今回は「理念と経営社内勉強会」を実践されている4人の会員企業経営者の方による、始めたきっかけや苦労、社内での影響について語っていただきました。
ご参加は、株式会社バイタリティの岩田浩社長、株式会社マルタの鶴田諭一郎社長、株式会社ハローホームの番場恵介社長、株式会社タカミエンジの藤原猛彦東京支店長の4名です。
ファシリテーターは淺本寧枝副会長です。

それぞれの始め方、続けられたコツ


最初に事前アンケートの結果が伝えられました。
「なぜ、理念と経営社内勉強会をやっていないのか、続かないのか」という質問に対して、最も多かったのが「場所・勤務時間帯がバラバラ」、次に「社員さんの理解が得られない」「続かずに止めた」という回答でした。
この回答を元に実践されている4人の方に「できている理由」をお聞きしました。

「場所・勤務時間帯がバラバラ(なのでできない)」という回答に対しては焼肉や居酒屋といった飲食店を他店舗で展開されている岩田社長からお聞きしました。

[岩田]
まず勉強会などは店舗ごとに任せていて、朝早くから集まってやっているところもあれば、昼間の休憩時間にやるなど、各店舗の勤務状況によって決めて行っています。
さらに、各店舗から代表して何人かが集まって社長や幹部など本部の経営陣と行う勉強会も月1回行っています。また、業者さんを10名ほどに参加してもらって行う勉強会も2ヶ月に1回のペースでやっています。
各店舗だけでなく、本部や関わる別会社の人ともやっているということです。

「社員さんの理解が得られない」という回答に対しては、昨年TTを受講され社内勉強会を始められた鶴田社長にお聞きしました。

[鶴田]
まず導入にあたり「強制はしない」という前提で、当初は4名のコアメンバーで始めました。
最初その4名に対してコスモ教育出版の方から社内勉強会についての指導、進め方や良さを丁寧に教えていただいたのが良かったと思います。スタートしてからは「共に学ぶ会」という委員会を立ち上げ、委員会が中心となって行っていますが、これも自主的に取り組んでいます。委員会が設問を考えて全社員に投げかけ、参加したい人が自主的にその答えをもって会に参加する、という進め方です。一つの設問につき30分、1回で2問出されるので1時間の勉強会ということになります。これを月に1回、勤務時間帯にやってもらっていますが、当初4名(昨年6月)だったのが直近では20名まで増えました。私が心がけているのは、提出された設問に対する答えについては必ずすべて感想をお返しすること、人数が増えてくると大変ですが必ず行っています。もう一つは、参加しない社員さんへのケアです。自主的な参加を促すことで、参加しない社員さんが明確になりますので、そこへの丁寧なケア、声かけが私にとっての一番の役割かと考えています。

社長を支える立場にある藤原支店長にもお聞きしました。

[藤原]
正直に言うと、始めたころは「理解を得られたものではなかった」状態でした。昨年の例会でも社長の室田から話がありましたが、一度断念しています。そういうことから当社では理解を得るのではなく、勉強会を「仕組み」として導入しました。司会や設問の選別を担当制にしてやり出したわけですが、やっていくことで徐々に勉強会に対する理解が進んだと思います。つまり、当社ではトップダウンで始めたということです。

「続かずに止めた」というのに対しては始めて3年になるという番場社長にお聞きしました。

[番場]
当社は営業時間内に行うので「仕事の一環」として強制的に始めました。年始に1年間の仕事のスケジュールを決めてもらっているのですが、勉強会も仕事の一つとして最初からスケジュールに組み込んでもらっています。急な仕事で出られないこともありますが、優先順位としては高く捉えてもらっているので続けられています。

[浅本]
皆さんは今お答えされたように導入されて、続けられているわけですが、今回のこの回答に対してどういった理由や原因が考えられますか?

[番場]
「理解が得られない」という答えですが、これはその通りで「理解は得られない」というのが私の考えで、だからこそ当社は強制的に始め、強制的に習慣化させることで3年も続いています。仕事の一つだとすれば止めることもないかと思います。これは、岩田さんのところと同じで当社も外部の会社にも参加してもらっているので、自社だけでなく仕事で関わりある会社の人がいることも「仕事の一つ」と捉える要因になると思います。

[藤原]
当社は大阪と東京にあるのですが、オンラインで全員が同じ時間に参加することになっています。朝礼も同じスタイルで行っています。現場仕事なので勉強会のようなまとまった時間のものはどうしても現場終了後になるため、事務員さんなどには負担をかけていますが、その分1時間で必ず終わらせる、それを月1回決まった日にやるという「仕組み」で実施することで続けられています。当社も一度止めた経験があるので最初は理解は得られないものだと考えています。社長の肝煎りで始めたものですが、社員さんの理解度はマチマチなので参加しない人もいる。だから当社で続けられずに一度止めたのは、その状況に対して「社長の心が折れたから」ということだと思います。でも仕組み化して、いわば仕事の一つとして全員がやれるようになると、徐々に理解が深まり良い取り組みになっていき続けられるようになったと考えています。

[鶴田]
当社も営業所が3つありますが、去年から始めて良かったのはちょうどテレワークが進み、オンラインで勉強会ができたことでした。つまり、オンラインのお陰で勉強会を通じて営業所間の交流が図れたことです。当社の場合は強制で始めると続かないと思っていましたから、自主参加で始めて参加しない社員さんのケアをすることで参加を増やす、続けられるようにしているということです。

