リーマン・ショックが契機

今回の講師 青山華子さんは主にネットを使った集客についてセミナーやコンサルティングをしている人気の講師であり、同時に異色の経歴を持った方です。

2000年に起業されたのですが、きっかけは前職の倒産でした。その際にそれまでの顧客をそのまま譲り受けての起業だったので、スタートは比較的スムーズに始めることができました。eラーニングがメインの事業だったこともあり、2008年まではとても順調に業績は伸びていきました。
しかし、2008年秋にリーマン・ショックが起こると、得意先であった金融業や不動産業が一斉にいなくなってしまい、一気に倒産の危機に陥りました。
それまでは紹介が多く、それ以外の集客の手段はと言えば足を使っての営業活動、パンフレットやチラシといった印刷物などアナログの活動がメインで、ネットと言ってもホームページがあるだけ。青山講師曰く、地味で目立たない存在の社長であったために、順調な時は良くても景気が悪くなってこちらから顧客を探さなければいけない状態になると、これまでのアナログなやり方では手の打ちようがありませんでした。そこで、それまで手をつけていなかったネットによるブランディングの必要性を初めて感じ、起業8年目にして初めて取り組むことにしました。

自分をブランディング

実は、青山華子というのもビジネスネームで、講師として紹介される際に本名だと真ん中辺りになってしまうために、2008年にブランディングの一つとして改名されたそうです。
青山講師のブランディングのきっかけは存在感の薄い現状を打破することでしたから、とにかく「人の目につく」ことに取り組みました。例えば、セミナー講師がたくさん掲載されている名簿でも、探す側の人は最後まで一人づつ見ていくことはなく、3ページぐらいまでで目星をつけてしまいます。このような場合に「目立つ」ためにはとにかく掲載順が早くなるようにすることしかありません。また、本名だとどうしても読み間違いや覚えにくいところがあり、ネットで検索する上で不利だと感じたことも改名の理由の一つでした。
さらに、「一度会ったら忘れない」ようにしようと考え、イメージカラーを「赤・白・黒」の3色で統一し、服装もスーツから何処に行くにも黒のシャツに白衣というスタイルにしました。また、イメージキャラクターも作ってシールなどのグッズ展開を図り、目につくところに配置するようにもしました。

一方で、青山講師の顔が写った写真は検索しても見当たらず、あるのは「がけっぷち」と書かれた金の扇子で顔を隠した写真しかありません。元々シャイで人前で話すことも苦手で、SNSで記事を書いたりすることも本来はしたくなかったと青山講師は言います。仕事の都合上、やむなく始めたことなので、できれば自分の姿までネット上に出したくはなかったし、オープンな場では出してきませんでした。今は写真が強力なツールであり、「自撮り」したものをネット上に公開することがブランディングにつながるので、これは青山講師にとっては不利なことでした。
そんな時に知り合いに作ってもらった扇子で顔を隠してなら良い、という条件付きで許可を出したところ、周りが面白がってその写真を勝手にどんどん拡散してくれました。
「がけっぷち」の文字とともに顔を隠した社長が話題になり、「がけっぷち社長」というキーワードでの検索数はそれ以前と比べて11倍にもなりました。これは「指名検索」と言われるもので、固有名詞やある特定の名前で検索されることを言います。周辺の言葉(”渋谷 イタリアン”など)で検索した場合、関連するものがたくさん出てきますが、固有名詞であれば当然そのものズバリのものが一番に出てくる。この違いは検索者の興味の度合いを表しています。そのものズバリのキーワードでネット上の自分のところに訪問してきた人は最初から「あなた」を探していた人ですが、周辺のキーワードから来た場合は「たまたま」の人が多い。つまり、固有名詞や自分のことを表す特定の名称を持つことができれば「検索されやすい」ということ以上に「自分に興味のある人(=見込み客)」を特定しやすくなるということです。

