今回は『夢を語れ』という名のラーメン屋さんを経営し、その「夢を語れ」を経営理念にしている株式会社夢を語れの代表取締役 西岡津世志さんをお迎えし、お話をお聴きしました。

飲食店の経営者らしく、講話を「美味しく食べて、お腹いっぱい満足感を味わってもらうために」スタートから参加者に別ルームでのディスカッションを繰り返し行うという、とてもユニークなアイスブレイクから始まりました。

夢とは何か

西岡講師の最初のテーマは「夢の定義」でした。
西岡講師が夢について考えていた時、たくさんの人、特に「夢なんか無い」という人に対して話を聞くと、そのような人たちが定義している夢とは「将来つきたい理想の職業」であることがわかりました。
子供の頃「将来何になりたいか」という夢を問われ、プロスポーツの選手やその他様々な職業を口にします。
しかし、現実の競争社会の中で挫折を味わい、子供の頃の夢は叶えることはできなくなります。
そのような人たちが大人になった今「夢は何か」と問われると「無い」と答えるというのです。

そんな中で西岡講師は夢とは「ワクワクするものすべて」であると定義し、言い換えればワクワクしないものは夢ではない、ということです。
英語で「want」がこれに当たると言い、「欲しい」「〜したい」というものはすべて夢だということです。
この定義だと「プロサッカー選手になりたい」も夢ですが、「今日はカレーが食べたい」も夢です。

ただ、夢にはレベルがあり、好きな職業につきたいというのは高いレベルの夢であり、カレーを食べたいというのは叶えやすい夢です。
つまり夢とは学校の勉強のようなもので、簡単な算数がわからない子が高校の数学がわからないのと同じであり、食べたいものが思いつかない人になりたい職業を聞いても答えを出すのは難しい。
でも、簡単な算数ができるようになったら次の少しレベルの高い問題を解きたくなり、カレーを食べるともっと美味しいカレーを食べたくなって調べたり、自分で作ってみたくなって自分で作って色んな人に食べてもらうようになったり、夢もどんどんレベルアップしていくものだということです。
だからこそ、「食べたいもの」を馬鹿にせず、簡単なレベルの夢から叶えるということをして欲しいと西岡講師は言います。

アウトプットが先

同時に吉村思風先生の「感性論哲学」で説かれている「感性は固定化できない」ということから「夢(〜したい)は固定できない」ので、思いついたらすぐ行動して欲しいとも言います。
頭で考えたものは固定化できるが心から湧き出た(〜したい)ものは保存がきかない、というのが「感性は固定化できない」ということです。
食べたいと思ったものはすぐに、遅くても次の日までには食べないと2日後にそれを覚えていることは少ない。
つまり、自分の中で「〜したい」と思ったことはすぐに叶えるために行動する、、気づいたらすぐに行動するということを習慣づけることも夢を叶えるコツだということでした。
次に「夢を叶える方法」について西岡講師は教えてくれました。
夢は十人十色、人の数だけ色んな夢があるので方法は一つでは無い、だから自分で自分の夢を叶える方法を考えるしかない。
ただ一つ言えることは、勉強すること、学ぶことが夢を叶える上で必要なことだということです。
自分が「何のために勉強するのか」と子供たちに問われた先生だったら「夢を叶えるために勉強している」と答えるし、学校の先生にはそう答えて欲しいと西岡講師は言います。
良い学校に入るため、良い会社に勤めるために勉強していると、その学校に入ったら或いは良い会社に入社したらその先が見当たらなくなる、「何のために勉強してきたのか」ということになりかねない。
そうならないためにも、勉強は「叶えたいものを叶えるため」にした方が良いということです。

また、勉強が夢を叶えるためにするものであるので、まず叶えたい夢が無いと始まりません。
つまり今から勉強する子供たちに必要なのは「叶えたい夢」なのです。
叶えたい夢というアウトプットがないままに勉強というインプットがどんどん行われているので、将来的に悩んだり迷ったりしてしまう。
だからこそ、自分の子供たちに「食べたいもの」を聞いて叶えてあげる、もしくは叶えるためにはどうすれば良いかを考える、調べるなど一緒になって勉強してあげることで子供たちは勉強の意味を理解し夢を見つけるようになると西岡講師は言います。