[岩田]
当社も最初は理解されないと思って強制的に始めました。始めた頃は店舗数も社員さんも少なかったので設問に対する回答もすべて感想を返していましたし、私の方から店舗を回っていました。業者さんを呼んだのは、勉強会後に懇親会をお店でやるので売り上げにつながるからで、皆んなにとって良いことだからです。だんだん規模が大きくなり、社員さんの人数も増えてくると今のように各店舗に任せることにしたのですが、徐々に設問の回答がいい加減なものや無いということが出てきました。そこで社員さんに聞いて勉強会をやっていないということがわかったので、そこの店長を厳しく指導し、とにかくリーダーを引き締めてやらせました。今では完全に習慣化されているので、店舗や人数が増えても問題なく行われています。

[番場]
私は良いことは強制しても良いと考えています。社内勉強会は良いことであることが明白ですし、勉強すること以上に社内のコミュニケーションが活発になる。特に設問に答える中で本音が出るので、社員さん同士の知らなかった一面や考え方がわかるようになるからです。また、社員さんの意見や提案を聞いてそれを実現する機会を与えると、自分のことを見てくれていることを実感しモチベーションが高まります。

続けていくことで起こったこと


次に社内勉強会を始めて会社で起こった変化について、これもアンケートの結果から見ていきます。
最も多かったのが「相互理解・人間関係向上」、次いで「コミュニケーションスキルや知識の向上」、「他部署等の理解が深まった」というものでした。

[藤原]
社員さん一人一人のことがよくわかった、わかり合える場だというのが率直な感想です。普段は中々言いたいことをそのまま言える場というのはなかったのですが、勉強会がそれを可能にした。だからそれまでは「この社員さんはこんな人だろうな」と考えていたのが、勉強会での発言からまったく違った人となりが見えたりします。

[番場]
勉強会に社長は参加しないようにしていますが、ファシリテーター役には「理念に沿った考え方」になるよう進めてもらっているので、勉強を通じて自社の理念が浸透していきますし、皆が同じ方向を向くようになっていきます。

[鶴田]
当社もベテラン社員さんに先導役をお願いしているので、入社5年未満の社員さんが多い中で創業当時のことや創業の思いについて語ってもらうことで、理念や経営者の思いが伝わります。

[岩田]
お店の中で起こった問題、例えば上司と部下の意見の違いなどがあった時に、そのためのミーティングをやろうと言っても、面と向かっては言いたいことが言えなかったりするので中々解決しませんが、同じような事例を元にした設問があると、客観的な立場から問題を考えるので言いたいことが言えるし、それぞれがその立場にって考えるので話がまとまってくる。そういった意味で相互理解の手助けをしてくれる場でもあると思います。

ここで、参加者から「勉強会をやってきたからこそ生まれた仕組みや風土など、発展形の取り組みがあれば教えて欲しい」という質問がありました。

[岩田]
当社では、勉強会を皮切りに社内の社長塾、理念塾を始めました。これは最初私がTT研修を受けている中で自分のアウトプットの場として始めました。それが今では、店長さんも入らない本当に一般の社員さんだけで行う自主的な勉強会をしています。社員さんだけの勉強会ですが、ちゃんとリーダーを決めて何について話すのかを決めて取り組んでいて、何度か見させてもらったのですが驚くほど内容の濃い勉強会をしています。人数も増え会社の規模も大きくなりましたが、理念と経営の社内勉強会から始まったこれら学びの習慣によって風通しの良い会社でいられていると思います。

[番場]
理念と経営の社内勉強会として1時間の枠で始めたわけですが、続けていくことで「話しやすい環境」が生まれてきました。そこで、勉強会の時間を50分に短縮し、残りの10分は会社に直結した意見を出してもらうことにしました。5分間は1ヶ月の間で新しくチャレンジしたこと、残りの5分は働きやすい職場のための改善提案を発表してもらうようにしました。最初からこれらをしてもらっても恐らく本音は出なかったかと思いますが、やはり社内勉強会の延長で行うと話しやすいようで色々な意見が出されます。それをすべて取り入れることはできませんが、良いと思うものは採用するようにしています。

[藤原]
勉強会の中で会社に対する具体的な改善策を突きつけることはしていませんが、勉強会の設問の中から出てきたことに対して自分ごととして捉え「社内でもやってみよう」という投げかけはしています。勉強会を通して見る目を養う、考えるポイント(視点)を学んでもらうことで、これまではほぼトップダウンだった改善提案が社員さんから意見が出るようになってきました。これは本当に勉強会を続けてきた賜物だと思います。

[鶴田]
まだ始めて間もないので発展形というものはまだありませんが、勉強会を行うにあたって始めた委員会という社内横断的な取り組みはとても良かったと思っています。

4人の経営者・経営幹部による理念と経営社内勉強の実践報告を聞きました。
それぞれやり方は異なりましたが、それぞれの経営者の個性によるものであることがよくわかりました。
途中で出された意見「勉強会は目的ではなく手段であり、大事なのは経営者の思いを理解してもらい、それを目標に仕事をしてもらえるようになること」、それを経営者がまず理解して強い気持ちで取り組むか、できるかできないかは経営者の一念だということがよくわかりました。
気持ちが強ければそれぞれの個性は自ずと出てくるので、取り組み方はそれぞれになる。でも、それができるようになれば社内は「ワンチーム」となり、自律的な集団となっていくようでした。
岩田社長のバイタリティさん、藤原支店長のタカミエンジさんでは月1回の社内勉強会にオブザーブとして参加できるということでしたので、興味のある方はご連絡してみてはいかがでしょうか。

出演された4人の皆さん、貴重なお話しありがとうございました。
参加された会員の皆様にも感謝申し上げます。