ブレイクのきっかけを掴む

2008年当時はまだツイッターやフェイスブックもなく、メルマガとブログが流行りだしたころで、「渋谷で働く社長のブログ」など企業の社長がやはりブランディングのために書くブログが流行っていました。そこで青山講師もまずはブログから始めました。
当時はブログの記事を1日10記事以上書いていたそうで、さらに知名度をあげるために渋谷や目黒といった有名なIT企業の社長に会いに行き、そのことをまた記事に書く、ということを繰り返していました。
しかし、今ひとつ成果が上がらなかったため、青山講師はブレイクする方法を模索しました。当時「アメーバブログ」でのITやベンチャー企業の「社長日記」が人気で、人気ランキングも行われていました。ランキング上位に入れば目立つところで紹介をしてもらえてかなり注目されるというもの。ここに目をつけた青山講師ですが、その理由はランキング順位の仕組みでした。順位は「更新数(記事の数)」と「アクセス数」の合計で決まり、さらに毎月1日のこの数でランキングが決まっていました。これは公表されていませんでしたが、青山講師は独自で検証した結果この仕組みを突き止め、とにかく毎月1日に大量のブログをアップすれば上位にランキングされるということで、ひたすらブログを書くことにしました。
その結果、10位以内に入ることはできるようになりましたが、中々一桁になりません。そこで青山講師は更に一計を案じ、1月1日の元旦に100記事アップすることにしました。まず元旦にそんなことをする人もいないだろう、ライバルはいないだろうという考えでした。予想は的中し、見事3位にランクされました。(現在はこの仕組みはありません)

3位にランクされたことで注目され、このブログを見ていた方からの推薦で大手の経済雑誌で「おすすめ社長ブログ」として紹介されることになり、これがブレイクの始まりでした。
その後は他の雑誌でも紹介されることになり、それを見た知人が口コミで拡散、さらに本の中で「ネットで逆転させた」事例としていくつも紹介されることとなり、知名度は一気に上がりました。アクセス数も1日300ほどだったものが最高で40,000アクセスまで増えました。
その後セミナーを開催したところ、出版依頼が来てこれまでの取り組みを紹介することでネット集客におけるブランドを確立させることに成功しました。その間およそ3年をかけて、見事業績を回復させることができました。

10年のネット環境の変化

ここで、青山講師がブログを始めた2008年から10年でのネットメディアの移り変わりについて教えてもらいました。
最も大きな変化はメディアが「マスから個人へ」移っていることで、これは現在も加速度的に変化しています。また、メディアチャネルも多様化、様々な形の情報発信が生まれ、それに伴って情報量は10年前の20倍になっていると言われています。
さらに表現方法も以前のようなテキストだけから写真や動画が加わった情報量の多い「リッチコンテンツ」化しています。それらを今や誰もが簡単に発信する時代になっているのです。
それを後押ししたのはスマートフォンとツイッターやフェイスブックといったSNSです。これらはさらに情報の個人化を進め、それまでのホームページに代表される情報が固定化された「ストックメディア」から刻々と変化した情報がそれぞれの端末に入ってくる「フローメディア」へと変化させています。SNSによる個人のつながりは千差万別ですから、それぞれが持つ端末とメディアには全く異なる形や種類の情報が流れています。

フェイスブック

ツイッター

インスタグラム

ライン

国内ユーザー数 2,800万人 4,500万人 2,000万人 7,500万人
コンテンツの特徴 ・テキスト

・カルーセル

・リンク・画像

・動画・LIVE対応

・ストーリー

(24時間限定)

・テキスト(英数字は最大280文字)

・リンク・画像

・動画・LIVE対応

・画像・カルーセル

・動画

・ストーリーズ

・ストーリーズでLIVE配信可能

・テキスト

・画像

・リンク

・LINE LIVEでLIVE配信可能

現在ネット検索の主流はPCからスマホになっているため、ネット検索大手のグーグルはスマホ対策をしていないサイトは検索上位に表示させることはありません。また、生まれた時からスマホがあるという若い世代に至っては、電話だけでなくメールすらしない、SNSでしかやり取りをしなくなっています。企業の新人研修で固定電話の使い方から教えないと電話を取るどころか使えないということも少なくないようです。

次に、主なSNSの特徴を教えてもらいました。

圧倒的に多いのがLINEで若い世代を中心に今や幅広い年齢層で使われていることがわかります。次に多いのでツイッターで、10代、20代の若い世代はほぼ使っています。次に多いのがフェイスブックですが、これは40代、50代の中高年が中心のツール。青山講師が言うには、男性の場合は50代が一番よく使っているツールだということでした。
そして今一番伸びているのがインスタグラム。写真による投稿が特徴で、男性よりも女性ユーザーが多いのも特徴です。
このように見ていくと、自社のユーザーはどのメディアを使っているのか、使っていないメディアでいくら頑張っても情報は届かないということがわかります。自社のユーザーは若い世代なのか、中高年なのか、すべてのメディアに対応していくことは難しいので、ユーザーを絞り込んでメインのメディアを決めて情報発信していくことが大切です。

