在は肉牛を委託で育ててもらっているということでした。
このように、松木社長は「畜産物流」という川下から始まった商流を川上へ展開していくことで、食肉業界における「一気通貫」のビジネスモデルに挑戦されています。
つまり、畜産物流だけだといずれ競争優位が保てなくなったり、いつ時代の変化によってその仕事が無くなるかもしれないので、如何にコアコンピタンスを起点に発展させていかなければなりません。
そのためにも、そのことを学び理解した上で、先の視点、ビジョンや夢を持つことがコアコンピタンス経営には必要であることを教えて頂きました。

 

次に熊本経営研究会に所属の株式会社アイキャッチ 代表取締役の山口紘徳さんです。

意識改革からV字回復

アイキャッチさんは熊本に本社を置く総合印刷会社ですが、コアコンピタンスは印刷関連ではありません。
また、熊本市に本社はありますが全体の2割でしかなく、8割は大阪と東京での仕事だということです。

山口社長は三代目で、就任して13年ということで、就任当時には埼玉に印刷工場があったそうですが、その工場も売却をし、東京は新橋に事務所だけ置いて営業されています。

昨年の震災では、ご実家が益城町だったので被害を受けられたのですが、会社は熊本市だったので問題なく営業できている上に、仕事の大半が熊本以外だったので問題なかったとのことでした

山口社長にはお兄さんが二人いらっしゃるのですが、お二人とも成績優秀で家業とはまったく違う道を歩まれ、山口社長自身も中学生の頃から音楽にのめりこんで東京のメジャーレーベルからデビューをした経歴の持ち主で、最初から家業を継ぐ予定ではなかったそうです。

東京で音楽の仕事をしつつ、うまく行かなかったこともあり、アイキャッチさんの埼玉の事務所でアルバイト感覚で入社したそうです。
その頃にSA研修を受講し、音楽をやめてアイキャッチさんの仕事に本格的に取り組むことになり、28歳の時に起業家養成スクールに行くことになりました。

しかし、入社4年目の2007年に業績が悪化し、150名いた従業員も半減。
2008年に専務に就任し、先頭に立って業績改善に取り組み、2010年には前年比113%アップという文字通りV字回復を成し遂げられます。
そして、翌年度からは社長に就任され、6期連続で経常利益10%以上の業績を上げられています。

山口社長が大きく変えられたのが、それまで食品スーパーのチラシがほぼ100%だったところを、「購買促進事業」を立ち上げられ、現在は全体の2割強までにり、これからは縮小傾向にある印刷事業から「購買促進事業」に力を入れていくということでした。

販売促進から購買促進へ

印刷業界全体が縮小傾向にあり、その規模はバブル期の10兆円から現在は6兆円にまで落ち込んでいます。
さらに新聞購読数も人口動態にそって減少し続けています。
また、現在はインターネットで注文を受ける印刷会社の出現で印刷単価が大幅に下落し、アイキャッチさんのような印刷会社でも実際の印刷はこの「ネットプリント」を使用されるそうです。同様に、このインターネットとは違い、印刷物自体の「費用対効果」が見えないということも敬遠されている一つの要因だということです。

これらのことから、現在印刷会社には印刷知識よりも「販売知識」が求められています。
そこで、アイキャッチさんの仕事は
「クライアントの買ってもらえない原因を分析し、消費者が買える作戦を立て実行すること」
だと定義付けられました。

これまでは、お客様が印刷に必要な原稿や写真などを用意し、印刷会社にデザインと印刷を依頼するといった流れでしたが、単価競争やお客様側での自作デザインができるようになってきた現在においては、デザインと印刷だけでは差別化することが困難になってきました。

ですから、アイキャッチさんは「あえて作る前の段階から口を挟む」という仕事に変えていき、例えば名刺一つにしても、依頼されたから印刷するのではなく、なぜ名刺がそのお客様にとって必要なのか、どのような名刺が必要なのかを問いかけ考えるようにしました。
つまり、山口社長はこれまでの印刷会社の「受け身」の意識を、自分たちは「共に感じ合えるパートナー」へと変革させていきました。

そこで生まれたのが「購買促進事業」です。
アイキャッチさんが目指すのはデザインすることや印刷することではなく、「お客様の商売繁盛づくり」です。
ここで、この考え方を説明するために山口社長から質問が出されました。
「売上高」の反対は?
「売れる」の反対は?
その答えは
売上高の反対は「買上高」
売れるの反対は「買える」