人生のゴール

夢が叶ったらそれですべて良し、というわけではありません。
人生の目的、ゴールがとても大事であると西岡講師は言います。
一般的に人生とは生まれてから死ぬまでの「生きている」ことを指す言葉だと思われますが、これを時間の経過として捉えると、過去の自分は戻らないので死んでしまったものと同じ、未来の自分はまだ生まれていないということになる。
つまり人生=生きているとは「今ここ(現在)」だけであると西岡講師は定義づけました。
後悔している人は過去に生きる人、不安に苛まれている人は未来に生きている人、では今を生きている人というのはワクワクしている人。
だとすれば、人生のゴールというのは「今ここ」のゴールだということになります。

では人生のゴールとは何か、西岡講師は「どうありたいか」であると言い、そう考えたときにご自身は「幸せでいたい」と思ったと言います。
西岡講師にとって幸せでいるという状態はどういう状態かというと、笑っている状態であり笑顔というだけでなく心の中でも笑っている状態、それはつまり「ワクワクしている」状態でした。
そこから西岡講師の人生のゴールは「今をワクワクしていること、笑っていること」だということに思い至りました。

ゴールというのは目的ですから、それに到達するための目標が必要になってきます。
ワクワクしている、笑っているのはどんな時かと考えると、夢に向かって頑張っている時、夢に向かって行動している時がワクワクして一番楽しんでいることに気がつきました。
夢に向かっていると人生のゴールに辿り着けると西岡講師は考えました。
つまり夢を叶えることは人生のゴール、目的ではなく、人生のゴールに辿り着くための目標であり、ツールであるということでした。

このように考えると、先ほど述べたように夢を叶えるための勉強であり学びであるということでしたが、今をワクワクして笑っていること、楽しんでいることがゴールなのでこの勉強も学びも「楽しんで」やることだということになります。
西岡講師はこの人生のゴールと夢に向かって行動することが常に頭にあるので、このコロナ禍にあっても「この危機をみんなで楽しんで乗り切るためには何をすれば良いか」ということを考えると言います。
常に「楽しむためにはどうすればいいか」ということを考えていればアイデアは湧いてきますし、自然と人生を楽しむことができるということでした。

相方の死

西岡講師は滋賀県で生まれ育ち、高校卒業後に芸人を目指して上京しました。
東京でコンビを組んだ相方に『ラーメン二郎』を教えてもらったところ、はまってしまって店員となりました。
同じようなラーメンを作れるようになりたいと思って頑張っていたところ、マスターから店を持たないかと言われて自分の店を出すことになりました。
店長となってマスターのように行列のできる店にしたいと思って頑張り、行列のできる人気店にすることができました。
すると今度は独立したいと考えるようになり、頑張ってそれも叶えることができました。

独立する直前、任されていたお店にコンビを組んでいた相方がラーメンを食べにきてくれました。
その相方はラーメンを食べにきてくれたその日に自殺をしました。
後から「なぜ止めなかったのか」と周りから言われた西岡講師でしたが、自殺するほど悩んでいたということには気がつきませんでした。
その後立て続けに周りで自殺する人が出てきたところで西岡講師は考えました。
なぜ周りでこんなに自殺するのか、いやそれは気づいていない、アンテナをはっていないからであり、自殺する人はたくさんいる。
調べてみると日本の自殺率は世界トップレベルにありました。
そしてその理由の多くが「将来に希望が持てないから」ということに衝撃を受けました。

それ以来西岡講師は元気のない友達を見ると死ぬんじゃないか、落ち込んでいるバイト店員を見ると自殺するのではと心配になり、夜も寝られなくなってしまいました。
世の中の大半の人は自殺症候群じゃないかとまで考えました。
死ぬことなど考えたことのない西岡講師はなぜこれほど多くの人が自殺するのかを考えると同時に、どうすればみんなが自殺しないで済むのかを考えました。
そこで出た答えが夢でした。
夢さえあればみんな楽しく生きることができる、そう考えた西岡講師は独立して出したお店に「夢を語れ」という名前をつけました。