現在の傾向と取り組み方

また、青山講師は現在の写真の撮り方の変化が今の情報発信やマーケティングにおいて重要な意味を持つと言います。スマホの普及によって「自撮り」ができるようになった現在では、その人が見た景色や出会った人だけではなく、そこに本人を存在させる、自撮りで自分も含めて撮影することで「自分と世界観」を映し出し、それを共有し共感を得ることが重要視されているということでした。

さらに、実際にお客さまになってもらう、申し込みをしてもらうのはホームページでありSNSではないということ。SNSが得意なのは「認知」を促進することだということでした。
その上で考えないといけないのは、口コミで拡散をしてくれるは誰か、誰に対して力を入れて共感を得ていかなければいけないかということでした。答えは一番身近にいる会社の社員さん、スタッフ、現在お店にいるお客さま、さらに自分の家族、あるいは現在一緒にいる会場の参加者です。
「今ここ」にいる人に伝わらなければその先、それらの人の友達や知り合い、家族に伝わっていかないということ。

これらのことから青山講師は今回のテーマでもある「見込み客を集め、売上につながる情報発信」をする前に確認しておかなければならないことが3つあると言います。
1,どこで、誰に認知されたいか(この場合の”どこ”とは特定の場所や地域もあれば特定のメディアでもいい)
2,何によって興味をひくのか(興味をもってもらう対象を具体的に決めておく)
3,ブログやSNSから何をしてほしいのか(やってもらいたい具体的なアクションを決めておく)
ネットを使っての情報発信に対して苦手意識があったり、記事を書くことや写真を使って表現することに対して苦手意識がある方は、特に中高年の経営者の中には多いようです。あるいは、何をすれば良いのか、どんな記事を、どんな写真を投稿すればいいのか、さらには下手に投稿して問題にならないか心配だという人もいます。青山講師はそういった方たちに対して、現在のネット利用の状況を見れば「やらないよりは、やったほうがいい」と言います。
そして一度に色んなことをやろうとしたり、いきなり成果が出ると考えるので上手くいかないとも言います。大事なのは先に教えてもらった通り、誰に何を伝えて何をしてもらいたいかをキチンと決めて、計画的に反応を確かめながら継続的にやることが大事だということでした。

次に、代表して3社のホームページを青山講師と共に見ていき、その問題点や改善点、アドバイスをもらうことになりました。
会員の大野泰宏さんの「カッティングハウス anan」、工藤こずえさんの「ネイルモンスター」、高橋純一さんの「健やか整骨院」の3社さんのホームページを見て、まずはお店側の「来てもらいたいお客さま」についてお聞きした上で、参加者によるグループでの話し合いから意見を出してもらいました。
ポイントはサイトの第一印象となるトップページの見せ方から、お店側の意図と合致しているか、来てもらいたいお客さんが見てどう思うかということがひとつ。さらに、お客さまがお店に興味を持てるような特徴的な表現や案内の「わかりやすさ」でした。
青山講師からはそれぞれのサイトに対して率直な指摘がされていましたが、会場の参加者からもそれぞれのお客さまの立場に立っての貴重な意見やアドバイスが出されました。

最後に質疑応答として、「伝える相手を絞り込む」ということに対して不安があるがどのようにすればいいか、という質問が出されました。
青山講師は、絞り込むといってもお客さまを「切り捨てる」ことではなく、特徴的な商品やサービスにフォーカスして「惹きつける」ことだと教えてもらいました。わかりやすい例として有名な和菓子の老舗である「とらや」をあげて説明されました。「羊羹のとらや」というがお店に行けばそれ以外のものも売っており、「羊羹と言えばとらや」という印象づけることが絞り込みの目的であるということでした。

ご自身がほぼゼロのような状態から試行錯誤と不断の努力によって会社を倒産の危機から救ったというだけあって、その言葉、指摘一つ一つが具体的で厳しいぐらい的確なものでした。
青山華子講師、本当にありがとうございました。

ご参加頂いた皆様にも改めて感謝申し上げます。

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