これは自社視点ではなく、お客様視点で考えるということであり、アイキャッチさんの場合だとお客様のお客様のことを考えるということです。
アイキャッチさんのお客様が「売れない」のではなく、そこに買いに来るお客様が「買えない」ということを考えるということでした。
例えば、「商品のある場所がわからないので買えない」、「メニューがわかりにくいので選びにくい」といったこと。
つまり「お客様の商売繁盛づくり」の目的は、「(お客様の)お客様にいかに商品を買って頂けるモノにするか」ということだということでした。

一般には「販売促進」と言いますが、これは「売る」ためのことなので、アイキャッチさんはそれを「買う」側に立った「購買促進事業」としているわけです。
販売促進の仕事は広告やPRですが、購買促進の仕事は買って頂ける商品、企画、パッケージを作ること、それをこれまでとは違うより深い顧客との関係の中(B to B to C to Cあるいは
B to C to C)まで踏み込んで考え提供するというものです。
これは、従来の印刷会社の仕事ではありませんから、この事業がアイキャッチさんにとって「競争優位」に立てる仕事であるということでした。

観光関連事業

アイキャッチさんはこの山口社長による意識改革によって仕事の仕方が変わり、先述の通り売上構成比が劇的に変化しました。
さらに、積極的に「踏み込んで」仕事をすることで仕事の「効果」もしっかり出る、このことが評判を呼んで、これまでの「飛び込み営業」のような非効率的な仕事をすることもなく、ドンドン紹介で仕事が来るようになりました。

しかしアイキャッチさんの進化はそれだけではありませんでした。
山口社長が業績アップ研修で講師から聴いた「これからは、”モノづくり”から”コトづくり”」ということについて考えている中で、それを実現させたのです。
それは熊本の「阿蘇内牧温泉」の商店街から、これまで活性化に向けて個々に案内マップや新商品の開発、企画をしてきたのですが、それをすべて統合して「観光地の繁盛」として取り組むことで実現しました。

具体的には、人が集まりにくい平日に長期滞在の多い外国人観光客を呼び、彼らの旅行のスタイルに合わせた「泊食分離(宿泊と食事を分ける)」で受け入れることで、周辺を回遊しやすくする。
さらに、外国人が利用しやすいように、国からの補助金を使ってトイレを和式から洋式に変えてもらうようにもしました。
また、それまでは両替ができる銀行がなかったので、大手旅行会社と組んでタブレット端末から翌日には振り込まれるという「ほぼ現金」という決済システムも作るなど、とにかく外国人が「来やすい」場所になるための環境整備をアイキャッチさんが手掛けられました。
これらが現在の「観光関連事業」という一つの事業になっているということでした。

このように、アイキャッチさんのコアコンピタンスとは、「企画提案力(繁盛店づくりパートナーシップ力)」をコアとした「繁盛」を生み出す総合プロデュースであり、その「実行力」であるということを教えて頂きました。

 

第2部

続いて、業績アップ研修のアドバイザーでもある株式会社アバター 代表取締役の羽生卓さんをコーディネーターとした対談が行われました。

まず冒頭に、今回のテーマであったコアコンピタンスについて、どの業種業界にも共通する「獲得の条件」を教えて頂き、これを発表頂いたお二人にお聴きしました。

コアコンピタンスとは(なりうるもの)
「同業他社が簡単に真似のできない独自の技術やノウハウ、人材・組織、ビジネスモデルなど」

条件
1、希少性(独自性)
2,真似されにくい
3,相対的な価値=(クライアント側から見て)我が社にどのような価値を感じているのか
4,希少性や真似されにくさを高め、顧客から「この価値を御社から買っている」と言われる価値を作り上げるための組織としての力

一つ目の「希少性」について松木社長は、物流業でありながら「お肉屋さん」の機能も兼ね備えていることであるということで、羽生さんからは「異なる業種を掛け算式に手がけることで希少性が生まれ、お客様から選ばれやすくなる、引いては市場が見えてくる、そして新たなビジネスチャンスも見えてくる」ということでした。
一方山口社長は「先行投資や企画段階での費用は取らないなど、コストの使い方が他ではできないこと」とし、事業ではなく仕事の仕方に希少性があるということでした。