夢を語れ

実はこの「夢を語れ」という店名は恥ずかしかったと西岡講師は言います。
夢という言葉が高尚なものであると考えていたために、口にすることすら恥ずかしく思っていたからだったのですが、それでも「夢を語れ」という店名にしたのには訳がありました。
学生さんにたくさん来てもらおうと京都大学の近くに出店したのですが、その学生さんたちにも恥ずかしがらずに夢という言葉を口にしてもらおうと考えこの店名にしました。
店名ですから「今日は夢を語れに行こう」と自然に言えますし、人気が出てくれば「今日夢語りに行く?」という言葉になっていく。

この夢もすぐに実現し、京都のお店は程なく人気店となって「夢を語れ」という言葉は近辺で大流行しました。
「店長、今日はでっかい夢語りに来ました」と言って大盛りラーメンを注文するお客さんもいれば、並んでいる最中にプロポーズするカップルが5組も現れました。
お店に来て自然と夢を語り合うということが行われるようになっていました。
でもある時常連さんから「いつも行列で忙しい店やから夢語ってる暇ない」と言われ、並んでいる時に夢を語ってください、と答えながらも西岡講師も頭の中で「いつか店内で夢を語ってもらえる店を出したい」と考えるようになりました。

その後、海外で出店したい、世界中に夢を語る場所を作りたいという夢ができ、周囲にそのことを繰り返し語っていたところ、ある人から「どこの国でやりたいのか」と問われました。
その時に心に浮かんだのはアメリカのハワイでした。
心に湧き上がったアメリカのハワイに1ヶ月後には向かっていました。
ところがハワイについた西岡講師の心は、日本人が多かったからなのかもしれませんがワクワクしませんでした。
帰国後また別の人に海外出店の夢を語っていたところ、ある飲食店経営者の方から「挑戦するなら世界の中心が良いだろう」と言われました。
世界の中心という言葉にも胸躍りましたが、それがニューヨークだろうと言われ西岡講師の心は再びワクワクしてきました。

そして再び渡米、ニューヨークに降り立った西岡講師でしたが、なぜかこの時もワクワクしませんでした。
コロンビア大学やニューヨーク州立大学を見て回りましたが、感性がピンと来ませんでした。
どうしたものかと思っていた西岡講師は、泊まっていたホテルにいた日本人に今の状況を伝えてみました。
「若者がたくさんいる街で夢を語れるラーメン屋をやりたい」
その話を聞いた日本人客のほぼ全員が「だったらボストンだ」と答えました。
ボストンは大学などの学校が100校以上ある、まさに若者の街だというのです。
急いでボストンに向かった西岡講師は、ボストンに着いた途端「鳥肌がたった」と言います。
会う人のほとんどが若者だったボストンで西岡講師は「ここや!」と出店を決意しました。

西岡くん、変わったな

決意した西岡講師でしたが、奥様の「ボストンは冬に-20℃にまでなるらしいけど、そんなところで行列つくれるの?」という言葉に迷いが生じました。
そこでもう少し他の街も見てから判断しようと考え、ロサンゼルスとサンフランシスコに行ってみました。
ロサンゼルスもUCLAなどの有名な学校があって若者も多く活気あふれる街でした。
サンフランシスコはさらに気候が良く、年間を通じて10℃台というラーメンにはもってこいの土地で、日本人も多く製麺所もあるという理想的な場所でした。
ロサンゼルスもサンフランシスコも行列を作れることを確信して帰国しました。