次に「真似されにくい」という点について松木社長は、「”寝る間を惜しんで接待”していた頃に作り上げた顧客のネットワーク、それによって”1社依存”ではなく同業の複数の顧客と同時に取引きすることで適正利益を確保する経営」だということでした。
山口社長は先程言われたとおり「コストの使い方」であり、例えば同業他社の経営者から相談された時もこのことは「真似をすると会社がおかしくなるから真似しないほうが良い」と伝えているそうです。
お二人の答えを聴いて羽生さんは「独自性とは言わば(経営者の)個性だと考えられるので、その個性(から生まれたもの)を会社内での反対や業界の常識を乗り越えて押し通すことで独自性ができてくるのではないか」ということでした。
ただし、お二人とも「社長のみ」ということではなく、あくまで意思決定ができ責任を取れるのは社長であるからこそ「道すじ」を作ったあとは社員さんの力で大きくしていってもらわなければならないし、組織として成長するための役割と権限は適正に行わなければいけないということを教えて頂きました。

三つ目の「相対的価値」について松木社長は「お客様の”全て”のお困りごとを解決すること」とし、山口社長は「医者のように会社の不調の原因を見つけだすこと、さらに改善にむけてその”会社の一員”として一緒に取り組むところ」だということでした。

四つ目の「コアコンピタンスを作り上げ維持していくための組織力」について松木社長は、「まずコアコンピタンスを作り上げるためにはかなりの時間を必要としますので、継続して取り組むためのビジョンや夢、目標を持ち、会社全体で共有、共感させていく関わり」だということでした。
山口社長は「社員さんの労働環境をより良くしていくこと、また例えば外部研修などの場で自社を評価してもらうことでロイヤリティを高めること」だということでした。

これとは別に質疑応答が行われました。
松木社長に対して「畜産専門」ということに至った経緯の質問がありました。
松木社長は「研修に行く前は食肉の在庫物流のしごと以外に食品だけでなく何でも運んでいましたし、運送会社の下請けもかなり手掛けていました。その中で一番苦労したのが食肉であり、その頃狂牛病や鳥インフルエンザによって一気に業績が下がったりしたからです。しかし、研修に行って業績アップのために利益率の高い仕事、つまりお客様への貢献度の高い仕事に絞り込みをするという時に調べてみるとそれは食肉の在庫物流でした。けれども、そこに絞り込むことに対して社内はこれまでの問題をあげて反対されました。そこで病気など問題が発生した時の市場の動きを見てみると、問題が発生したところの肉に代わる別の産地の肉が流通していることに気が付きました。社員さんには複数の取引先を持つことでリスクヘッジになることを説明し、さらにこれまでの仕事と並行して始めることにしました。そして、結果を示すことで社員さんに理解してもらい、他を削っていき絞り込むことができました。ですから、しっかり分析することと粘り強くやり続けることが大切です。」

山口社長に対しては新しいビジネスの発想のプロセスについて質問がありました。
山口社長は「以前熊本で”老舗”のタウン誌を発行しいる会社のM&Aの話があり、その会社が持つ機能は欲しかったのですがお断りしました。理由は、その会社が3年連続赤字で立て直すのに3年かかるというところでした。つまり、M&Aの本質とは自社に無い機能を持つための”時間をお金で買う”ことです。また、M&Aの時もそうですが、出てきたアイデアは良いところ悪いところ半々で見ます。その後しばらくして悪いところが出てきたらそこで判断をします。つまり”コレしかない”とは考えないということです。ふっと湧いたアイデアも確かに良いアイデアだとその時は考えますが、たいていのことは世界のどこかで出されているものです。でも、これは逆に捉えれば海外で流行ったものを日本に持ってくるというアイデアにもつながります。ですから、発想も大事ですが、それ以上にその発想の調査、分析を重視しています。社員さんもこの調査というプロセスを重視することで、”思いつき”ではない深い発想が出てくるようになります。」

最後に羽生さんからお二人のお話を聴いての感想が述べられました。
「お二人に共通して言えるのは、お客様への”投げかけ”とその反応のキャッチアップが上手く、それ商売のネタにつなげているということです。なぜその上手な”投げかけ”ができるのかを考えると、お二人とも若い頃から色々な経験体験をされている、つまりインプット量が多い、だからアウトプットも豊富だということです。だとすれば、我々に必要なのはお客様への”投げかけ”であり、もしその”投げかけ”が上手くできないとすれば、インプット量が足りないということです。経験体験もそうですが、経営に関する学びの量も増やさなければいけないということです。その意味でも研修を上手に使っていかれれば良いのではないでしょうか。」

松木克浩社長、山口紘徳社長そして羽生卓社長、今回は貴重なお話とコアコンピタンスの学びを与えて頂き、本当にありがとうございました。

また、ご参加頂いた会員の皆さまにも感謝申し上げます。

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