帰国した西岡講師はお世話になっている社長に報告がてら相談に伺いました。
「ボストンが一番やと思いましたが、ロサンゼルス、サンフランシスコと見て迷ってます。うまくやろうと思ったらサンフランシスコが一番なんですよね」
それを聞いたその社長さんが一言。
「西岡くん、変わったな。君は今までここ(心)で夢語る子やったのに、今ここ(頭)で夢語ってるで」
夢とは頭でできる・できないを比較検討して生み出すものではなく、心から湧いてくるものが夢、それをどのように叶えるかに頭を使うのだろう、そう教え諭されました。
「聞くで、君のここ(心)はどこでやりたいと言ってるんや?」
「ボストンです!」
ボストンの方が上手くやるのは大変だけど大丈夫かと問われた西岡講師は即答します。
「上手くいかせるために考えます!」
「ええやん、行ってらっしゃい!」

その後ボストンに行った西岡講師。
英語も話せない、知り合いが一人もいないという厳しい条件でしたが、「ワクワクしまくり」でした。
どうすれば楽しくやれるかを考えれば良いだけという一切の迷いが無い中で、難しければ難しいほど面白く、まさに夢中でやれたと言います。
上手くいかなかったら日本に帰れば良い、最短で叶えることを求めているわけではなく、難題に立ち向かうことで「今」という人生の瞬間を楽しめば良い。
楽しんで1年かけてお店を開き、念願の夢を語る場所を作りました。

子供たちのために世界中に夢を語る場を

でも、念願だった夢を語る場所で新たな決意をすることになりました。
世界中に夢を語る場を作ろうと考えてアメリカに来た西岡講師でしたが、来てくれたお客さんのすべてが夢を語ってくれたわけではありませんでした。
8割のお客さんが夢を語る中で、2割のお客さんは夢を語ってくれませんでした。
さらにその2割のお客さんというのが韓国人と日本人のお客さんだったことに西岡講師は強い衝撃を受けました。
(筆者注:OECDによる2019年の統計で自殺率1位が韓国、日本は5位)

夢を語る場所を世界中に作ろうと考えていた西岡講師でしたが、ボストンでのこの事実を受けて「やはり日本でやるべき」と考えました。
帰国した西岡講師は2018年以降、日本中に夢を語るラーメン屋を増やし続け、あと2年で全国出店が叶うということです。
でもそれがゴールではなく、「2030年までに全世界に夢を語れる場所を作る」というのが西岡講師の最上位のゴールです。
2030年までに全世界に夢を語れる場所を作るにはどうしたらいいかを考えた西岡講師は、SNS上で夢を語れる場所を作ることを思いつき、「DREAMSPARK」というサービスを立ち上げました。

大学3年生の就職活動で夢を失う若者が多いので、これまで21歳、大学3年生をターゲットにしてきました。
芸人の相方を自殺で亡くし、若者に亡くなってほしくないという思いでこれまでやってきました。
そんな西岡講師が今一番亡くなってほしくないのはご自身の息子さんです。
2030年にこだわる理由、それはご自身の息子さんが21歳を迎える年だからです。

もしこのまま夢を持てない世界が広がっていったらどうなるのか。
周りの友達が、知り合いが、職場の同僚が死んでいくような世界だったら、たとえ西岡講師の息子さんであっても一人で夢を持ち続けることは難しいだろう。
息子さんが21歳になった時、世界中どこへ行っても夢を持てる世の中にしておきたい、これが西岡講師の夢です。
西岡講師はこの夢を実現させるために決意して想像しました、21歳になった息子さんがマンションの一室で首に縄をかけようとしている姿を。
「心配するな、お父さんがどんな夢でも叶えられる面白い未来を作ってやるから!」
そう言って息子さんの首にかかっている縄を取り解きました。

これが現実にならないために今全力で「今を楽しみながら」夢を持てる世界を作っている、そう西岡講師は力強く話してくれました。

 

西岡津世志講師、貴重なお話ありがとうございました。
ご参加いただいた皆様にも改めて感謝申し上げます。

 

DREAMSPARK株式会社は、2021年10月7日に自ら夢を語る・他人の夢を応援できるスマートフォン向け招待制SNSアプリ『DREAMSPARK(ドリームズパーク)』を公開いたしました。
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